税務テクノロージーへの投資
間接税チームの規模や部門の課題にもよりますが、税務テクノロジーに投資すべきか、いつ導入するかといった問題は度々議題に上がります。
税務業務の自動化により時間を節約し、ヒューマンエラーのリスクを最小限に抑え、間接税業務を裏方であるコンプライアンス遵守機能から、より価値ある戦略的アドバイザリーの役割へと昇格させることができるでしょう。一方で、組織の規模が小さく、間接税業務がすでに十分に管理されている場合には、より強固な税務ソリューションに投資することはあまり意味がないと言えます。
では、間接税の自動化に投資するタイミングはいつなのでしょうか。また、このような重要な決断を下すには、どのような要因が必要なのでしょうか。
新たな税務システム導入のタイミング
トムソン・ロイターのレポート「間接税:対応への恩恵」で世界30人以上の税務担当者にインタビューしたところ、より高度な税務テクノロジーソリューションの導入を決定するには、2つの問題がきっかけになることがわかりました。
1つ目は、監査や罰則など、負の出来事があったことで、その対処に無駄な労力と時間がかかっていることや、デジタル化を求める税務当局の圧力を真剣に受け止めなければならないという意識が高まったこと。2つ目は、既存のシステムでは事業の急成長に対応できないため、財務部門と一緒に税務システムをアップグレードすることにしたことです。
ここで共通しているのは、経営陣がこの問題に目を向けるには、何か問題が発生するか、問題に対処しなければならないと認識される場合であるということです。またある回答者によると、税務チームが問題が発生した時に上手に回避策を使って対処してしまうと、経営陣がテクノロジー導入を行わずに、問題が簡単に解決できたと勘違いすることが多いと指摘してます。これはある意味、税務部門が自分たちの仕事を上手に回しすぎているとも言えます。経営陣が問題を認識していなければ、問題がないものとされてしまうのです。
ビジネスケースを成功に導くステップ
問題が特定された後に残された唯一のハードルは、間接税テクノロジーに投資するための確固たるビジネスケースを作成することです。明確なコスト・タイムとリスク・ベネフィットの分析は、通常、それだけで十分な説得力を持っていますが、幹部は決定を下す前に、より明確に有形・無形の利益を把握する必要があります。
間接税の導入を成功させた税務担当者は、以下のようなステップを踏み、ビジネスケースに盛り込むことを推奨しています。
- 積極的に「問題」を特定する。
実際に何か問題が発生するまで待つ必要はありません。不正確な申告に対する罰則、税収の減少、誤った請求書の発行、税務当局とのデジタル応対の必要性の高まりなど、行動を起こさなければ何が問題になるのかを示し、ただ待つことのリスクを管理職に伝えます。
- コスト・ベネフィット・リスク分析を行う。
間接税チームのメンバーが、スプレッドシートのチェックやデータ処理、エラーの修正にどれだけの時間を費やしているかを確認します。これを、潜在的な罰則や取り戻すことができない税収など最終的なコストに結びつけます。
- 具体的な利益と機会を強調する。
コストや罰金を減らし、より正確な請求書を発行する。還付金の申請。より効率的なプロセス。税制の変化への対応力の向上。オンラインを中心としたカスタマーエクスペリエンスの向上。 サポートコストの削減。 これらは、最新の間接税テクノロジーソリューションの利点のほんの一部に過ぎません。これらを強調してください。
- 無形資産を忘れない。
テクノロジーソリューションの最も顕著なメリットの中には、すぐには収益に結びつかないものもあります。間接税チームは、リスクの低減、エラー処理に費やす時間の短縮、すべての取引の便利な監査証跡に加えて、テクノロジーへの追加投資によって、ビジネスや税務に関する戦略的な問題について経営陣に提言するなど、より付加価値の高い業務に時間を割り当てることができることを示すことが重要です。また、自動化は間接税の仕事をより面白く、魅力的なものにすることで、人材の育成と定着にも役立ちます(例えば、誰にとっても退屈な仕事を減らすことができます)。
- 税務テクノロジーに関する主要な疑問に対処する。
先進的な税務テクノロジーに対する抵抗感はさまざまな形で現れますが、交渉に入る前にそれらを認識しておくことは有益です。ある人は既存の業務には高度な技術がなくても十分に対応できるので、高度な技術は必要ないと考えているかもしれません。またある人は、新しいテクノロジー・ソリューションの導入により新たな付加価値が得られることに懐疑的かもしれません。また、ERPシステムの他のデータ問題を解決する前に、新しい税務エンジンを検討するのは無意味だと考える人もいるのです。
付加価値税(VAT)、物品サービス税(GST)、消費税などの間接税は、近年アジア地域における導入が増加傾向にあります。刻一刻と変化する各国の規制に対応するためには、間接税の申告を迅速に処理できる税務テクノロジーの導入が効果的です。アジア各国の間接税に関するレポートを、是非ご覧ください。
新たなテクノロジーを導入する前に
企業の税務チームのリーダーへのインタビューによると、間接税テクノロジーの旅に意気揚々と出る前に、少なくとも2つの重要な準備段階があります。
- データの整理
様々な ERP システムから得られるデータが信頼できるものであり、正確なものであることを確認してください。また、新しい ERP システムの導入時に税務エンジンの追加を検討している場合も同様です。
- 自分のプロセスを知る。
導入コンサルタントがすべての問題を解決してくれるだろうと頼りきってはいけません。間接税チームは、コンサルタントを呼び戻さなくても問題を解決できるだけの専門知識を社内に備えておく必要があります。また、システムがどのようにカスタマイズされているのか、組織内の他のシステムとどのように連動しているのかなど、すべての詳細を複数の担当者が把握しておく必要があります。
回答者からのその他の推奨事項
- 財務部門とIT部門の両方にシニアスポンサーを置く
- 間接税と特定のERPシステムの経験を持つコンサルタントを雇う。
- カスタマイズは最小限にとどめる
- ありとあらゆるシナリオをテストする
- 間接税ソフトウェアの最新版を購入する
- 可能な限り早い段階で、すべてのユーザーを教育し、参加させる
- 導入コンサルタントからの引き継ぎ手順を確立する
- 作業完了までに必要な時間と予算を確保する
テクノロジー導入のメリット
企業が新たな税務テクノロジーを導入するかどうかに関わらず、企業経営者は間接税が従来よりも複雑であり、リソースを必要とするものになっていることを認識する必要があります。財務上の罰金、機会損失、風評被害などのリスクを無視することはできませんが、長期的に見れば、企業にとってのテクノロジー投資のメリットはあまりにも大きいのです。間接税テクノロジーに投資をした税務チームや企業は、将来の税務上の課題に対応するための適切な体制を整えることができます。また、最新の間接税システムがもたらすリスクの低減と業績の向上の両面から利益を得ることができます。
世界各国で課される販売税・使用税、VAT、GSTを最新の税率と課税規定を用いて判定するソフトウェア、ONESOURCE Indirect Tax Determination。間接税処理プロセスの改善について詳しくご紹介します。