本記事では、人権デューデリジェンスの概要と義務化の流れ、ガイドラインに沿った進め方、実務例をご紹介します。人権リスクを最小限に抑え、コンプライアンス管理を徹底したサプライチェーンを構築するためにぜひお役立てください。
人権デューデリジェンスとは
人権デューデリジェンスとは、企業がサプライチェーンにおける人権侵害等を特定した上で、どのように対処したかを説明・情報開示する行為のことを指します。企業活動における人権侵害等の防止・軽減を目的としています。(注1
人権デューデリジェンス義務化の流れ
国際社会においては欧米主導で人権デューデリジェンスの義務化が進んでいます。
2011年の第17回国連人権理事会においては、「ビジネスと人権に関する指導原則」が全会一致で支持されました。さらに2022年2月に欧州委員会において「企業持続可能性デューディリジェンス指令案」が公表されたのち、対象企業を大幅に絞り込むという調整を経て、2024年4月には欧州委員会で、同年5月にはEU理事会で採択されました。今後、2027年以降段階的な適用が開始され、包括的な人権デューデリジェンスの実施が義務化されることになります。他にも、多くの日本企業が進出する東南アジアでも人権問題が注目を集めています。(注3
日本国内においても「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」が策定され、人権デューデリジェンスの実施が奨励されています。(注2
人権デューデリジェンスの進め方
「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」(以下、ガイドライン)に即し、人権デューデリジェンスの進め方を以下に示します。(注1
1. 人権侵害等の特定・評価
ガイドラインの活用や検討会を開き、サプライチェーンにおける人権侵害等を特定し、深刻度を評価します。最も重大なリスクが想定される事業領域を特定し、人権侵害等の内容を評価します。
原材料生産先の従業者、製造加工の調達先の従業員、出荷物流で取引先の従業員等、サプライチェーンに関わるすべての労働者が評価の対象です。
女性・子ども・障害者・移民等含め、強制労働や児童労働、人権・宗教・性別等による差別が行われていないか、セクターリスク、地理的リスク、製品のリスクなどが生じていないかなどを評価します。
厳格性の高い手法から低い手法まで様々ありますが、事業者の立場を考慮し、最も効果的な手法を選択します。(注4
・国際的な人権監査基準に基づく監査
・自社での調査、外部委託により、人権侵害等をスコア評点化
・実地訪問、ステークホルダーとの対話
・現場視察
・電話・オンライン会議等によるヒアリング
・取引先への質問票の送付
2. 人権侵害等の防止・軽減
仮に自社が人権侵害等の問題を引き起こしている場合は、原因となる活動を停止し、再発を防止するための措置を講じる必要があります。ただし、即時に解決できない場合は、原因となる活動の停止に向けた工程表を作成し、段階的に停止しましょう。
サプライチェーンに含まれる企業が人権侵害等を起こしている場合、母体となる企業は、原因となる企業に対して影響力を行使し、人権侵害等を防止・軽減するよう努めます。反対に、母体企業が十分な影響力を持たない場合は影響力を強化、あるいは支援を行うことが必要です。
人権侵害等の防止・軽減の実務例では以下のような事例があります。
・取引先へのオンラインセミナーを実施し、労働条件の改善を求める
・調達ガイドラインを浸透させ、人権侵害等を防止する
・技能実習生のパスポートを保管、貯蓄金を管理するなどの行為は違法であることを周知し、取りやめを求める
・現地国の労働基準法に違反する過度の長時間労働が常態化していたことを確認し、改善を要請する
3. 取り組みの実効性の評価
苦情処理メカニズムにより得られた情報、ステークホルダーからの情報などをもとに、実施した対応策が人権侵害等の防止・軽減に効果があったかどうかを評価します。
自社従業員・サプライヤー等へのヒアリング、質問票の活用、現場への訪問、監査・第三者による調査などを通じて、取り組みの実効性を評価します。また評価をもとに調達ガイドライン・アンケート調査の項目を見直すことも必要です。
4. 説明・情報開示
企業は、人権を尊重する責任を果たしていることを説明できるように努めなければなりません。また人権尊重の取り組みについて情報を開示することが推奨されます。
具体的には特定した重大リスク領域、優先順位付けの基準、リスクの防止・軽減策の情報、実効性の評価等について、ウェブサイト等を通じて広く情報開示することが求められています。
企業に求められるサステナブル・サプライチェーンの構築
「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」では、サステナブル(持続可能な)サプライチェーンへの取組を企業に促しています。
サステナブル・サプライチェーンの構築において、企業は国際的に宣言されている人権擁護を支持し、尊重する姿勢が求められます。労働者の処遇、社会から取り残された人々などの問題に対処し、環境・社会への悪影響を最小限に抑えなければいけません。
ONESOURCE Denied Party Screening
強制労働などの特定・評価を行う際は、取引禁止対象や制裁対象を特定し、厳格に監視・管理することが求められますが、サプライチェーンに関わるサプライヤーすべての情報を隈なく監視・管理することは容易ではありません。
また、国際的な取引禁止対象者リストは多種多様であり、数百・数千件にのぼる各リストの登録法人数は日次ベースでデータが追加されていきます。そのため、参照中のリストが最新版であるか否かを判断することすら困難であるのが実情です。
ONESOURCE Denied Party Screeningは、既存の企業内システム(ERP・CRM・SRM)とデータを共有しながら、ビジネスパートナーの安全性を検証することができます。既存のERP・CRM・SRMと一体化も可能であり、データベースへ新規顧客・サプライヤーを追加、既存データを変更する度に、スクリーニングプロセスが自動的に起動します。
人権デューデリジェンスを策定し、サプライチェーンリスク管理強化を検討されている方はぜひ御一考ください。ONESOURCE Denied Party Screeningのデモ・トライアルについては、以下リンクからお問い合わせいただけます。
注1:責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン |経済産業省
注2:欧州の人権・環境デュー・ディリジェンス義務化と日本への示唆|日本総研