輸出管理内部規程(CP)とは?コンプライアンス管理部門が知っておくべき形骸化リスク

輸出管理内部規程(CP)は、法令遵守と日本の安全保障確保のために、輸出取引において重要な役割を果たしています。

輸出管理内部規程は輸出手続きを円滑に進める上で不可欠となるものですが、外為法や輸出入取引法などの法律や国際的な規制の複雑さに対応が困難と感じることもあるでしょう。本記事では、輸出管理内部規程の概要や必要性、法令違反が生じる要因などを解説します。

また、輸出貿易管理令への対応として、専門家によるレポート、対策ツールも合わせてご紹介します。企業内でどのように輸出管理をすべきか悩んでいる方は、ぜひご一読ください。

輸出管理内部規程(CP)とは何か

輸出管理内部規程(Compliance Program)は、企業が法令に従って輸出や技術提供に関する手続きを行うためのものです。

輸出管理内部規程の概要

輸出管理内部規程は、輸出や技術提供に関する一連の手続きを企業内で定めるもので、安全保障貿易管理関連の法令を遵守し、違反を未然に防ぐための内部規程です。

経済産業省への届け出は任意ですが、規程が適切であれば、輸出管理内部規程受理票(CP受理票)が発行されます。

CP受理票を取得した企業は、安全保障貿易管理の実施状況の確認のため、毎年7月1日から31日までに輸出者等概要・自己管理チェックリスト(CL)の提出が必要です。CL提出後、規程に基づく適切な安全保障貿易管理が実施されていれば、輸出者等概要・自己管理チェックリスト受理票(CL受理票)が発行され、包括許可制度を活用できます。

包括許可制度とは、輸出者が適切な輸出管理体制を整備していることを前提に、一定の範囲の取引について個別の許可申請を行うことなく包括的な許可を受けられる制度です。つまり、適切な輸出管理規定の策定は、一定の輸出取引を簡素化し、効率化を可能にさせると言えます。(注1

輸出管理内部規程に記載すべき内容

輸出管理内部規程には、輸出取引において遵守すべき事項が含まれます。輸出管理が必要となる貨物や情報提供の範囲は非常に広く、内容は企業により異なりますが、一般的な項目を説明します。


・輸出対象品目のリスト
輸出可能な製品や技術のリストを明確に定めます。特定の製品や技術は国際的な法律や規制により輸出が制限されており、違法取引の未然防止に役立ちます。


・輸出制限国のリスト
輸出制限がある国や特定の個人、企業のリストも含まれます。制裁対象となる国や個人への輸出は重大な問題です。


・輸出許可申請手続き
規制により輸出許可が必要な製品や技術がある場合、申請手続きを明確にします。正確で適切な輸出許可を得るための手順や必要書類の理解につながります。


・取引先のスクリーニング
取引先企業や個人が輸出制限に該当しないかスクリーニングする必要があります。方法や結果に基づく取引の是非を判断する手順を示します。


・内部教育と研修
輸出に関する法律や規制は随時更新されるため、従業員の教育や研修、指導が重要です。教育や研修の計画を記載する場合があります。

・取引記録の管理と保管
輸出取引に関連する文書や記録の適切な保管も重要な要素です。取引の詳細記録を残すことにより、調査や監査に対応できます。

なぜ輸出管理内部規程が必要なのか

適切な輸出手続きには、輸出管理内部規程が不可欠である理由と現状について解説します。

輸出管理内部規程が必要な理由

輸出管理内部規程が必要な理由は、国際的な平和と安全を維持するためです。

国際平和を脅かす可能性のある国家やテロリストなどに対して、武器や軍事転用可能な製品や技術が渡ることを防ぐため、輸出管理が行われます。

無許可輸出等には刑事罰や行政制裁が課せられます。違反内容に応じて、7年以下または10年以下の拘禁刑、法人に対しては最大10億円以下の罰金が科される可能性があります。

行政制裁として、一定期間の貨物の輸出や技術の提供の禁止、別会社の担当役員等への就任禁止などが科される場合があります。また、違反内容に応じて、警告や経緯書・報告書の提出を求められることもあります。こうした法令違反は、企業の社会的信用や事業活動に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

