ESGケーススタディ :企業理念がケロッグ社のステークホルダーとのESG活動を活発化

ケロッグ社は、ESG活動に関する情報発信を活用した新たな取り組みを通じて、持続可能かつ公平な食品供給を推進することを目標としています。

最新のデロイト社のレポートによると、取締役会の関心は「人材、文化、事業戦略を目的と結びつけることの重要性」に向けられています。つまり環境、社会、ガバナンス(ESG)の問題に加え、人材の維持・育成、従業員の福利厚生、ハイブリッドな職場環境、今後の働き方に関する問題に引き続き注目していると言えるでしょう。

多くの企業にとって、人材問題は取締役会の重要な課題ですが、従業員の幸福と企業理念を直接、継続的にESG活動と結び付けて明示することが必要です。実際、ESGのSである社会的影響を人々の幸福というレンズを通して測定することは主流にはなりつつありますが、現状ではまだ十分ではありません。

大手食品メーカーであるケロッグ社は、グローバルな事業目的の枠組みをサステナビリティの課題と結びつけ、社員やその他のステークホルダーの幸福を中心に据えた事業理念を実現している企業です。具体的には、「Kellogg’s™ Better Days Promise」を通じて、幸福、飢餓、サステナビリティ、公平性、多様性、包括性の課題に取り組み、2030年末までに30億人のためのより良い日々を実現し、持続可能で公平な食糧供給を推進することを目指しています。

多方面にわたる関係者参加型戦略の実施

ケロッグ社は成長戦略の中に企業理念を組み込んでいます。ケロッグ社の慈善活動とソーシャルインパクト担当シニアディレクターであるステファニー・スリンガーランド氏は、「企業理念と成長の一体化は、創業以来100年以上続いており、現在も同社のビジネスと文化にしっかりと根付いています」と述べています。

「Better Days Promise」は、ケロッグ社のバランス型成長戦略の重要な要素で、従業員、顧客、消費者、投資家、そして企業が拠点を置き事業を展開しているコミュニティといった複数の関係者の持つサステナビリティに関する様々な好み、要望を考慮します。

ケロッグ社は、「良い活動が良い結果をもたらす」という認識のもと、関係者に積極的に働きかけ、ESG戦略がいかに事業と成長戦略の中心であり続け、人々の幸福につながるかを伝えていると、スリンガーランド氏は説明しています。

ケロッグ社は、企業理念や 社会的影響(ソーシャルインパクト)をもたらす下記のような活動を様々な形でESG戦略に取り入れるため、ステークホルダーと協力することで良い効果を得ています。

様々なステークホルダーを巻き込んだESGの取り組み – ケロッグ社では、「世界食料デー」を記念して、1ヶ月間にわたるイベントを開催しています。これは、職場や地域でのボランティア活動、寄付活動、コミュニケーション、イベントを通じて、フードバンク、小売パートナー、従業員など、多くのステークホルダーと関わる機会となっています。

社員の取り組み – ケロッグ社の社員は、年間を通じて定期的にESGの取り組みに参加しています。実際、従業員の友人、顧客、パートナーに「Better Days Promise」を広めることで、従業員を大使として育成し、会社のESG活動と社会的影響に相乗効果をもたらすことが可能です。

社会貢献活動(Consumers & community) – ケロッグ社は、消費者を社会貢献活動に巻き込んできた長い歴史があります。例えば2022年の夏、同社は「Minecraft」と非営利団体「KABOOM!」と提携して実行した「Build for Better」プログラムとコンテストを開始しました。消費者がMinecraft上で仮想の遊び場をデザインして提出すると、それが実際に建てられるのを見る機会が与えられるというものでした。優勝したデザインは、2022年11月にジョージア州マリエッタにあるボーイズ・アンド・ガール・クラブ・オブ・アメリカに建設されました。

小売店との取り組み – 同様にケロッグ社の小売店もESGの取り組みの重要性を認識しており、「Better Days Promise」のパートナーになることを熱望しています。同社は小売業者と協力して、米農家の気候への影響を軽減するためのプログラムであるケロッグ・イングレイン™を立ち上げました。また、別の小売業者は、ケロッグ社の慈善活動、サステナビリティ、福祉に関する取り組み、投資、パートナーシップを評価し、初のESGサプライヤー・オブ・ザ・イヤーに選出しました。

ストーリー性とデータが不可欠

多様なステークホルダーに対して、総合的かつ多面的な情報発信を行うためには、データとストーリー性が重要な鍵となります。すべてのオーディエンスの好みや期待に応えることは困難ですが、「活動を支える人々や、イニシアティブが影響を与える人々についてのストーリーを共有することは、最も共感を得ることができます。」と、スリンガーランド氏は述べています。「データはストーリーを文脈化するのに役立ちます。」

ESG戦略を実施する上で最もよくある課題の1つは、後発組やESGが広く注目されていることの妥当性を疑問視する人たちにどのように影響を与えるか、ということです。スリンガーランド氏は、「ESGを推進するためには、企業の取り組みが周囲のコミュニティに与えるプラスの影響と、その取り組みが企業の成長を促進することを強調する必要があります」とアドバイスしています。


トムソン・ロイター・スペシャル・サービス(TRSS)

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