FTA

バングラデシュとのEPA交渉の最新動向や発効後に期待される効果を解説

バングラデシュは、高い経済成長率を誇る新興国です。2024年の日本・バングラデシュ間の貿易規模は約30億ドルにものぼります。

本記事では、バングラデシュの基本情報や日本との関係、EPA締結の最新動向について解説します。また、関税戦略の最適化や見直しに役立つONESOURCE FTA Analyzerについても紹介するので、貿易実務担当者の方はぜひ参考にしてください。

バングラデシュ人民共和国の基本情報

海洋国家であるバングラデシュは、伝統的な親日国です。インドとASEANメンバーであるミャンマーとの交点に位置するバングラデシュは、地政学的にも重要視されています。平均賃金の低さや縫製インフラ整備などにより、繊維大国としての地位を築き上げました。

項目概要
人口1億7,285万人(2024/2025年度暫定値、バングラデシュ統計局)
面積14万7,570㎢
宗教イスラム教(国教)
1人当たりGDP2,675米ドル(2023/24年度、バングラデシュ中央銀行)
実質GDP成長率4.2%(2023/24年度、バングラデシュ統計局)

出典:概況・基本統計 | 日本貿易振興機構

日本とバングラデシュの関係

日本は主要援助国として、バングラデシュのインフラ整備などを支援してきた歴史があります。2008年頃から繊維分野などで多くの日本企業が進出するなど、バングラデシュは目覚ましい経済成長を遂げており、両国の経済関係も強まっている状況です。

近年では、北海道の約1.7倍ほどの土地に、若年層を中心に約1.7億人もの人口を抱える一大消費市場としてバングラデシュは注目されています。そのため、日本企業の進出や繊維関連、製造業などへの投資が積極的に行われているのです。


日本とバングラデシュは良好な関係を築きながら2022年、外交関係樹立50周年を迎えました。二国間関係の飛躍的な深化に伴い、バングラデシュは2023年4月、「戦略的パートナーシップ」に格上げされています。(注1

貿易規模

2023年の日本からバングラデシュへの輸出額は2,450億円、輸入額は2,214億円と、両国間の貿易規模は大きくはありません。 しかしながら2010年代以降、日本の貿易全体に占めるバングラデシュとの貿易シェアは、輸出・輸入ともに伸びています。(注1

会計年度バングラデシュの日本からの輸入(百万米ドル)
2017-181,869.5
2018-191,849.1
2019-201,720.7
2020-212,001.2
2021-222,435.8

※バングラデシュは7月1日から6月30日までの会計年度で貿易統計を集計

出典:あり得べき日・バングラデシュ経済連携協定(EPA)に関する共同研究報告書|外務省

日本のバングラデシュからの輸入(百万米ドル)
20181,442.7
20191,473.5
20201,311.6
20211,452.6
20221,714.7

出典:あり得べき日・バングラデシュ経済連携協定(EPA)に関する共同研究報告書|外務省

日本からの輸出と輸入の状況

バングラデシュは日本に向け紡織用繊維及びその製品を、日本はバングラデシュに向け鉄鋼・鉄鋼製品、機械類、自動車などの工業製品を輸出するなど、両国は相互補完的な貿易関係にあります。

2025年の統計では、日本にとってバングラデシュは世界第35位の輸出相手国、第46位の輸入相手国です。

バングラデシュから日本へのサービスの輸出も見逃せません。過去10年間でサービス輸出総額は約3倍に増加していることから、EPA締結により両国間のサービス貿易はより増大するものと考えられます。共同研究報告書では、サービスの具体例として、IT・通信、流通、金融・ビジネス、輸送などが挙げられています。特にIT分野や電子商取引は、今後の両国間の投資・貿易拡大につながる分野として注目されています。(注2

バングラデシュとのEPA交渉の背景

EPA交渉の開始が2024年3月に決定した背景には、「あり得べき日・バングラデシュEPAに関する共同研究」の実施があります。本決定は、包括的かつ高いレベルのEPAの締結は両国間における経済関係の強化に役立つとの共同研究報告書(2023年12月公表)における提言を踏まえたものです。(注2

後発開発途上国(LDC)卒業による貿易への影響


2021年11月の国連総会決議により、バングラデシュはラオス、ネパールとともに後発開発途上国(LDC)ステータスを卒業する予定です。バングラデシュのLDC卒業時期は2026年11月を予定しています。1975年のLDC認定以来、バングラデシュは輸出に際して、先進国をはじめとする様々な国々から関税優遇措置(無税アクセス供与)を受けてきました。

