輸入時のHSコード確定における現状の課題およびその解決策について

輸入業務を行う際、HSコードの選択は関税率や輸入制限の有無など多くの要素に関係します。HSコードの選択を誤った場合、罰金や不足分の関税の支払いを求められる可能性があります。またHSコードは、一定期間で改定が入るため、最新情報をいち早く把握することが重要です。

本記事では、輸入時におけるHSコードの正しい確定手順や確定フローにおける現状の課題及びそれらの解決方法をご紹介いたします。

また、製品分類に関する最新の規制情報を240の国・地域から入手できるツールも合わせてご紹介いたしますので、HSコードの重要性を理解し、輸入業務をスムーズに進めたいとお考えの方は、ぜひご一読ください。

輸入におけるHSコードの確定手順

HSコードとは、「商品の名称及び分類についての統一システム(Harmonized Commodity Description and Coding System)に関する国際条約(HS条約)」に基づいて定められた番号のことです。(注1

輸入時のHSコードは安易に確定できません。HSコードは各品目が細かく分類されており、十分な知識が必要になります。HSコードの確定手順について見てみましょう。

1.輸入品目の特徴を把握する

HSコードの選択に際して、輸入品目の性質や情報を理解することが不可欠です。

まず、輸入品目の性質を把握することで、通関手続きや輸入許可制度の有無など、必要な情報を得ることができます。また、輸入品目の数量や重量を正確に把握することも必要です。これにより、関税の計算が可能になり、輸入時の検査について把握することができます。

さらに輸入品目の原産国を把握することも欠かせません。正確な原産国情報は、関税率の適用や輸入許可制度の有無などに関する情報の入手に役立ちます。

2.HSコードの分類を調べる

輸入品目の分類はHSコードを確定するために必要な作業です。HSコードは、「部」・「類」・「項」及び「号」という区分に分けられており、号の下に税表細分及び統計細分を設定することで、より詳細な商品分類がなされています。(注2

HSコードの分類を調べるためには、輸入品目の外観・構造・材質・用途・機能などの情報が必要です。また、輸入品目が詳細に記載された輸入契約書や商業請求書、製品カタログなどの資料も重要になります。

3.関連機関や専門家に確認する

HSコードを正確に確定するため、関連機関や専門家に確認することも必要です。JETRO(日本貿易振興機構)や税関などがHSコードに関する情報を提供しています。また、事前教示制度の利用も検討しましょう。この制度は、輸入前に税関に対して、当該貨物の関税分類や関税率などについて照会し、文書により回答を受けることができる制度です。(注3

4.HSコードを確定する

上記の手順を踏まえて、最終的にHSコードを確定します。確定したHSコードは、申告書に正確に記入しましょう。誤ったHSコードの記入は、通関手続きに影響する可能性があります。

輸入時におけるHSコード確認の重要性

輸入時における申告手続きにおいては、合法性の確保、適切な課税、輸入規制の遵守、通関のスムーズな進行の観点から、正確かつ不備のない申告が必要です。正確な情報が提供されない場合、関税の課税漏れや偽装輸入、輸出入禁止品の密輸、法規制違反などの問題が発生する可能性があります。HSコードの確認が不十分、あるいは誤っていた場合の問題について、実際に生じた事案を見てみましょう。

事案1:鉄筋輸入でHSコードが不適切だった問題

日本企業が中国から輸入した鉄筋に対して、税関が課税処理を行いました。理由は、HSコードが不適切だったためで、正しいHSコードによる関税額との差額を支払うように求められました。(注4

事案2:靴に対する関税が輸入先によって異なる問題

日本の靴メーカーが、輸入した靴に対して異なる関税が課税される問題が発生しました。関税の違いは、HSコードの選択によって生じたものでした。 輸入相手国によって関税率は異なり、判断が難しいことも要因の一つです。(注5

事案3:炭酸飲料の輸入での課税問題

日本の輸入業者が、ベトナムから炭酸飲料を輸入した際に、HSコードを誤って選択したため、正しい関税が課税されなかったことが判明しました。その後、税関によって不足分の関税と罰金が請求されました。HSコードを誤った場合、想定外の高い関税を課せられる可能性や罰金の支払いが発生することがあります。(注6

輸入時におけるHSコード確定フローの現状と課題

輸入時のHSコードを正確に選択するため、多くの輸入者が照合作業に時間と労力を要しているのが現状です。

HSコードの照合作業が困難な理由の一つは、国際貿易のルールや規制が複雑であり、国や地域によって異なることが挙げられるでしょう。輸入品目の性質や用途、構成材料、製造方法、原産国などの情報を正確に把握するため、仕様書や製品カタログ、製造者の情報などを参考にすることが一般的ですが、これらの情報源に矛盾があり、明確でない場合もあります。

