サステナブル・サプライチェーンの構築に人権デューデリジェンス(DD)が必須である理由

欧州を中心とした人権デューデリジェンス法制化の動きを受けて、企業が配慮すべき人権問題の範囲は拡大しつつあります。自社による直接的な関与だけでなく、取引のあるサプライチェーンを介して自社の事業活動が間接的に関わりを持つ人権問題にも対応が求められています。

そこで本記事では、サステナブルなサプライチェーンとは何か、なぜ構築に人権デューデリジェンスが必須なのか、またその構築の流れについて解説します。

また「人権侵害等の特定・評価」に役立つ自動スクリーニングソフト「ONESOURCE Denied Party Screening」についてもご紹介しますので、サプライチェーンリスク管理を効率よく実施したいとお考えのご担当者様はぜひご一読ください。

人権デューデリジェンス(DD)におけるサステナブルなサプライチェーンとは? 

サステナブルなサプライチェーンとは従来の商慣行に持続可能性を統合したもので、企業がサプライチェーン全体を管理し良好なガバナンスを確実に実行するという考え方です。もともとサプライチェーンは、製品とサービスを作り流通に至るまでの一連の流れのことを意味します。

サステナブルなサプライチェーンでは、市場に関与するすべてのステークホルダーにとっての長期的な環境的・社会的・経済的な影響を製品とサービスのライフサイクルを通じて企業が管理していくことを目的としているのです。

たとえば企業は、事業活動を通じて人権を尊重する責任を果たしていることを明確に示す必要があります。万が一、ステークホルダーから人権侵害の懸念を表明された場合には、企業が講じた措置を説明できることが重要です。

サステナブル・サプライチェーンが重要な理由

2017年に、ガイダンス規格のISO 20400「持続可能な調達-Guidance」が新しく発行されました。このガイダンスを活用して多くの企業がサステナブルなサプライチェーンの構築に乗り出している理由は、法規制対応の強化や企業ブランド力向上などさまざまです。(注1

近年では整備が進む国際規範などと照らし合わせて、企業の社会的責任を果たすためにサプライチェーンが関与する人権問題に対応することが重要視されています。

サプライチェーン上の人権問題に適切に対応することは、法令・国際規範への対応にとどまらず、企業の信頼性や社会的評価にも大きく関わります。こうした取り組みを継続的に行うことで、「働きがいのある会社」「投資先や取引先として魅力ある会社」として評価されやすくなり、人材や資金、取引機会の獲得にもつながります。

そのため、サステナブルなサプライチェーンを構築して情報開示し、ステークホルダー間のより良好なコミュニケーションを促進していくことが重要になるのです。

高まる人権デューデリジェンスの重要性

サプライチェーンをサステナブルなものにするために、環境に次いで人権に関する規範や規制を導入する動きがさまざまな国や地域で拡大しています。人権デューデリジェンス、いわゆる人権DDは、世界の潮流を考慮するとサステナブルなサプライチェーンの構築において不可欠のテーマです。

たとえば、2022年2月にEUが企業に対してサプライチェーンを通じた人権・環境DDを義務付ける「企業持続可能性デューデリジェンス指令案(以下、DD指令案)」を公表しました。そして、2024年7月にはEUにおいて「企業サステナビリティ・デューデリジェンス指令(CSDDD)」が発効しました。この指令は、適用対象の企業の規模によって2027年7月より適用が開始される予定です。EU域内の企業だけではなく日本企業にも影響があるとされており、対応を進める必要があります。(注2、(注3

一方、日本政府は2011年に国連人権理事会において採択された「ビジネスと人権に関する指導原則(以下、国連指導原則)」を踏まえ、2020年に「『ビジネスと人権』に関する行動計画(2020-2025)」を策定しました。この中で、国連指導原則17で示された人権デューデリジェンスの導入促進への期待が表明されています。

さらに日本政府は2022年に「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を公表して企業の理解を深める支援を行い、人権尊重の取り組みを促進しているのです。(注4

サステナブル・サプライチェーンにおける10原則 

国連指導原則に先立ち2000年に発足した「国連グローバル・コンパクト」は、2004年に腐敗防止に関する原則を採択し「10原則」をまとめました。10原則は下記に依拠しており、約160か国、17,500超の組織が署名(2021年時点)するなど世界的なコンセンサスを基盤としています。(注5

  • 世界人権宣言(1948年)
  • 環境と開発に関するリオ宣言(1992年)
  • 労働における基本的原則および権利に関するILO宣言(1998年)
  • 腐敗防止に関する国際条約(2003年)

