アジアにおけるオープンバンキング(API連携) の課題

市場の断片化、データセキュリティ、信用への懸念

今年アジアでは、金融包摂とイノベーションを促進する必要性から、オープンバンキングの展開が加速すると予想されています。金融サービス部門は、さまざまな管轄区域でアプリケーションプログラミングインターフェース(API)を標準化する際に生じる問題への対処を求められ、データセキュリティを保証し、エコシステム内で信頼を培うために努力しなければなりません。   

アジア地域において、シンガポール、香港、オーストラリアは、オープンバンキングの導入を主導しています。シンガポール金融データ交換(SGFinDex)プラットフォームの開発・第2段階が2021年11月に開始され、個人がさまざまな政府機関や金融機関に保有されるアプリケーションを介して自分の金融情報にアクセスできるようになりました。 

シンガポール金融庁のマネージング・ディレクターであるラヴィ・メノン氏は、「SGFinDexは、デジタル技術の活用を体現し、シンガポール国民の金融サービスの快適性を向上しています」と述べています。「次の段階では、SGFinDexを通じて、個人が加入している保険情報にもアクセスできるようになります」。 「この取り組みは、官民協同によるもので、3つの政府機関が主導し、シンガポール銀行協会、7つの銀行、シンガポール取引所CDPと連携しています」。 

市場主導のアプローチ 

シンガポール金融庁は、アジア地域の規制当局として初めてオープンバンキングに関するガイドラインを提示しました。シンガポール銀行協会と共同で、「Finance-as-a-service(サービスとしての金融」」を発表しました。2016年11月に「(API)プレイブック」を発表し、オープンバンキングに市場主導のアプローチを採用したことを明らかにしました。 

韓国も同様の道を歩んでいます。金融委員会(FSC)は2019年4月に規制のサンドボックス制度を開始し、多くの金融ソリューションを「革新的な金融サービス」として盛り込み、オープンバンキングもその一部に含まれるようになりました。 

また、FSCは2021年3月に電子金融取引法を改正し、決済分野の安全性とセキュリティにさらに重点を置くようになっています。 

相互運用性、フィンテック、APIの採用  

銀行やフィンテック企業が複数の法域にまたがって活動する傾向があることを考えると、市場参加者間の相互連携が不可欠になります。取引の安全性、セキュリティ、金融包摂、イノベーションには高い水準の相互運用性が必要です。 

ウェブ決済サービスのペイパルによれば、オープンAPIは、プライベートなものとは異なり、銀行やその他のステークホルダー間の接続を促進することにより、オープンバンキングの実現に重要な役割を果たし、相互に運用のレベルを向上させることができると言います。 また、金融機関が新たなテクノロージーを採用する割合も、オープンバンキング導入の度合いを測るのに役立ちます。技術の進歩は、消費者データの転送を通じて、競争力のある革新的な環境を提供するものだからです。 

このような動きを支持する国々は、オープンバンキングの推進を主導しています。例えば、シンガポールは「スマート国家」への転換を目標としていますが、これは同国のオープンバンキング・インフラに支えられています。 

世界各国のアプローチ

ハイブリッド型のインド 

インドでは、ハイブリッド・オープンバンキングの手法により、政府と市場双方が協力して、金融包摂が推進されました。公共デジタルインフラであるインディアスタックの開発が、オープン・バンキングのエコシステムを活気づかせたと見られています。インディアスタックには、いくつかのAPIが含まれています。 また、インド政府は2020年9月に個人情報の同意と流通を管理する機能を追加するソフト、「データの権限委譲と保護アーキテクチャ」(DEPA)を発表し、アカウントアグリゲータの適用による金融包摂の推進とペーパーレス決済の推進を図っています。  

規制型のオーストラリア 

オーストラリアは、オープンバンキングの発展に規制主導型のアプローチを採用しました。同国は、銀行部門における消費者データ権(CDR)の導入を通じて、そのインフラを義務付けました。CDRは近い将来、エネルギーと電気通信の分野にも展開される予定です。 財務省とオーストラリア競争・消費者委員会の指導のもと、オープンバンキングで使用されるデータは3段階に分けて公開される予定です。大手銀行はすでにデータAPIの公開を完了しており、他の銀行も2月1日までに完了することが求められています。 

香港 

香港金融管理局(HKMA)は、2018年7月にオープンバンキングをサポートするためのオープンAPIプロジェクトを発表しました。このプロジェクトは、4段階の段階的アプローチを通じて、銀行と第三者サービスプロバイダーの協業を促進することを目的としています。2021年12月にフェーズ3と4が開始され、香港の中央銀行が監督しています。 2021年11月のKing &Wood Mallesons法律事務所・外国法共同事業のインサイトノートによると、「実施の詳細について、関係者や市場関係者との協議や議論が続けられている」と述べています。  

中国 

中国におけるオープンバンキングの発展は、当局がハイテク部門に課している徹底的な規制改革や、厳しいデータプライバシー管理によって妨げられています。しかし、オープンAPIを管理する新たな規則を制定し、中国におけるオープンバンキングの実践に向けた規制基準の策定を加速させる計画があります。 

市場の断片化、データセキュリティ、信用への懸念

アジア太平洋地域のさまざまな地域に何百ものオープンAPIプラットフォームが設置されていることは、オープンバンキングの発展にとっての課題となっています。このような断片化により、エコシステムの成長が妨げられ、マネーロンダリングやその他の脅威と戦うための業界の試みを複雑化しています。 

また、データセキュリティや信頼の醸成も、オープンバンキングをより広く普及させるための課題となっています。アジア諸国の銀行は、認証とアイデンティティ管理の実施について、ほとんどの場合、説明責任を負っています。銀行は、顧客の身元を確認し、顧客の同意がなければ取引を行えないようにしなければなりません。 


銀行、金融サービスおよび保険部門では、前例のない規模の複雑な規制変更が継続しています。 トムソン・ロイターのRegulatory Intelligence (レギュラトリー・インテリジェンス) は、規制データを収集、モニタリング、分析し、変化する規制環境を追跡します。十分な情報に基づき決定を下し、確信を持って規制リスクを管理することができるようにすると同時に、積極的な組織改革を行うためのツールを提供します。


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