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HSコードとは?意外と知らない貿易業務に潜むコンプライアンスリスク

貿易業務に携わる方は、HSコードという言葉をよく耳にするでしょう。HSコードとは、国際的な商品分類システムであり、輸出入において欠かせない要素です。

しかし、HSコードの全体像を把握し、重要性について理解している方は少ないのではないでしょうか。

本記事では、HSコードの基本から実務との関連性、最新情報に追従する重要性、さらにはコンプライアンスリスクについても解説します。貿易業務をスムーズに行うためにぜひご参考ください。

HSコードとは何か?

HSコードとは、Harmonized System Codeの略称で、通常は輸出入統計品目番号と呼ばれ、関税番号や税番と称されることもあります。

国家の重要な財政源のひとつである「関税」は、輸入する対象物の品目を分類して当てはめる 「物品の定義」が不可欠です。HSコードは、世界税関機構 (WCO)が策定した、貿易で取引される商品を区分するための国際的な分類番号です。現在200以上の国と地域で使用されており、貿易には欠かせません。


HSコードは、貿易対象品目を21の「部」に大きく分け、6桁の数字で表します。上2桁が「類」、類を含む上4桁が「項」、項を含む上6桁が「号」と呼ばれます。HSコードは約5年ごとに改訂され、直近の改訂は2022年1月1日に行われました。

また、HSコードの7桁目以降は、各国が独自に統計細分などの番号を設定できます。
日本では、輸出入統計細分に7~9桁目を、NACCS(輸出入・港湾関連情報処理センター)用に10桁目を使用しています。

例えば、米(10.06項)の輸入の場合、もみ、玄米、精米、砕米に分けられ、詳細な番号が設定されています。その一方で、輸出の場合は、統計細分番号の7~9桁目はすべて000となっており、輸入と輸出の統計データの適切な収集と管理が可能です。(注1

貿易業務とHSコードとの関連

輸出入時に必要となるHSコードは、貿易業務に密接に関係します。

輸出入業務においてHSコードが必要とされるケースは、次の通りです。

1.輸出入手続き

輸出入の際には、HSコードに基づいて商品の品目を分類します。HSコードにより関税の計算や輸出入許可申請などの手続きを行います。

輸出入時のHSコード確定手順・調べ方については、こちらの記事も合わせてご参照ください。

関連記事:輸入時のHSコード確定における現状の課題およびその解決策について

関連記事:輸出時におけるHSコード(実行関税率表)の調べ方・HS2022更新内容

2.輸出入許可制度

特定の商品に対しては、輸出入許可制度が適用されます。法令によって規制され、輸出入対象商品の品目や数量などが制限されます。HSコードは、輸出入許可の適用範囲の判断に必要です。

3.関税率と消費税の適用

関税率、消費税はHSコードに基づいて決定されます。HSコードは、商品の品目分類に応じた関税率と消費税を決定するために重要です。

4.保健衛生検査、検疫など

輸入品には、保健衛生検査や検疫などが必要な場合があります。HSコードは、商品の品目に基づいて検査の必要性や対象となる法令を判断するため使用されます。


正確なHSコードの選択は、適切な貿易業務の遂行に不可欠と言えます。

HSコードの最新情報を把握することの重要性

HSコードは、各国で採用している桁数、分類方法が異なり、全体数は世界共通ではありません。 HS条約加盟国は、国内法に基づいて6桁以降を細分化することができます。日本では、現在約1万のHSコードが存在します。

2022年1月1日から施行されている現行のHS2022では、分類・製品の追加・製品定義の修正など、変更点は500以上ありました。

特に、スマートフォンやフラットパネルディスプレイ、無人航空機(ドローン)などIT製品に関する大幅な変更が特徴的です。また、HSコードは、各国との経済連携協定(EPA/FTA)と密接に関連しています。

関連: 2022年版HSコード(統計品目番号)の主な更新


また、英国が2020年1月31日にEUを離脱した際、貿易実務において手続きの心配をした方もいるでしょう。

輸入時の関税率は、HSコードと原産地の組合わせにより決定されることが一般的です。
EUはFTA(自由貿易協定)に加盟しており、加盟国間の貿易促進と経済的な協力を促進するため、税の撤廃・削減などが定められています。HSコードは、商品の分類と関税評価に使用されるため、協定の適用範囲や関税優遇措置の対象品目を明確にする役割を果たします。

上記により、英国のEU脱退後の手続きが不安視されていました。結果的には、移行期間に合わせて日英間でFTAが締結されたため大きな混乱は避けられましたが、国際情勢の変化が影響する場合もあります。