輸出管理内部規程の現状

輸出管理内部規程の内容や策定状況は、取り扱う製品や技術、輸出取引の規模により異なります。

専門の部署や担当者が輸出管理に携わり、包括的な内部規程を持つ企業がある一方で、規程を簡素化している企業もあるでしょう。輸出管理において教育や研修も大切な要素ですが、基本的な知識や法令遵守に対する認識には個人間での差異が存在する可能性があります。

また適切な輸出管理内部規程には、法令の改訂や取引の変化に合わせた見直しが必須ですが、改訂が行われていない場合もあります。

経済産業省が公表した「外為法違反事案の分析結果について(安全保障貿易関係)(2024年度)」によると、違反企業の従業員規模別割合は、21~300人の企業が43%、300人超の企業が36%、20人以下の企業が21%となっており、企業規模を問わず違反が発生していることが分かります。また、違反原因では、該非判定の未実施や誤判定など「該非判定」に係るものが52%と最も多く、「管理体制」に係るものも36%を占めています。(注2


関連記事:外為法違反はなぜ起きるのか?違反事例から学ぶ原因と適切な輸出管理体制とは

輸出管理内部規程があっても規制リスクへの対処が不十分である理由

輸出管理内部規程の策定は、法令遵守と貿易リスクの軽減に不可欠です。国際的な規制や法令は頻繁に変化しており、その内容も多様化しているため、企業による規制リスクへの対処は困難だと言えるでしょう。

規制リスクへの対応が難しい理由

規制リスクへの対応が難しい理由には、主に複雑な多国間の規制要件への適合と頻繁に改正される法令が挙げられるでしょう。

企業が輸出管理内部規程を策定する際には、これらを十分に理解しなければなりません。外為法や輸出入取引法は、国際情勢や貿易環境の変化、テロリズム対策、国際的な安全保障の向上などに合わせて随時改訂されます。

また、日本国内の法令のみでなく、米国の商務省が管理する輸出管理法/輸出管理規則(EAR)に従う必要もあるでしょう。

これは、米国保有の先進的な技術や製品が不正に外国へ流出することや、安全保障上のリスクを防ぐことを目的としています。高度な特定の製品や技術の輸出、再輸出、転出に対しての規制や特定の国や地域に対する輸出規制、制裁措置、ライセンス制度などがあります。

特に、軍事用途に利用される可能性のある製品や軍民両用技術に対して厳しい規制が適用され、国際的な平和と安全の維持に寄与しています。(注3


関連記事:外為法改正(2023年7月施行)先端半導体の輸出規制によるコンプライアンス管理への影響とは?

輸出管理内部規程があっても外為法違反は頻発する

輸出管理内部規程を設けているにもかかわらず、外為法に違反する事例は少なくありません。(注4

外為法や輸出入取引法などの法律や規制は非常に複雑であり、頻繁に変更されます。国際取引の際には、常に法令や規制の追加・変更が行われていることを意識しなければなりません。

輸出管理内部規程を備えているものの周知徹底がされず、適切に業務へ反映されていない企業も存在しており、形骸化した輸出管理内部規程は問題となっています。特に従業員数の多い企業では、異なる部署や担当者が輸出取引に携わる場合があるため注意が必要です。


輸出管理に対する理解度や一貫したコンプライアンス意識の不足、組織的なコミュニケーションや適切な教育プログラムの欠如が違反リスクを高める原因となってしまいます。

外為法違反は様々な要因が重なることで発生するため、組織全体で輸出管理に対する意識を高めたうえで、最新の法令を輸出管理内部規程に反映することが重要です。

輸出管理内部規程の形骸化に対するソリューション

多くの企業が輸出管理内部規程の効果的な活用方法、そしてその形骸化に対するソリューションを必要としています。外為法や輸出入取引法などの法律や規制を遵守しなければ、適切な輸出取引は実現しません。

法令遵守の確保や輸出手続きの効率化、コンプライアンス違反や関税リスクを低減するためには、輸出管理におけるリスクマネジメントが不可欠です。


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参考情報

注1:経済産業省 安全保障貿易管理 企業等の自主管理の促進

注2:経済産業省 外為法違反事案の分析結果について(安全保障貿易関係)(2024年度)

注3:独立行政法人国際協力機構(ジャイカ) 民間連携事業 業務委託契約 契約管理ガイドライン 別添2.輸出管理ガイドライン

注4:【注意喚起】原産地証明書における原産国の虚偽記載に伴う処分決定について