2022年1月にRCEP協定が発効して以来、利用する事業者の数は着実に増えています。RCEP利用への注目が高まる中、協定の解釈や原産地証明手続き、税関による事後確認など、実際の利活用に疑問や関心を寄せている実務担当者も多いのではないでしょうか。そのような実務担当者へおすすめしたいのは、RCEPセミナーや研修への参加です。
そこで本記事では、RCEPセミナー・研修に参加する意義や過去のセミナー概要について解説します。またFTA分析・管理プロセスを自動化し、コンプライアンス強化とコスト削減に役立つ「ONESOURCE FTA Analyzer」についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
RCEPセミナー・研修に参加する意義とは
RCEPセミナーや研修への参加は、次の2つの理由から貿易実務経験の多少にかかわらず、担当者にとっては意義の大きなものです。
1つ目は、RCEPを効率的に活用するためにはEPAに関する全体的な知識とRCEP税率の適用に関する基本要件を把握しなければなりません。しかしEPAごとに原産地証明書の書式、記載要件や内容が異なることから、利用企業側の担当者は戸惑うことも多くあるでしょう。そこで専門家による講義を受けることによってミスを回避し、より効率的に実務を進めることが可能になります。
2つ目は、RCEP協定は原産地規則(第3章)など多くの分野で見直しを規定している点です。RCEPには後発開発途上国を含むASEAN10カ国が参加しており、ASEAN域外国はもとよりASEAN域内においても経済格差が大きいために、CPTPPと比べると多くの分野で自由化とルールの水準が低く設定されています。こうした分野においては、RCEPは自由化の深化を含むアップグレードに取り組む予定であることから、最新情報の動向に注意を払うことが重要なのです。(注1
各種団体別|過去に開催されたRCEPセミナーの概要
RCEPはメガEPA/FTAとして注目されていることから、各種団体がセミナーや研修を開催しています。ここでは、それぞれの概要について見ていきましょう。
日本関税協会
日本関税協会は、もともと財務省所管の財団法人でした。通関士養成講座を長く運営するなど、貿易と関税に関するさまざまな事業を展開している公益財団法人です。(注2
RCEP原産地規則オンライン研修
2025年5月20日と22日の2日間にわたり、RCEP原産地規則に特化したオンライン研修が下記のとおり、Zoomを利用してライブ配信されます。
日程 | 内容 |
2025年5月20日 | ・RCEP協定の概要と活用の効果、完全生産品、原産材料のみから生産される産品・品目別規則を満たす産品:関税分類変更基準、付加価値基準、加工工程基準 |
2025年5月22日 | ・デミニミス、累積、軽微な工程・加工及び税率差ルール、積送基準と連続する原産地証明・原産地証明、原産品申告明細書、事後監査手続きの説明、書類の保存義務 |
RCEP協定発効2周年フォローアップセミナー
財務省関税局・EPA原産地センター、韓国税関等の協力を得て、RCEP協定発効後のフォローアップセミナーが、下記のとおり開催されました。
日程 | 内容 |
【ライブ配信】2023年12月21日【録画配信】 2023年12月22日 | ・韓国および中国におけるRCEPの利用状況・最近のEPAに関する状況・RCEPの原産地規則や活用事例 |
日本商工会議所
日本商工会議所は、RCEP協定における原産地証明書発給機関であり、日本各地の商工会議所で下記のようなセミナーが開催されています。(注3
・EPAの概要とRCEPの活用方法および第一種特定原産地証明書申請手続きセミナー(基礎編)
・EPA(RCEP等)の概要と活用および第一種特定原産地証明の申請手続きセミナー
日本貿易振興機構(ジェトロ)
日本貿易振興機構(ジェトロ)は、貿易・投資促進と開発途上国研究を行う独立行政法人です。下記のようなセミナー開催や情報発信のほか、EPA相談窓口を設けています。(注4、(注5、(注6
・【ウェビナー】トランプ新政権下における米国経済・関税政策の最新動向とEPA/FTA利活用
・【番組】動き出した巨大経済圏! ‐RCEP協定の目玉とは‐
・【特設ページ】RCEP協定について
農林水産省
農林水産省は2024年2月29日、RCEPやCPTPPなどのEPAの利活用について解説するウェビナーを開催しました。(注7
経済産業省委託事業 EPA相談デスク