ここではサステナブルなサプライチェーン構築に役立つ、国連グローバル・コンパクトの4分野10原則をご紹介します。(注6

分野原則企業はどう行動すべきかサプライチェーンとの関連性
人権1国際的に宣言されている人権の保護を支持、尊重し、企業は、雇用の自由選択権、児童の労働からの解放、差別からの解放、国際的な労働基準の維持などに配慮
2自らが人権侵害に加担しないよう確保すべきである
労働3結社の自由と団体交渉の実効的な承認を支持し、
4あらゆる形態の強制労働の撤廃を支持し、
5児童労働の実効的な廃止を支持し、
6雇用と職業における差別の撤廃を支持すべきである
環境7環境上の課題に対する予防原則的アプローチを支持し、企業はクリーンテクノロジーの利用を促進する
8環境に関するより大きな責任を率先して引き受け、
9環境にやさしい技術の開発と普及を奨励すべきである
腐敗防止10強要と贈収賄を含むあらゆる形態の腐敗の防止に取り組むべきである誠実なビジネス行動によって評判を高める

出典:サプライチェーンの持続可能性 継続的改善のための実践的ガイド |国連グローバル・コンパクト&BSR

サステナブルなサプライチェーンの構築の流れ 

サプライヤーが関与した人権侵害であっても、バイヤー企業である自社の評判や信用を棄損するかもしれません。リスク防止のためにも、ステークホルダーとの対話を通じて自社やサプライヤーの人権デューデリジェンス対応を担保する枠組みづくりが必要になります。

ここではサステナブルなサプライチェーン構築に向けた実践的なステップについて、次のとおり見ていきましょう。(注7

  1. Human Rights Officerの設置など人権デューデリジェンス実施に向け内部管理体制を強化する
  2. サプライヤーマネジメント戦略を策定し、サプライヤーを定期的に調査する

(人権デューデリジェンス実施に関する情報開示の要請が難しい場合は、次のような戦略を検討する)

  1. 契約に人権デューデリジェンス対応に関する項目を含む
  2. 各サプライヤーに自社が作成したコンプライアンスマニュアル遵守を求める
  3. 自社が作成したSAQ(自己問診票)を活用し各サプライヤーを評価する
  4. 工場など現場を訪問・ヒアリングすることで情報を収集する
  5. 外部評価サービスやテクノロジーを活用し、サプライヤー・リスクを評価する
  1. 人権侵害などを特定・評価する
  2. 人権問題を防止・軽減するための対策を自社が実施、あるいはサプライヤーに改善を要請する
  3. 透明性を確保した上で、取り組みの実効性を評価する
  4. 説明および情報開示を実施する

すべてのステップにおいて、「ガバナンス」「透明性」「エンゲージメント(関係構築)」の3原則を考慮する必要があります。

 

人権デューデリジェンスの基本概念やガイドラインに沿った進め方を解説した記事については「人権デューデリジェンスとは?ガイドラインに沿って進め方・実務例を解説 」からご覧ください。

人権デューデリジェンスの義務化や人権リスク対策を解説した記事については「人権デューデリジェンス義務化の潮流、サプライチェーンにおける人権リスクとどう向き合うか?」からご覧ください。

人権デューデリジェンスを効率よく実行するために 

国際規範の整備が進みコンプライアンスプログラムが拡大する中、貿易実務において人権デューデリジェンスを手作業で実施している企業様は見直しが必要になってくるでしょう。「人権侵害等の特定・評価」を行う際に取引禁止対象や制裁対象を特定する手作業は、煩雑であるだけでなくリスクを伴います。

自国および世界のビジネスパートナーと安心して取引を行うためには、経済制裁やその他貿易制裁に抵触するリスクを避けなければなりません。そこで人権デューデリジェンスを効率よく実施するためには、カスタマーおよびサプライヤーをサステナブルかつ自動的にスクリーニングできるソリューションの活用がおすすめです。


取引禁止対象スクリーニングソフト「ONESOURCE Denied Party Screening」を活用すれば、リスクやペナルティの軽減が可能です。コンプライアンスプログラムがさらに拡大した場合の対応や、新しい取引先との関係構築を始める際の意思決定をスムーズに行えるようになります。

サプライチェーンリスク管理に役立つONESOURCE Denied Party Screeningについては、以下リンクからお問い合わせください。

参考情報

注1:ISO 20400 | ISO審査登録センター

注2:バリューチェーンも人権・環境デューディリジェンスの対象に(EU) | 日本貿易振興機構(ジェトロ)

注3:日本企業の対応は?EUで人権デューディリジェンス義務化(1) | 日本貿易振興機構(ジェトロ)

注4:人権尊重のためのガイドライン<ダイジェスト> | 経済産業省

注5:ライブラリー 各種宣言・条約 | グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン

注6:国連グローバル・コンパクトの10原則 | グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン

注7:欧州の人権・環境デュー・ディリジェンス義務化と日本への示唆 | 日本総研

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