メルコスール加盟国と日本との関係は深化の兆しあり?設立経緯や交渉中のFTAも解説

メガ経済圏であるメルコスールは、日本にとって重要な輸出先かつ投資先であり、食料・資源・エネルギーなど多くの産品の供給先として安全保障の観点からも重要視されています。メルコスールは人口約3億人、GDP約2兆ドルの大規模な関税同盟です。

本記事では、メルコスール加盟国の概要や日本との関係、最新動向について解説します。また、EPA/FTAの管理、意思決定の効率化や関税削減の最大化に役立つONESOURCE FTA Analyzerについても紹介するので、貿易実務担当者の方はぜひ参考にしてください。

メルコスールとは

メルコスールとは、日本語で「南米南部共同市場」と呼ばれる関税同盟です。ラテンアメリカ統合連合(ALADI)の取り組みの一部として、1995年1月1日、域内の関税撤廃などを目的に発足しました。

共同市場理事会決議(CMC決議32/00号)により、2001年6月以降、域外との通商協定交渉は加盟国単独ではなく「共同」で、つまりコンセンサス(全会一致)方式で行うのがメルコスールの特徴の1つです。(注1

メルコスールの設立背景と加盟国

メルコスールの設立は、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイによって1991年3月合意・署名された「アスンシオン条約」で規定されたものです。同年11月に発効した同条約を背景に、域内関税の撤廃などを目的として1995年1月1日に発足したメルコスールは、自由貿易地域として認識されています。その一方で、議会の設立や外交面での共同歩調による政治統合も目指していることから、「EUをモデルにしている」と評価されることもあります。(注2

ここでは、メルコスール加盟国やその機構についてまとめました。

概要
加盟国(全6カ国)ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、ボリビア、ベネズエラ※
域内人口約2億8,042万人(2024年世界銀行)
域内GDP合計約2兆9,878ドル(2024年世界銀行)
準加盟国(全7カ国)チリ、コロンビア、エクアドル、ガイアナ、パナマ、ペルー、スリナム
共同市場理事会(CMC)最高機関
共同市場グループ(GMC)執行機関
貿易委員会(CCM)関税同盟全体の実施・運営機関
事務局・議会モンテビデオ(ウルグアイ)
議長国アルファベット順で半年ごとに交代

出典:南米南部共同市場(メルコスール)|外務省

※ベネズエラの加盟資格は停止中

メルコスールの取り組み

メルコスールの目的・原則は、アスンシオン条約において規定されており、主に下記の4つに集約されます。(注1

  1. 域内の関税及び非関税障壁の撤廃等による財、サービス、生産要素の自由な流通
  2. 対外共通関税の創設、共通貿易政策の採択及び地域的・国際的な経済・貿易面での協調
  3. マクロ経済政策の協調及び対外貿易、農業、工業、財政・金融、外国為替・資本、サービス、税関、交通・通信等のセクター別経済政策の協調
  4. 統合過程強化のための関連分野における法制度の調和

上記の「1」については、1995年1月より域内関税は原則ゼロです。ただし自動車、自動車部品、砂糖については、域内自由化の対象外とされています。

「2」については、全品目の約85%(約9,000品目)を対象に「対外共通関税率(0~20%)」を適用中です。しかし、ブラジルの自動車・部品、砂糖、繊維など、国ごとに例外品目の指定が認められている点に注意が必要です。

「3」と「4」は、「EUをモデルにした」という評価を得た所以です。(注2

FTA交渉中の域外の国・地域

近年では、地域統合を目指す内向きの市場経済から、メルコスール域外に向けた経済拡大など、新しいビジネスチャンスに繋がる動きが見られます。2024年7月に開催された第64回メルコスール首脳会議においても、今後の新たな通商協定締結に関して意見交換が行われました。

ここでは、メルコスールがFTAなどの交渉を行っている第三国・地域をまとめました。(注3

国・地域名称概要
米州域内アンデス共同体(CAN)メルコスールとCANの各加盟国が相互に準加盟国として乗り入れ(2005年6月の第28回メルコスール首脳会合での決定)
その他チリ、メキシコ、キューバと経済補完協定を締結
米州自由貿易地域(FTAA)交渉は実質上中断しており、9つの交渉委員会は2004年以降開催なし
EUEU2026年1月に正式署名され、同年3月にはパラグアイ議会での承認によりメルコスール4カ国での批准手続きが完了
その他の国・地域南部アフリカ関税同盟(SACU)署名済み特恵関税協定の拡大交渉中
インド署名・発効済み特恵関税協定の拡大交渉中
イスラエル、エジプト、パレスチナFTA締結済み
欧州自由貿易連合(EFTA)2017年6月にFTA交渉開始し、2025年9月署名
韓国対話中
中国FTA交渉の進展なし
カナダ2018年3月に交渉開始し、2021年以降中断していたが、2025年10月に交渉再開
太平洋同盟既存の経済補完協定の深化・拡大のための交渉を実施中
ASEAN、オーストラリア・ニュージーランド経済緊密化協定(CER)対話中

