英国がCPTPPに参加することによって、CPTPPを活用する企業のビジネスチャンスはさらに拡大するでしょう。そして、CPTPP利用の際には、最新の市場動向や規制、貿易手続きに関する綿密な情報収集が必要となります。
そこで本記事では、CPTPPセミナーを活用する意義、過去に開催されたセミナー概要を国別に解説します。サプライチェーン最適化に役立つ意思決定・分析ツール「ONESOURCE FTA Analyzer」についても紹介するので、貿易実務担当者の方はぜひ参考にしてください。
CPTPPセミナーを活用する意義とは
2002年1月に署名、同年11月に発効された日・シンガポールEPA以降、日本について発効済みEPA / FTAの数は21に上ります。協定ごとに異なる原産地規則を理解し、最新動向やその国特有の情報にアクセスするには、セミナーを活用することがおすすめです。
原産地規則は品目ごとに定められるため、内容が複雑です。そこで、税関や日本関税協会、JETROなどが開催するセミナーの活用をおすすめしています。これらのセミナーに参加することで、CPTPPやその他の貿易協定の活用方法について最新の情報や具体的なアドバイスを得られます。
税関や日本関税協会、JETROは、不明点を問合せる相談窓口としても有用なので、チェックしておきましょう。また、CPTPP参加国も個別にセミナーを開催することがあります。接点作りやビジネスチャンスを見つける上でも、国別のセミナーに参加しておくことがおすすめです。
輸出者側は、輸出する産品やその部品・原材料の生産者にサプライヤー証明書を依頼するといった原産性調査や、検認に備えた書類管理にコストがかかります。複数のEPA / FTAを利用する際は協定の管理が複雑化することから、検認リスクの対応を万全にするためにもデジタル化がおすすめです。
国別|過去に開催されたCPTPPセミナーの概要
ここでは、過去に開催された参加国別のCPTPPセミナーの概要をご紹介します。
マレーシア
近年では、日本からEPA / FTAを利用した飲食料品の輸出が増えていることから、農林水産省はさらに食品関係企業の海外市場への進出を促進していく意向です。そこで、JETRO等の協力を得て、CPTPPを活用したマレーシア向け輸出に関するオンラインセミナーが、下記の通り開催されました。
開催日:2024年2月29日
JETROからは日本食市場の概況や日本産食品輸出に向けた支援、日系輸入卸からは今後求められる商材、会計事務所からは貿易実務の具体例について紹介がありました。
ベトナム
2018年3月にチリで11か国によってCPTPP協定に署名が行われて以来、日本企業向けにいくつかの参加国がセミナーを開催しました。その中の1つが、駐日ベトナム大使館とJETROが下記の通りで共催した「CPTPP活用セミナー」です。
開催日:2018年11月22日
セミナーではCPTPP誕生の意義や、モノの貿易以外でも高い水準の自由化やルールづくりが行われたことが紹介されました。CPTPPの登場によって、法的サポートを受けながらベトナムの政府調達市場に日本企業が参加できるほか、銀行、保険、建設、物流、グラフィックデザイン等日本のサービス産業も、ベトナム市場に参入するチャンスが増えます。
カナダ
CPTPPが日本と締結する初のEPA / FTAとなるカナダは、日本企業向けに情報発信を積極的に行っています。カナダ連邦政府主催のCPTPPセミナー、在日カナダ大使館主催の「人材交流におけるカナダの支援政策」セミナー、日本の輸入者および自動車産業向けのセミナーが下記の通り開催されました。
開催日:2019年1月21、23、25日、2019年2月15日、2019年3月11日、2019年11月22日、2022年4月27日
CPTPP発効によってヒトの流れも活発になることが見込まれるので、カナダの入国管理や移民政策についての情報提供がありました。また、CPTPPおよび新NAFTAの発効によって、カナダの自動車部品産業との新たな連携のチャンスが生まれるとして、日本の自動車産業に向けたセミナーも開催されました。
オーストラリア
オーストラリアでは、メルボルン日本商工会議所がJETROシドニー事務所と共催で、CPTPP活用セミナーを下記の通り開催しました。
開催日:2019年1月17日
オーストラリア貿易投資促進庁(Austrade)は、CPTPPの概要、既存の協定であるJAEPAとの比較、主要品目を例にした活用メリットを紹介しました。JETROからはCPTPPの意義、活用の流れや注意点、自己申告書式・お役立ちツールなどの情報提供がありました。セミナー終了後も、参加者による名刺交換や講演者への質問が活発に行われました。
CPTPP利用時の問合せ先
ここでは、CPTPP利用時の主な問合せ先についてご紹介します。(注1、(注2、(注3
参加国から輸入する場合
輸入に関するお問い合わせ | |
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通関手続一般 | 各税関窓口(税関相談官(室)) |
