GCC諸国からなる湾岸協力理事会とは?FTA交渉中の国・地域、日本との関係も解説

GCC諸国からなる湾岸協力理事会とは?

湾岸協力理事会とは、中東・アラビア湾(ペルシア湾)沿岸地域で1981年に設立された地域協力の枠組みであり、正式名称は「The Cooperation Council for the Arab States of the Gulf」です。略称は「Gulf Cooperation Council(以下、GCC)」であることから、6つの加盟国はGCC諸国と呼ばれています。

ここでは、GCCの基本情報をまとめました。(注1

データ項目内容
GCC諸国(6カ国)サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、オマーン、カタール、クウェート
人口5,640万人(2021年:GCC統計局発表値)
実質GDP1.5兆ドル(2021年:GCC統計局発表値)
一人あたりGDP29,700米ドル(2021年:GCC統計局発表値)
エネルギー資源世界の原油生産量の約2割、天然ガス生産量の約1割を産出
最高理事会(首脳会議)(The Supreme Council)重要事項に関する決議は全会一致で成立手続事項に関する決議は多数決で成立
閣僚理事会(外相会議)(The Ministerial Council)議事成立のための手続は、最高理事会と同じ
GCC事務局(The Secretariat-General)リヤド(サウジアラビア)

出典:湾岸協力理事会(GCC)概要|外務省

GCC諸国間及び域外との政治的な関係

GCCでは6か国の協力をベースに、防衛・経済などの分野の調整、統合、連携を目的としており、統一関税や防衛問題などのあり方について協議が行われています。しかし設立当初は、集団安全保障体制をより意識した枠組みでした。

設立当時、中東地域はイラン革命、ソ連のアフガニスタン侵攻などの脅威にさらされていたことから、これらの脅威に対処するためにも同じような王制・首長制国家を維持する湾岸アラブ6か国は相互の結束を強化する必要があったのです。一方、90年代以降は原油価格の低迷等を受け、域内経済統合を目指す枠組みとしての色合いを強めてきました。

2000年代半ば以降、石油価格は上昇傾向に転じ、潤沢な石油収入を背景に消費財貿易を通じてインドや中国など新興市場国とGCC諸国間の関係が緊密化しつつあります。また近年では、GCCは域外との経済連携を推し進めている状況です。

統一通貨構想など域内経済統合に向けた動き

GCC統一経済協定に基づき1983年11月、域内関税ゼロとする自由貿易地域が成立しました。しかし税関手続きの相違などがあり、GCC域内貿易の自由化は実質的には機能しませんでした。

次に2003年1月、関税同盟が発足し、一部例外品目を除いて対外共通関税(5%)の導入を開始し、2015年には導入完了しています(GCC統一関税法)。ただしサウジアラビアが2020年6月、一部の品目で関税を引き上げるなど、関税同盟は完全に機能しているわけではありません。2008年1月にはヒト、モノ、カネの移動の自由化を目指す共同市場が発足しました。しかし国境に残る税関チェックポイントにおいて、通関が滞るといった課題も抱えています。

2009年には、サウジアラビア、クウェート、カタール及びバーレーンの4か国間で、GCC通貨統合協定の発効に至りました。しかしGCC諸国の足並みは揃っておらず、2024年10月時点でも通貨統合は実現していません。

FTA交渉中の域外の国・地域

GCCは、シンガポール及び欧州自由貿易連合(EFTA)との間でFTAをすでに発効済みです。パキスタンとは2023年9月、暫定的なFTAに署名、韓国とは2023年12月、FTA交渉が妥結に至りました。GCCが輸入する自動車及び自動車部品への関税が段階的に撤廃されることから、韓国の中東への輸出競争力が高まるものと見られています。

進捗の度合いにばらつきはあるものの、EU、英国、日本、中国、トルコ、インド、メルコスール、オーストラリア、ニュージーランドとも、GCCはFTA交渉を進めています。(注2

