コラム:保険会社、グリーンシルによる虚偽説明を主張

サプライチェーン・キャピタルに特化するグリーンシル・キャピタルの証券化金融商品の保険業務を引き受けていた保険会社は、その商品の性質について虚偽の説明を受け、金融商品の重要な特徴が開示されていなかったと主張しています。ドイツのグリーンシル銀行の親会社でもあるグリーンシル・グループの事業体について、誤解を招くような行為、詐欺や欺瞞の疑いがあるという主張が認められた場合、取締役や役員、取締役会の顧問らの個人保険についても問題が波及する可能性があります。クレディ・スイス証券は、保険会社が支払いを拒否し続けているため、最も大きな被害を受けています。

3月3日、ドイツ連邦金融監督庁(BaFIN)は、グリーンシル・グループとその傘下銀行に対し、特別管理責任者を任命しました。先日フィナンシャル・タイムズ紙に掲載された記事では、特別管理責任者の報告内容を引用しながら、グリーンシル・キャピタルが、オーストラリア、日本、英国、ドイツに拠点を置く複数の保険会社に対し、保険をかけている証券化商品の性質(将来売掛金ファイナンスなど)について誤解を与えた可能性があると主張しています。

この記事で明らかになった情報により、投資家とクレディ・スイス証券はこの破綻した企業から損失を回収することが極めて難しくなりました。クレディ・スイス証券とその投資家の損失額は約100億ドルにのぼると言われ、資金回収のために保険契約に大きく依存していました。

銀行の管財人であるMichael Frege氏は、オーストラリア連邦裁判所に対し、3月16日に開始したドイツの破産手続きを承認し、ドイツの管財人がオーストラリアにある銀行の資産を管理し、会社法の下でオーストラリアの清算人と同等の権限を持ち情報を差し押さえることができるという申し立てを行いました。

3月にグリーンシルが破綻するきっかけは、オーストラリアの小さい保険会社であるボンド・アンド・クレジット(BCC; 東京海上グループの子会社、2019年にインシュアランス・オーストラリア・グループ(IAG)から過半数の株式を取得)が、グリーンシル・キャピタルの証券化商品の引き受け継続を拒否したことでした。これによりグリーンシル・キャピタルは一夜にして崩壊しました。グリーンシルの商品はリスクを軽減するために保険に依存しており、保険なしでは投資家にとって魅力的な商品ではなくなったためと言われています。

保険会社は、グリーンシル・キャピタルまたはグリーンシル銀行が、証券化商品について虚偽の説明を行い、保険会社を欺いた可能性があると主張しています。東京海上は、グリーンシルの主要顧客である実業家 Sanjeev Gupta氏のGFGアライアンスグループに関する保険契約の有効性について、異議を申し立てています。

最も大きな被害を受けたクレディ・クレディ・スイス証券にとって、顧客に代わって損失の多くを取り戻す唯一の手段が保険契約に対する有効性の承認です。顧客のためにクレディ・スイス証券や投資家らによる損失回収や顧客の信用を取り戻すことは複雑化を増し、長期化すると言われています。

会社役員賠償責任保険(D&O保険)にとっての脅威

顧客がクレディ・スイス証券に支払いを求めるか、国際的な集団訴訟を起こすと予想されています。また、この保険金請求は、グリーンシルの取締役および役員保険、およびグリーンシル・グループの監督委員会の各国メンバーにも影響を与える可能性があります。

このような状況では、役員や取締役の保険は過失に対して保険適用となるのが一般的ですが、市場に対して重大な情報非開示を意図的に行った場合や、誤解を招くような欺瞞的な犯罪行為、企業による詐欺や虚偽の疑がある行為がある場合は、保険が適用されません。
また、グリーンシルが欠陥商品を販売した場合も対象外となります。

全容解明まで長期化

元英国首相David Cameron氏や元オーストラリア外務大臣Julie Bishop氏は、取締役ではなかったものの、政府高官や閣僚へのロビー活動に大きな影響力を持っていました。両氏がロビイストであった事実は、英国議会の調査対象となっておりオーストラリア上院でも質疑の対象となっています。

クレディ・スイス証券や債権者にとっての先行きは暗く、損失を取り戻すには何年もの時間を要する可能性があります。ドイツの管財人および英国重大不正捜査局による捜査、および政治的影響により、この問題の全容は明らかになっていません。

(記事 規制インテリジェンス Niall Coburn)

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