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RCEP協定の必要書類とは?原産地証明手続ごとの税関への提出書類を解説

RCEP協定税率の適用を受けるためには、輸入締約国の税関において輸入申告を行う際に、さまざまな証明書類の提示が求められます。税関からの要請に応えるために、どのような必要書類を用意すればいいのでしょうか。そこで本記事では、輸入申告時に税関に提出する必要書類について解説します。

また自社が取り扱う産品が、輸入国側で関税撤廃・削減の効果を最大限享受できるFTAを容易に調査できる「ONESOURCE FTA Analyzer」についても紹介するので、実務担当者の方はぜひ参考にしてください。

RCEP協定税率の適用を受けるために必要な3つの条件

輸入国側の税関においてRCEP協定税率の適用を受けるためには、原産地規則に基づき原産品とみなされる必要があります。原産地規則とは産品の原産地、つまり貨物の国籍を決定するために設けられたルールです。

ここでは、RCEP協定税率の適用を受けるために満たすべき3つの条件について見ていきましょう。(注1、(注2、(注3

1. RCEP協定税率の適用対象である

RCEP協定の利用にあたっては、大前提として自社が取り扱う産品が関税撤廃・削減の対象であることが必要です。そこで条文の附属書として掲載されている「譲許表(Schedule of Tariff Commitments)」を、まず輸入国別に参照してRCEP協定税率を確認しましょう。

譲許表とは、関税撤廃・削減のスケジュールがまとめられたものです。税率の欄に「Free」とあれば無税を、「U」とあればRCEP協定税率の適用対象外を意味します。

2. RCEP協定の原産地規則を満たす

次に生産された産品は、RCEP協定の原産地規則に基づく原産品であることが必要になります。原産地規則に基づくためには、「原産品」「累積」「積送基準(直接積送)」の3つの条件を満たすことが重要です。

積送基準とは、RCEP締約国から輸出された貨物が原産品としての資格を維持するための条件であり、輸入国に直接運送されていれば問題ありません。ただし第三国を経由する場合には、積替えあるいは一時蔵置以外の取扱いがなかったことを証明する「運送要件証明書」を必要書類として輸入申告時に求められることがあります。(注4

なお原産品の判定基準については、「RCEP特定原産地証明書の発給にあたり必要な原産品判定基準について解説」をぜひご覧ください。

3. 根拠書類の提出など必要な手続きを行う

最後に、運用上の証明手続きが必要になります。運用上の証明手続きは、大きく「原産地証明」「記録保管義務」「原産性の確認」「特恵待遇の要求」の4つの柱から構成されるものです。

RCEP協定において、RCEP協定税率の適用を求める「特恵待遇の要求」を行うのは輸入者となります。有効な原産地証明書または原産品申告書のほか、必要に応じて運送要件証明書などの必要書類を輸入締約国において提出することになるのです。

指定発給機関である日本商工会議所は、原則として輸出にあたって必要となる原産地証明書をPDFファイルで発給します。輸入国税関が書面での提出を求める場合には、事業者自身がカラー出力するなどして提出しましょう。また輸入者による自己申告を利用する場合を除き、生産者・輸出者は有効な原産地証明書あるいは原産地申告を輸入者に送付します。

その他の原産性を証明する書類については、締約輸入国からの問い合わせに備えて一定期間、保管しておく義務があるので注意が必要です。

適用される関税率を決定する「RCEP原産国」とは

「RCEP原産国」とは、関税率を決定するにあたり根拠となる情報であり、原産地証明における「必要的記載事項」です(附属書3B)。(注5

RCEP協定の利用においては、同一の原産品であっても、輸入する原産品の種類および輸入相手国によって適用される関税率が異なる場合があります(第2.6条)。そのためRCEP協定では、協定上の原産品かを確認した後に、「RCEP原産国」を検討・決定する必要があるのです。

追加的なルールによって「RCEP原産国」は決定されるために、産品によっては輸出締約国以外の締約国が「RCEP原産国」となるケースがでてきます。また国ごとに異なる関税率が設定されている品目については、決定された「RCEP原産国」によって適用される関税率が変わるケースがあることも把握しておきましょう。(注6

RCEP協定利用時に税関に提出する必要書類

RCEP協定では、第三者証明によって発給された証明書を「原産地証明書」、認定輸出者自己証明制度および自己申告制度により作成した証明書を「原産地申告」と呼んでいます(第3.16)。(注5

ここでは日本輸入時を想定し、原産地証明の制度別に日本の税関に提出する必要書類について見ていきましょう。(注6

第三者証明制度

すべての輸出締約国を対象にした第三者証明制度を利用した場合の必要書類は、通常の輸入申告書類一式と「原産地証明書」です。

まず輸出者または生産者が、輸出締約国において指定された権限ある発給機関に原産地証明書の発給を依頼します。取得した原産地証明書は輸入者に送付され、輸入者が輸入締約国の税関に提出することで原産品であることを証明し、RCEP協定税率の適用を受ける流れです。