経済産業省委託事業として、EPA相談デスクが開設されており、コンテンツ別初心者向けワークショップが随時開催されています。(注8
JMC日本海事センター
日本海事センター(JMC)は、海事関係の各種調査研究・政策提言、海事関係公益事業の支援、海事図書館の運営を行う公益財団法人です。2022年6月15日、「RCEP下とポストコロナの東アジア物流の展望」ウェビナーが開催されました。(注9
トムソン・ロイター主催の国際貿易に関するセミナー概要
トムソン・ロイターにおいても、国際貿易の最新情報を踏まえた情報発信とソリューションの提案を継続的に行っています。さらにセミナー開催のほかにも、ホワイトペーパーやレポート配信でも情報発信を行っていますので、情報収集の一助としてぜひご活用ください。
ここでは、オンデマンド・ウェビナーや過去に開催したセミナーの概要をご紹介します。
厳格化する輸出規制リスクへの対処法シリーズ
「厳格化する輸出規制リスクへの対処法シリーズ」は、セミナーやウェビナーにご参加いただくことで輸出管理分野を扱う稀有な存在である弁護士の玉木 昭久先生によるお話を聞くことができます。
安全保障の利益を考える政治的な影響を受け、輸出規制は厳格化し、企業のコンプライアンスリスクも増大する傾向にあることをご存知でしょうか。米中間の通商摩擦や覇権争いが激化しているために、冷戦終結後に見られた貿易自由化のトレンドは一変し、世界は保護貿易の方向に進みつつあります。実際に米国の技術による先端半導体を中国が軍事転用することを防ぐ目的で、先端半導体の対中禁輸措置が強化されつつあるのです。(注10
こうした動向を踏まえて、経済安全保障と安全保障貿易管理に焦点を当てながら、効果的な輸出管理について基礎から応用まで学べます。
詳細につきましては、下記リンクよりご覧いただけます。
人権デューデリジェンスセミナー
世界的にビジネスにおいて人権デューデリジェンス取り組みへの関心が高まるなか、企業に求められる取り組みとして注目される人権デューデリジェンス(以下、人権DD)セミナーを開催しました(2023年10月10日)。
欧州では人権DDの義務化が進められているほか、米国では「ウイグル強制労働防止法」が2022年6月21日から施行されています。日本政府も「『ビジネスと人権』に関する行動計画(2020-2025)」や「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を策定するなど、企業による人権尊重の取組の普及・促進に乗り出しているのです。
そこでゲストをお招きして人権DDの重要性、具体的な取組事例や課題点を解説していただくとともに、人権リスク軽減に役立つトムソン・ロイターのソリューションをご紹介しました。
今回ご紹介したセミナー情報は、下記リンクよりご覧になれます。
最新トレンドを把握することがRCEP有効活用の鍵
RCEPを有効活用するためには、最新の動向を常に把握することが重要です。ジェトロや税関、政府の公式サイトからも情報収集は可能ですが、一読して要点を把握することは容易ではありません。そこで実務のポイントを分かりやすく解説してもらえる、RCEPセミナーや研修への参加も検討されると良いでしょう。
関連記事:RCEP発効の経済効果とは?動向や今後の展望、米中対立の影響を考える
ONESOURCE FTA Analyzer
実際にRCEPの利用が、自社にとって最も関税削減効果が高いかどうかは、検証するまで分かりません。しかしEPA/FTAの管理や検証プロセスは複雑で、貿易実務担当者にとって大きな負担であることから、関税の最適化には「ONESOURCE FTA Analyzer」のご利用がおすすめです。ONESOURCE FTA Analyzerについては、以下リンクからお問い合わせください。
参考情報
注1:国際貿易投資研究所|令和4年度 RCEPがもたらすASEANを中心とした貿易・投資への影響調査
注2:日本関税協会|研修・セミナー
注3:日本商工会議所|セミナー情報
注4:日本貿易振興機構|イベント情報
注5:日本貿易振興機構|動き出した巨大経済圏! ‐RCEP協定の目玉とは‐
注6:日本貿易振興機構|RCEP協定について
注7:農林水産省|マレーシア向け輸出に関するセミナー~マレーシア市場の最新動向とEPAの活用について~を開催しました!
注8:EPA相談デスク|初心者向けワークショップ
注9:日本海事センター|第2回JMC海事振興セミナー