関税分類・関税率 | カスタムアンサー(税関手続 FAQ) |
各税関窓口(関税鑑査官) | |
事前教示制度(分類) | |
原産地規則 | 各税関窓口(原産地調査官) |
事前教示制度(原産地) | |
原産地規則ポータル |
参加国に向けて輸出する場合
輸出に関するお問い合わせ | |
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EPAの自己申告制度を利用した日本からの輸出に関する相談 | 財務省税関 EPA 原産地センター※CPTPPのケース |
輸出入の手続き、ビジネス相談など実務全般 | 日本貿易振興機構(JETRO) |
【日本】:JETRO・EPA 活用のための相談窓口 | |
【海外】:JETRO・EPA アドバイザー | |
輸出時の原産地申告の準備等の実務 | EPA 相談デスク |
協定の鉱工業品の関税・原産地規則など | 経済産業省 通商政策局 経済連携課 |
トムソン・ロイター主催の国際貿易に関するセミナー
トムソン・ロイターは、専門家向けに信頼性の高い解決策を導き出すためのインテリジェンス、テクノロジー、専門知識を提供する企業です。様々な交流イベントやウェビナーを開催することで、最新の情報提供に努めています。
ここでは、弊社主催の国際貿易関連セミナーについてご紹介します。オンデマンドでご視聴いただけるウェビナーも提供していますので、ぜひご活用ください。
厳格化する輸出規制リスクへの対処法シリーズ
輸出管理分野を扱う弁護士として、豊富な経験と稀少な知見を持つ玉木 昭久先生をお招きし、直近の厳格化する輸出規制の動向と増大するリスクについて解説していただきました。一部の『厳格化する輸出規制リスクへの対処法シリーズ』はオンデマンドで今すぐご視聴になれます。
シリーズ | 概要 |
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第1回「基礎から応用」 | 外為法セミナーでは講師として大人気の玉木 昭久先生による、外為法の輸出規制の現況を基礎から応用まで解説 |
第2回「輸出規制制度の大転換」 | 半導体関連を中心に対中禁輸措置が強化されている状況を踏まえ、輸出管理におけるコンプライアンス確保の基礎を解説 |
外為法改正・輸出管理の最新動向 | インタラクティブなセッションを通じて、安全保障貿易管理の重要性や、社内体制構築などの見解を解説 |
第3回「経済安全保障と安全保障貿易管理の今後」 | グローバルビジネス環境の不確実性が高まる中、輸出管理におけるグローバル視点とその効果的な管理、経済安全保障と安全保障貿易管理に焦点を当て、基礎から応用まで解説 |
違反行為の摘発急増! 外為法の現在を見据える | 過去のウェビナーなどでの実務的な質問に答えるセッションを通じて、輸出管理の最新動向、外為法の運用強化の状況を解説 |
トランプ政権復活による輸出規制への影響 | トランプ新政権下における米国貿易政策や中国との関係の最新動向、日本企業への影響について解説 |
米国トランプ政権の始動と国際貿易への影響 | トランプ関税、日本における外為法違反事件の摘発強化、半導体規制の動向、また最新法令改正のポイントを含む輸出管理の最新動向について解説 |
トムソン・ロイター最大規模カンファレンス日本初上陸!SYNERGY 2025 グローバルトレード・ストリーム
トランプ2次政権による関税措置、地政学的リスクや規制強化といった不確実性が増す中、人手不足が深刻化する現代において、貿易管理のデジタル・トランスフォーメーション(DX)は急務化しています。貿易DXをリードする日本企業の先進事例を紹介するとともに、最新AI・テクノロジーソリューションがどのように貢献するのかをご紹介しました。
開催日:2025年7月2日
上記イベントがオンデマンドにて視聴可能です。
まとめ:最新トレンドの把握にはデジタル化が有効
CPTPPを含む複数のEPA / FTAを駆使しながら、サプライチェーンの最適化を手作業で行おうとすると大きな労力がかかります。規制や特恵関税率の変更等の最新トレンドを網羅しながら、最も費用対効果の高い調達国、取引経路および貿易協定を短時間で把握するには、デジタル化が有効です。
ONESOURCE FTA Analyzer
コスト削減を最大化しながら関税を最適化する方法を導き出すには、意思決定・分析ツールの利用が便利です。ONESOURCE FTA Analyzerなら、独自のデータベースとの連携によって、大量のリソースを必要とする分析プロセスを効率化できます。ツールについて、詳しくは下記リンクよりご確認ください。
参考資料
注1:自己申告制度利用方法の紹介【輸出編/CPTPP】(2021年7月)|財務省・税関EPA原産地センター
注2:自己申告制度利用方法の紹介【輸入編/CPTPP】(2020年11月)|財務省・税関EPA原産地センター
注3:CPTPP・日 EUEPA に関する問合せ先|税関