最新のHSコードを把握し、従うことで、正確な関税の適用や輸入規制対応、適切な統計データの収集などが可能になります。

HSコードの照合過程に潜むコンプライアンスリスク

HSコードの特定においては、誤ったコードを適用すると税率・品目別規則が異なることになり、潜在的なコンプライアンスリスクがあります。正確な分類と適切な規制対応の重要性について下記にて解説いたします。

HSコードの正確な選択とコンプライアンスの遵守

誤ったHSコードの選択は、誤った関税や規制の適用につながり、法的な問題を引き起こす可能性があります。

分類が誤っていた場合や、不正に関税率が低いHSコードを選択した場合、輸出入規制や品質・安全基準の遵守、納税に関する義務を怠ることになります。

さらに、HSコードは国ごとに異なる解釈や改定が行われます。そのため、常に情報を更新し、適切にHSコードを扱わなければ、関税や規制の変更に対応ができません。


例えば、ベトナム商工省は、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定の原産地規則に関する改正を2023年1月1日から施行しています。

これにより、RCEP協定の原産地規則で使用されるHSコードが2012年版から2022年版に変更され、HS2022に基づく品目別規則(PSR)と改定版の原産地証明書フォームが適用されます。(注2

これは、RCEP協定の原産地規則を遵守するための重要な措置です。HSコードの変更に注意し、正確な原産地規則と証明書の要件に従うことが求められます。

適切な対応と情報の把握は円滑な輸出入手続きを確保し、コンプライアンスを遵守する上で重要です。

また、コンプライアンスリスクとは少し異なりますが、各国の経済措置にも留意しなければなりません。

具体例として、ブラジル貿易審議会は、資本財と情報通信財に指定された628品目の輸入税を2025年12月31日までの間、免税とする措置を設けました。

対象品目は機械類、電気機器、車両、船舶、浮き構造物、測定機器、検査機器、精密機器、医療用機器、情報通信機器など多岐にわたります。

これは、ブラジル国内の企業活動に欠かせない機械や情報通信機器の輸入を増やし、生産力の向上、雇用創出などを促進し、経済競争を高める環境を作ることを目的としています。この措置により、対象品目の輸入税率が現行の平均11%から免税となります。(注3

対象品目の免税措置や関税の変更を把握し、正確な分類や適切な輸出手続き、税金の計算が重要です。


このように、各国でのHSコードの変更や経済的措置の情報が足りない場合、不注意によるコンプライアンス違反が生じる可能性があります。規制の変更に迅速に対応することで、企業は適切にコンプライアンス要件を満たすことが出来るでしょう。

コンプライアンスの遵守には情報収集が不可欠

HSコードの最新情報を得るためには、税関や世界貿易機関、国際商業会議所などの貿易団体のサイトが参考になります。HSコードに関する改定情報や関連文書、国際的な規制や取り組みなどが確認できるでしょう。

また、税関・国際貿易コンサルティング業務を行う専門業者を通じて、情報を得ることも可能です。輸出入取引のニーズに合った情報提供を受けることができるでしょう。しかし、最新情報を入手するために、さまざまな情報機関を随時確認するには限界があります。

お困りの方は、ぜひ、トムソン・ロイターが提供するbusiness insightをご活用ください。業界最新の情報を迅速、かつ簡潔に提供し、輸出入業務における正確性と効率性を向上させます。以下のような情報をお届けします。


1.最新の法規制や規制変更の情報

貿易に関連する法規制や規制の変更は頻繁に行われるため、最新の情報を提供します。通関業務に影響を及ぼす法的な要件や変更点を把握し、適切な対応が可能です。

2.分類と関税情報

商品や部品の分類や関税に関する情報を提供します。正確なHSコードの選択と関税の計算が可能となり、予算管理が容易になります。

3.輸出入規制とコンプライアンス情報

輸出入に関連する規制やコンプライアンスについての情報を提供します。輸出入手続きにおいて必要な情報や要件を把握し、コンプライアンスの確保に役立ちます。

4.国際貿易の動向と市場情報

国際貿易の動向や市場のトレンドなどの情報を提供します。貿易戦略の立案やビジネスの展望を把握し、市場ニーズや競合状況に対応する戦略の構築が可能です。


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参考情報

注1:日本貿易振興機構(ジェトロ)「貿易・投資相談Q&A」

注2:日本貿易振興機構(ジェトロ)「ビジネス短信」RCEP協定の品目別規則をHS2022に更新、2023年1月から適用

注3:日本貿易振興機構(ジェトロ)「ビジネス短信」機械機器や情報通信機器628品目の輸入関税を2025年末まで免税


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