さらに、輸出国と輸入国では、輸出入における規定が異なる場合があります。例えば、EU加盟国内での輸出入時には、輸入にかかる書類に原産国を「EU」としても問題ありません。ところが、日本での輸入時には「EU」の表記は認められず、具体的な国名を問われます。そのため、あらかじめ輸出者に説明し、確認しておくことが必要になります。

また、HSコードの確定が困難な理由には、業務を行う担当者の知識や経験も挙げられるでしょう。輸入通関に関する業務は、専門的な知識と経験を要します。複数の担当者がいる場合、個々人の経験値の違いから、誤ったHSコードを選択する可能性があります。

機械用潤滑オイルを輸入した場合のHSコード

機械用潤滑オイルを用いた具体例を紹介します。通常、機械用潤滑オイルは工業用に使用されますが、当オイルは食用にも転用可能な性質を持っていました。しかし、最初の輸入時の担当者がその性質を知らず、誤ったHSコードで通関手続きが完了。後日、同じ製品の輸入時に、知識のある別の担当者が正しいHSコードを選択したところ、税関によって前回と異なることが指摘され、問題が発覚しました。このようなミスにより、コミュニケーションと情報共有の重要性が問われ、企業の信憑性にも影響を及ぼす可能性があります。

特定の担当者のみが業務の進め方や進捗状況を把握しており、他の担当者は何をどのような手順で、どれくらいの時間をかけて実施しているのかが分からない状況は避けるべきでしょう。業務がブラックボックス化している場合、業務の正確かつ円滑な進行が妨げられるのみでなく、各担当者に負担を与えることに繋がる場合もあります。

HSコードの確定手順の標準化を図り、特定の担当者に依存することなく、業務の質を一定に保つことが求められます。

HSコード確定を効率的かつ正確に実行するには

このようにHSコードは定期的に改訂され、常に最新情報の把握することが極めて重要です。また輸入品目によっては、国際物流に関する知識を問われる場合もあります。さらに輸入品目に関しては、法令遵守のための監査を必要とする場合もあるでしょう。

適法かつ正当に輸入し通関を滞りなく進めるために、物流会社や専門家、コンサルタントなどのアドバイスを仰ぐことが非常に重要です。

その他にも、HSコードに特化したシステムやサービスの利用を検討してもよいでしょう。最新情報の入手から、輸入にかかる手続きまで効率的に行うことが可能です。

中でもトムソン・ロイターの「Smart HS tool」は、製品分類に関する最新の規制情報を240の国・地域から入手できるツールとなっています。「Smart HS tool」の魅力は、高性能な分類コードの提示により、作業時間の削減、正確性と効率性の向上が可能になることでしょう。

難しい製品分類を迅速に行い、貿易関連の作業を効率化できます。最新の規制情報の入手も可能となっており、輸入手続きの不備を防ぐのみでなく、製品の輸出入に関する計画策定にも役立ちます。商品の詳細やデモのご希望など、お気軽にお問い合わせください。

輸入におけるHSコードについてよくある質問

輸入時のHSコードについて、よくある質問と回答を以下にまとめました。

Q1.輸入する商品について、どうやってHSコードを選択する?

A1.HSコードは、商品の特徴に応じて分類されます。

分類には、商品の機能・用途・素材・形状・重量・サイズなどが関係します。HSコードの選択には、商品名や仕様書、取扱説明書、写真、実物を確認しましょう

Q2.輸入時にHSコードが不明確な場合、どうすればいい?

A2.輸入品のHSコードが不明確であれば、まずは以下の手順で確認しましょう。

・製品の仕様書、カタログ、説明書等の文書を確認する

・製品名や規格、材料、機能等から類推し、適切なHSコードを探す

・国際的な業界団体や専門のウェブサイトで調べる

・関税や貿易に関する機関や専門家に相談する

Q3.輸入時のHSコードを間違った場合の影響は?

A3.HSコードに誤りがある場合、次のような影響が出る可能性があります。

・誤った関税の支払いや免除対象外になる

・輸入許可制度の対象品目に該当するか判断が難しくなる

・保健衛生などの検疫規制の対象かどうか判断が難しくなる

・正確な統計情報の分析ができなくなる

Q4.HSコードの分類基準や規則は?

A4. HSコードの分類基準や規則は、世界税関機関(WCO)が定めた「HS条約」と呼ばれる国際条約に基づいています。HS条約は、商品を一定のルールに従って分類し、関税や貿易統計を管理するために定められています。


参考情報

注1:日本貿易振興機構(ジェトロ)「貿易・投資相談Q&A」

注2:日本関税協会 実行関税率表 2023, 出版社:日本関税協会,2023年4月 1ページ

注3:税関「輸出入通関手続きの便利な制度」

注4:日本貿易振興機構(ジェトロ)「ビジネス短信」中国におけるHSコードのバージョン違いに起因するトラブルに関する留意点

注5:経済産業省「関税割当(皮革・革靴)」
注6:日本貿易振興機構(ジェトロ)「ビジネス短信」税関からHSコードの間違い指摘相次ぐ−書面での事前確認も1つの方法(ベトナム)


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