AMLユーティリティによる金融取引監視の迅速化

日本金融庁のマネーロンダリング対策の専門家によると、近い将来マネーロンダリングとテロ資金調達(ML/TF)に対抗するための取引監視とスクリーニングの新しい共有プラットフォームが、日本で展開され、疑わしい取引の特定と報告のプロセスが加速すると期待されています。 

テクノロジーの効力

取引監視ユーティリティは、最先端のテクノロジーを駆使し、膨大な取引の中から疑わしい取引を特定します。銀行は、疑わしい取引に対し合理化してフラグを立て、安全な取引を明確に選別します。AIと機械学習アルゴリズムにより不正取引の可能性がある案件処理と分析のプロセスがより迅速になります。そして共有取引監視・審査ユーティリティをさらに発展させ、作業負荷を軽減することが可能となります。 

金融庁 総合政策局 マネーロンダリング・テロ資金供与対策企画室長 尾崎 寛氏は、レギュラトリーインテリジェンスのインタビューに対し、このように述べています。「手作業で取り掛かろうと準備をしている間に、機械学習での識別が一瞬で終わってしまいます。金融機関の時間短縮や人間の判断ミスによるリスクに対して、テクノロジー導入の効果が高いのは明らかです。」 

 「近い将来、この新たなテクノロジーが装備され、運用を開始する予定です」と述べ、この計画は、日本金融庁の支援のもと、全国銀行協会が主導する予定であると付け加えました。 

金融庁の概念実証プロジェクト

日本の規制当局は昨年、データ共有の促進を目的に、データプライバシー規則遵守のために独自の「概念実証」構想を発表しました。「このプロジェクトでは、各金融機関の取引データセットからの指示により、データを共有したりプールしたりすることなく、AIアルゴリズムを統合し、単一のAIモデルを実現しました」尾崎氏は述べています。  「概念実証では、取引監視や制裁審査における真陽性スコアの可能性を計算し、人間の判断を容易にするAIモデルの構築を目指します。」 

「 個々の金融会社や顧客の取引データは、2つの異なるアプローチによって保護されます。基本的に、機械学習エンジンのみが個々の金融機関のデータにアクセスできるようになります」と、日本金融庁の担当者は述べています。AIモデルは、各参加機関のデータセットから学習し、他の銀行のデータセットから得られた情報と組み合わせることになります。これにより、「参加機関は個々のデータを共有することなく、蓄積されたデータから識別情報を受けることができます」と、規制当局は説明しています。 

意識向上と顧客デューデリジェンスの重要性

金融庁は近年、邦銀向けに数多くのアウトリーチセッションを開催し、AML/CFTの課題に対する邦銀の意識向上に積極的に寄与してきました。また、金融機関が継続的に顧客デューディリジェンスを行うことの重要性を強調しています。 2018年以前は、日本の銀行が顧客データの更新や確認のために連絡を取ることは珍しいことでした。尾崎氏によれば、最近はこのプロセスが一般的になってきたといいます。 

「”お客様の資産を守る “ということは、日本の金融システムをMLや “悪者 “から守ることでもあるのです。そのため、金融機関はこのような継続的なカスタマーデューディリジェンスに取り組み、顧客の口座が悪用されないようにするのです」と語りました。 金融庁はまた、MLに取り組むためのリスクベースのアプローチを改善するために、「よくある質問」に対する回答のリストを公表しています。 

国境を越えた不正資金の移動 

「現代経済のグローバル化により、国境を越えた資金移動が瞬時に可能となったことで、ML/TFリスクの増加につながっている」と、尾崎氏は指摘します。 

「犯罪組織やテロ組織は、犯罪収益を他国に送金したり、第三国経由でテロ資金を提供して、法執行当局の捜査を逃れようとしています。 国境を越えた犯罪収益の移動を追跡し、MLを探知し、犯罪組織が国際金融システムを悪用するのを防ぐためには、連携が不可欠です。」とし、関係当局と民間企業との緊密な連携が最も重要であると語りました。 


Regulatory Intelligence

銀行、金融サービス、保険の分野では、かつてないほど頻繁な規制変更と複雑な状況が続いています。トムソン・ロイターのレギュラトリーインテリジェンスは、急速に変化する環境において、規制データの収集、監視、分析、および追跡を支援します。


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