メルコスール加盟国と日本との関係については「メルコスール加盟国と日本との関係は深化の兆しあり?設立経緯や交渉中のFTAも解説」からご覧ください。

GCCと日本との関係

GCC諸国は建国当初から、石油依存経済からの脱却、経済の多角化、経済の民営化といった経済開発目標を掲げ、産業基盤の転換と海外からの投資誘致を推進しています。当初は日本を主要な経済パートナーとみなし、貿易関係の拡大や直接投資・技術の導入を図っていました。

しかしながらインドや中国など新たな経済パートナーの台頭によって、日本のプレゼンスは決して大きいとは言えません。実際にGCC諸国の主要貿易相手国の推移を見ると、近年、貿易額における日本のシェアは低下傾向にあります。(注3

そのため日本は、個別にGCC諸国との協力関係を深めるなどの取り組みを行っています。

  • 日・サウジ・ビジョン2030
  • 日・UAE「包括的・戦略的パートナーシップ・イニシアチブ(CSPI)」

貿易相手地域としてのGCC

日本にとって、貿易相手地域のGCC諸国は、石油及び天然ガスの重要な調達先です。自動車、鉄鋼、原動機ほか、清涼飲料など幅広い製品の輸出先でもあり、日本にとって重要な市場と言えます。

下記に、日本とGCC諸国間の関係を示す基礎データをまとめました。

データ項目内容
日本との貿易額(2022年:財務省貿易統計)日本からGCCへの輸出額:約2兆3,752億円
GCCから日本への輸入額:約15兆2,275億円
日系企業数(2021年)530社
在留邦人数(2022年)5,817人

出典:湾岸協力理事会(GCC)概要|外務省

FTA締結による日本への影響

日・GCC自由貿易協定交渉が2006年9月に始まり、第2回会合まで進みました。しかし2009年以降、FTA交渉は進展していません。中国、韓国、インド、オーストラリア、EU等も、時期を同じくしてGCCとのFTA交渉が中断したものの、近年では交渉開始・再開の動きが見られます。そこで日本経済団体連合会は2022年、政府に対し「日GCC FTA交渉再開が急務」との提言を行いました。(注4

2023年7月16日付外務省の発表によると、「日本・GCC外相会合」の定例化や、日・GCC自由貿易協定の交渉を2024年中に再開することが決定しています。GCCとの間でFTAが締結された場合に、日本の原油に対する関税は無税であるため、日本の輸入者は関税負担の軽減といった影響は受けません。しかしGCCとのFTA締結は、資源・エネルギーの安定供給につながるものと期待されます。

日本からGCC諸国への輸出を品目別に見ると、乗用車やバス・トラックなど自動車のシェアが非常に高いです。自動車の輸出台数を仕向地別に見ると、2023年時点のGCC諸国のシェアは1割近くあることから、日本にとって重要な輸出先と言えるでしょう。自動車には5%の関税がかけられているために、FTA締結により関税率の引き下げが実施されると、日本のGCC諸国への輸出競争力は増すと見込まれます。(注5

GCC諸国との戦略的関係強化に注目

原油・天然ガスの主要産出国であり、消費財への関心が高まるGCC諸国との関係強化は、日本にとって急務です。2024年以降、日・GCC自由貿易協定の交渉の行方を、日本企業は見定める必要があるでしょう。


国際貿易にあたっては、規制等の情報を踏まえながら、どの調達国、取引経路、貿易協定が最も有利な費用対効果をもたらすかを調査する必要があります。FTA/EPA分析は、経営層への提案時に役立つレポートを提供するために、意思決定の迅速化が可能です。ビジネスチャンス創出を支援するFTA分析・管理プロセスについて、詳しくは下記リンクからご確認ください。

参考資料

注1:湾岸協力理事会(GCC)概要|外務省

注2:GCC Free Trade Agreements Support the UAE’s Top Global Rankings|UNITED ARAB EMIRATES MINISTRY OF ECONOMY

注3:GCC諸国をめぐる企業進出と労働移動から見た経済関係の変化|日本国際問題研究所

注4:中東湾岸諸国との戦略的関係強化を求める(2022年12月13日)|日本経済団体連合会

注5:交渉が予定されている EPA で期待される効果(2024年4月19日)|三菱UFJリサーチ&コンサルティング

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