中国のインサイダー取引に対する強制措置の検証

武漢大学助教授の張楊氏とメルボルン大学法科大学院主席研究員のアンドリュー・ゴドウィン氏のインサイダー取引に対する中国の法的措置の調査研究により、執行措置の適用が増加していることが明らかになりました。

インサイダー取引に対する強制措置の目的は「金融市場の健全性を維持すること」であると、張楊氏とアンドリュー・ゴドウィン氏は、カンパニー&セキュリティーズロージャーナルの最新号(Vol 39 No 2)に記しています。

武漢大学助教授の張楊氏とメルボルン大学法科大学院主席研究員のアンドリュー・ゴドウィン氏共著の論文「中国におけるインサイダー取引の行政執行」は、中国におけるインサイダー取引の執行措置に関する実証的研究論文です。この研究では、過去20年以上にわたる300件以上の事例と、1990年代以降の中国の証券法の動向について検証しています。

著者は、中国におけるインサイダー取引に対する行政執行の件数が「急増」しており、規制当局である中国証券監督管理委員会(CSRC)が科す罰則の内容が「著しく厳格化する傾向」にあることを明らかにしています。

実証調査の対象は、罰則の内容、インサイダー情報の種類、インサイダー取引の発生場所、関係する企業の業種などです。張氏とゴドウィン氏は、法整備の動向を検証する中で、2019年の証券法改正により、インサイダーとインサイダー情報の適用範囲が拡大し、インサイダー取引に対する罰則が大幅に強化されたことに着目しました。

2019年の証券法改正

2019年、証券市場の成長に合わせ、現状と適応し、市場の役割を十分に機能させることを目的として証券法が改正されました。この改正は、中国全国人民代表大会の協調的な取り組みから生まれたことを認めつつ、著者は、中国におけるインサイダー取引の執行体制をさらに強化するために、さらに多くのことを実践できると提案しています。

例えば、インサイダー取引の処罰において、これまで主流であった罰金措置に加えて、市場参加禁止措置の適用を増やすことも可能であるとしています。

また、証券監督管理委員会が市場違反の管理・取締りという役割を果たしきれていない構造的な要因も指摘されています。証券監督管理委員会は証券市場を整備するうえで、企業の健全性や証券の信頼性を確保するという役割を担っており、そこに多くのコストや人的資源を費やさざるを得ません。このため、「夜警」と呼ばれる取締り業務に集中する予算が十分にとれないのです。

中国の証券規制を改善するためには、証券監督管理委員会が「夜警」の役割を強化する必要があると、張氏とゴドウィン氏は結論付けています。


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