出典:南米南部共同市場(メルコスール)|外務省

メルコスールと日本との関係

日本からの輸出では、自動車部品などの輸送用機器がメインです。日本への輸入では、農産物や鉄鉱石などの原材料がメインとなっています。2023年の貿易額を見ると、メルコスールから日本への輸入額は、日本からメルコスールへの輸出額よりも大きい状況でした。(注4

  • 日本の輸入額:1兆7,129億円
  • 日本からの輸出額:7,655億円

過去に実施された協議や対話

2011年6月にパラグアイで開催された第41回メルコスール首脳会合に、日本が初めて招待されました。出席した松本外務大臣(当時)による、経済連携推進の重要性に関する表明や提案がきっかけとなり、以来「日・メルコスール経済関係緊密化のための対話」が下記の通り継続的に実施されています。(注1

  • 2012年11月:第1回
  • 2015年7月:第2回
  • 2016年5月:第3回
  • 2017年5月:第4回
  • 2024年4月:第5回

政府による中南米における地域戦略策定の動き

経済産業省は「グローバルサウス未来志向型共創等事業」と名付け、事業の委託先を募集するなどしながら、中南米との経済連携強化に向けた戦略策定に乗り出しています。日本の強みと相手国の社会課題解決を掛け合わせた重点分野戦略の策定も目標にしています。募集要項で示された対象の事業内容の例は次のとおりです。(注5

  • GX分野:化石燃料からクリーンなエネルギー利用への転換等GHG排出削減を図る案件
  • DX分野:デジタル技術を用いて、ビジネスモデルの変革を図る案件
  • 経済安保分野:「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律施行令」で指定された「特定重要物資」(別表「特定重要物資の対象となる品目」を参照) に係る案件

民間からの提言

メルコスール加盟国であるブラジルやアルゼンチンへの輸出額が大きな品目に、自動車のギヤボックスがあります。WTO 『World Tariff Profiles 2023』によれば、この場合の関税率は18%と高いですが、EPAが締結されると輸出環境の改善が見込めるほか、原材料の安定的な確保につながるとして期待されています。

そこで日本経済団体連合会は2023年9月、同年10月、そして2024年1月、メルコスールと日本との関係の発展に向けた提言と、日・メルコスールEPAの早期実現の要望を政府に伝えました。

さらに、2025年11月にブラジルで開催されたCOP30などを契機とし、関係深化に向けた働きかけが継続して行われています。(注6

EPAとFTAの違いや、日本が締結している協定に関する詳しい解説は「EPA / FTA / TPPの違いとは?最新動向と貿易実務の関連性」からご覧ください。

オープンな姿勢に転じつつあるメルコスール

域外との新たな通商協定締結に関して意見交換が行われるなど、メルコスールはFTA/EPA交渉にオープンな姿勢に転じつつあります。日本政府はメルコスールとの対話は進めているものの、FTA/EPA交渉は未だ開始されていません。

2025年11月には、加盟国のブラジルがCOP30開催国としてグローバルで脚光を浴びました。こうした機運の高まりを受け、日本政府の動き次第では、メルコスールとのFTA/EPA交渉にさらなる進展が期待されます。


混沌とする世界情勢を踏まえてサプライチェーンの強靱化を目指す際には、既存のFTAを分析した上で再構築する必要があります。煩雑な手作業のほか、コンプライアンスリスクやコストを軽減するためには、テクノロジーを活用したFTA分析・管理プロセスを導入するのがおすすめです。信頼性が高く一元化・自動化されたソリューションについては、下記リンクからご確認ください。

参考資料

注1:南米南部共同市場(メルコスール)|外務省

注2:メルコスールの展開と農産物貿易|農林水産省

注3:通商白書2024 第Ⅲ部 第2章 第6節 中南米|経済産業省

注4:交渉が予定されている EPA で期待される効果|三菱 UFJリサーチ&コンサルティング

注5:令和6年度補正 グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金(小規模実証・FS事業)|経済産業省

注6:グローバルサウスとの連携強化に関する提言(2024年4月16日)|日本経済団体連合会

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