認定輸出者自己証明制度

すべての輸出締約国を対象にした認定輸出者自己証明制度を利用した場合の必要書類は、通常の輸入申告書類一式と「認定輸出者による原産地申告」です。

輸出者は、輸出国において権限のある当局から認定を受けた上で当該貨物がRCEP協定上の原産品である旨と認定番号を明記した任意様式の原産地申告を作成します。それを受け取った輸入者が輸入国の税関に出することで原産品であることを証明し、RCEP協定税率の適用を受ける流れです。

自己申告制度【輸出者・生産者】

輸出締約国の中でも豪州とニュージーランドを対象にした輸出者自己申告制度を利用した場合の必要書類は、通常の輸入申告書類一式と「原産品申告書」「原産品申告明細書」「関係書類」です。

産品が原産品であることを証明するための十分な情報を有している場合に限って、輸出者または生産者自ら原産品申告書を作成できます。附属書3Bに規定された「必要的記載事項」を含めれば任意の様式で作成できますが、英語にて作成しなければなりません。

原産品申告書を受け取った輸入者が輸入国の税関に提出することで原産品であることを証明し、RCEP協定税率の適用を受ける流れです。ただし輸出締約国および輸入締約国の両方が当該申告制度を採用している場合のみに、その利用が認められます。

自己申告制度【輸入者】

RCEP協定における輸入者自己申告制度は、日本への輸入のみ利用できます。すべての輸出締約国を対象にする輸入者自己申告制度を利用した場合の必要書類は、通常の輸入申告書類一式と「原産品申告書」「原産品申告明細書」「関係書類」です。

日本に輸入する貨物が原産品であることを証明するための十分な情報を有している場合に限って、輸入者自らが作成した原産品申告書を作成できます。附属書3Bに規定された「必要的記載事項」を含めれば任意の様式で作成できますが、英語にて作成しなければなりません。

輸入者自ら作成した原産品申告書を日本の税関に提出することで原産品であることを証明し、RCEP協定税率の適用を受ける流れです。

税関に提出する必要書類を省略できるケース

税関に提出する必要書類である原産地証明書および原産地申告の提出を省略できるケースがあります。いずれの証明方法であっても、課税価格の総額が20万円以下の場合には必要書類の提出は求められません。

また上記のケースのほか、原産地にかかる事前教示を文書で取得して輸入申告書に当該事前教示登録番号を記載していたり、完全生産品であることが通関関係書類から確認できたりする場合には追加的な説明(資料)の提出を省略できます。

ただしいずれのケースにおいても、輸入貨物が原産品であることの確認は必要です。(注5

原産地証明書および原産地申告の根拠資料の具体例

原産地証明書および原産地申告は、産品が原産品であるとの利用可能な情報を根拠に発給あるいは作成されます。その根拠となる資料は、事業者が採用した原産品の判定基準によって異なります。品目別規制(PSR)において、根拠となる資料の具体例は次のとおりです。

  • 関税分類変更基準を適用する場合:非原産材料と産品との間でHSコードが変更されていることを示す「対比表」を作成する
  • 付加価値基準を適用する場合:域内原産割合(RVC)を上回ることを示す「計算ワークシート」を作成する

なお作成した対比表や計算ワークシートの根拠となる裏付資料も合わせて必要です。(注1

RCEP協定活用時は書類保存に関する義務にも注意が必要

本記事では、RCEP協定税率の適用を受けるために、輸入申告時に税関に提出する必要書類について解説しました。RCEP協定では、輸入者および輸出者・生産者について記録書類の保存義務を設けています。書類保存義務を果たす年数は、協定で定めてある期間(3年)もしくは自国の関係法令に基づくより長い期間と定められているので確認しておきしましょう。

ONESOURCE FTA Analyzer

RCEPの原産地規則には、独自の認定規則や特例を定めた、いわゆるRCEP品目リストと呼ばれるものがあります。そのため正確なRCEPの関税率を把握した上で既存のEPAと比較し、コスト削減効果の高いEPAを特定するリサーチには膨大な時間を要するのです。

関税の最適化をスピーディに行うためには、ONESOURCE FTA Analyzerの利用をおすすめします。詳しくは、下記のリンクからぜひお問い合わせください。

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参考情報:

注1:日本貿易振興機構|RCEP協定解説書

注2:税関・原産地規則ポータル|原産地規則とは

注3:商工会議所|第一種特定原産地証明書 発給申請マニュアル(2023年4月)

注4:税関・原産地規則ポータル|直接積送(積送基準)

注5:税関・原産地規則ポータル|協定・法令等

注6:税関|条件3 必要な書類を作成又は準備し輸入申告時に税関に提出すること

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