例えば「特別特恵受益国(LDC)」であるバングラデシュから衣料品を日本へ輸入する場合、一部皮革製品など例外品目を除く全製品について、適切な書類を提出すれば関税は無税です。バングラデシュに進出し衣料品ビジネスを手がける日系企業は、この特別特恵関税の恩恵を受けています。しかし、LDCを卒業すれば、特別特恵関税をはじめとする各種優遇措置の適用が受けられなくなる可能性があります。JETROによると、こうした影響を懸念し、バングラデシュの主要経済団体は2026年から2032年へのLDC卒業延期を要請しています。一方で、暫定政権は予定どおりの卒業を重視する姿勢を示しており、LDC卒業後を見据えた貿易環境の変化への対応が重要になっています。(注3、(注4

そのためLDC卒業による影響を見据えて、バングラデシュはFTA交渉を複数の国々と始めているのです。中国、韓国、ASEAN等、他の国々とのFTA発効が先行すると、日本との貿易に影響が出るとの懸念も広がっています。

EPA締結までの動向

EPAの交渉開始が2024年3月に発表された後、2024年5月19日から23日にかけてバングラデシュのダッカで第1回会合が開催されました。この会合では、下記の分野について議論が交わされました。(注5

  • 今後の交渉の取り進め方
  • 物品貿易
  • 原産地規則
  • 税関手続き及び貿易円滑化
  • 投資
  • 電子商取引

その後も、2024年11月から2025年9月にかけて第2~7回会合が開催され、2025年12月に大筋合意、そして2026年2月6日に署名が行われました。バングラデシュにとって初となる経済連携協定の締結により、日本とバングラデシュの間では、貿易や投資の拡大をはじめ、幅広い経済分野での連携強化が期待されています。両国の経済関係は新たな段階へと進み、今後は企業進出や産業協力のさらなる活発化にも注目が集まっています。

FTAのメリットや課題に関する詳しい解説は「FTA(自由貿易協定)とは?関税免税によるメリットと課題」からご覧ください。

バングラデシュとのEPA締結により期待される効果

ここでは、署名されたEPAの内容と、発効後に期待される効果について見ていきましょう。

日本とバングラデシュのEPA戦略

日本は、自由で公正な経済秩序の構築を重視しています。そのため日本にとってのEPAは、関税の撤廃など貿易の自由化にとどまらず、新しいハイレベルなルール作りを担う存在です。

一方、バングラデシュのEPA戦略は、市場アクセスの拡大やLDC卒業後の特恵的な市場アクセスの維持を目的としています。バングラデシュにとってのEPAは、輸出製品及び市場の多角化を促すほか、国内製造業の基盤を広げ、特定の製品への過度な依存を減らしていくために重要なのです。(注2

日本の輸出企業への影響

現在バングラデシュでは、「対日輸入適用税率」を次のような仕組みで算出しています。(注4

一般税率と品目により補足税、付加価値税などを加算

下記に、バングラデシュの諸税についてまとめました。

バングラデシュ輸入時に課税される諸税諸税の概要
一般関税(Custom Duty:CD)1~5%、10%、25%に分かれる
補足税(Supplementary Duty:SD)10~500%※地場産業保護の対象品目が高い※課税されない品目あり
付加価値税(Value Added Tax:VAT)15%※課税されない品目あり

出典:バングラデシュ 関税制度|日本貿易振興機構

また、バングラデシュの平均関税率を見ると(WTO ”World Tariff Profiles 2023”)、日本からの主な輸出品目である自動車部品や鉄鋼など、多くの品目で10%以上の関税がかかっています。署名されたEPAでは、鉄鋼、自動車部品、織物、電子部品など多くの品目で関税撤廃が盛り込まれました。

「戦略的パートナーシップ」の行方に注目

バングラデシュは、安定成長を続けている新興国です。戦略的パートナーシップに格上げされたとおり、日本とバングラデシュの関係は著しく深化しています。今後も経済規模の拡大が期待されることから、日本の輸出企業にとってはEPA締結による関税引き下げの恩恵も大きくなるでしょう。


サプライチェーンの再構築にあたって、関税の最適化はコスト削減効果を上げるために必要です。そこで経営層に取引経路の提案をする際に、FTA/EPA分析を活用されてはいかがでしょう。詳しくは、下記リンクからご確認いただけます。

参考資料

注1:最近のバングラデシュ情勢と日バングラデシュ関係|外務省

注2:日本とバングラデシュ人民共和国との間の経済連携協定(EPA)に関する共同研究報告書の発表|外務省

注3:国連総会、バングラデシュのLDC卒業を決議|日本貿易振興機構

注4:バングラデシュ 関税制度|日本貿易振興機構
注5:日・バングラデシュ経済連携協定(EPA)交渉第1回会合(概要)|外務省

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