FTA

FTAをサプライチェーンで活用するには

FTAの持つ可能性

新型コロナウイルスの世界的流行のピーク時に、グローバルサプライチェーンは、都市のロックダウンなどによる深刻な影響を受けました。一時的な貿易制限、商品の不足、港の閉鎖により、脆弱な貿易環境が露呈し、また、予期せぬ関税がサプライチェーンに大きな影響を与えました。ポストコロナの世界では、グローバルサプライチェーンのためにFTAを活用することがこれまで以上に重要となっています。

しかしながら、トムソン・ロイターの国際貿易に関する年次調査によると、現状では新規市場の開拓や大幅なコスト削減につながるFTAをすべて活用したと回答した企業はわずか23%にとどまっています。また、FTAを利用した企業の多くが、コンプライアンス管理を手作業のプロセスで行っていることが明らかになりました。

FTAの世界的な進展がサプライチェーン設計に与える影響

FTAを最大限に活用していない多国籍企業は、FTAのメリットを十分に享受できていません。米国は保護主義的な姿勢を強め、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定をはじめとする国際的なFTAへの参加を取りやめました。それ以降、企業のサプライチェーン設計に影響を与えうる各地域の貿易協定の世界的な動向や発展が顕著になっているのです。

より大きく、より強固になったアジアのFTA

米国がTPPから離脱した後、残りの署名国はTPPを復活させ、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)に合意しました。現在の加盟国は、オーストラリア、ブルネイ・ダルサラーム、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ペルー、ニュージーランド、シンガポール、ベトナムの11か国です。

地域包括的経済連携(RCEP)は、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟10カ国とそのFTAパートナーである中国、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの5カ国によるFTAで、世界最大の自由貿易協定であり、最も重要な貿易圏となっています。 多くの企業がこの地域の国々にサプライチェーンネットワークの一部を有しているため、多くのビジネスチャンスを生む可能性を秘めています。

中国への依存度の低減

米中貿易戦争と、米国の中国のサプライチェーンへの依存により脆弱性が露呈したことを契機に、米国はポストコロナ以降、グローバルサプライチェーンの重要な原材料の生産において中国への依存を減らす方向に舵を切りました。米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)では、製造業を北米に移転する優遇措置を設けることで、これに対処しています。

北米自由貿易協定(NAFTA)に代わるUSMCAは、地域統合型サプライチェーンとして有力な選択肢となるでしょう。自動車、エレクトロニクス、医療機器、化学、農業、繊維などの分野の米国企業にとって、USMCAは関税ゼロまたは大幅に低い関税によるコスト削減と輸出市場の拡大を実現します。

より厳格な労働法

USMCAは、労働法に関しても他のFTAよりはるかに厳格です。メキシコに労働組合の強化を求め、強制労働による商品の輸入を禁止し、また、移民労働者を含む労働者の権利を保護しています。これは、米国企業の環境・社会・ガバナンス(ESG)目標のうち、社会的側面をサポートするものです。

各地域の貿易協定は、グローバルサプライチェーンにとってどのようなメリットがあるのでしょうか?

FTAが輸入コストの引き下げや国際市場への進出に影響を与えることから、グローバルサプライチェーン関連の課題は経営陣の優先事項となっています。サプライチェーン担当者やコンプライアンス貿易担当者は、今や企業において重要かつ貴重な役割を担っています。

FTAがグローバルサプライチェーンにもたらすメリットは、多岐にわたります。

コスト削減。これは、FTAを利用するための最も説得力のある利点です。企業は、対象となる商品に対して関税を免除または削減することで、多くのコスト削減を実現することができます。

調達の安定性。FTAは商品とサービスが制限なく国家間を行き来することを可能にし、企業は輸入品の調達においてより確実性を高めることができます。

予測可能な取引環境。明確で透明性のある標準的な規則や要件により、企業は確実な調達計画を立てることができます。

輸出市場の拡大。FTA が締結されると、企業は国際市場により広く、より簡単に、そしてより競争的にアプローチすることができます。

知的財産の保護。FTA締結国では、特許や著作権のより強固な保護と法の執行が行われます。

政府契約への参入。企業は、FTA締結国において、特定の政府調達に入札することもできます。

経済連携協定を利用する際の課題

ポストコロナ時代のグローバルサプライチェーンにおいてFTAを活用することの利点は明らかであるにもかかわらず、多くの企業はこの協定を活用していないのが現状です。企業が直面する最も一般的な理由は次の2つです。

複雑な規則と要件

約400もの異なる貿易協定があり、たとえ1つの商品の輸出入に対しても、複数のFTAを利用することができます。米国は20カ国とFTAを結んでおり、それぞれ異なる規則や要件があり、遵守に伴うメリットやコストも様々です。FTAは法律用語で書かれた交渉文書であるため、理解するのが難しい場合があります。また、適用対象や関税率のルールは常に変更され、更新されているため、把握するのが困難な場合もあります。

特に国際貿易の経験が浅い企業にとって、これは大変なことです。複雑な原産地規則を理解し、解釈し、遵守するための人材などのリソースがない、あるいはどの貿易協定を利用すべきかを決定することさえできないかもしれません。

手間のかかるコンプライアンス

原産地証明書(CO)の取得は、企業にとって最大の悩みの種の一つです。輸入製品が要求されるFTA基準を満たしていることを確認し、優先権を主張するための適切な書類を集めなければなりません。サプライヤーに部品や商品の証明書や申告書のコピーを要求するのは、面倒で時間のかかる作業です。また、規則、プロセス、形式は、各貿易協定によって異なります。

特に、企業がサプライチェーン内で複数の交差する貿易協定を利用している場合、部品表(BOM)の分析も混乱し、時間を要します。多くの企業は、様々な依頼への回答、サプライヤー情報、証明書の管理にエクセルなどの表計算ソフトを使用しています。この手作業は時間がかかり、非効率的かつ、ミスを誘発しやすいプロセスです。

FTAを適切に管理する方法

FTAの複雑な規則や要件を管理するには、ONESOURCE Free Trade Agreement (FTA) Managementなどのサプライチェーンおよびグローバルトレード専用の管理ソフトウェアを使用して、プロセスを自動化する方法があります。自動化は、調達の決定、サプライヤー証明書の取得、BOM分析の実行、顧客への証明書の発行などのサポートに役立ちます。

また、グローバルな貿易管理ソフトウェアにより、サプライチェーンや貿易コンプライアンス担当者は、FTA資格の評価と管理を適切に行うことができます。現在および将来においてもFTAについて適宜コンプライアンス・シナリオを実行し、協定が重複している場合には最適なものを特定します。原産地規則への準拠、サプライヤーの追跡、関税の計算、証明書の発行、在庫管理全体の監視と把握がより簡単かつ迅速に行えるようになります。


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ONESOURCE FTA Managementを使えば、利用可能なFTAをフルに活用することができます。300を超す貿易協定から成るFTAの活用は複雑な作業です。ONESOURCEのFTA管理ソフトは、FTA特有の原産地規則のもとで製品を判断するツールです。さらに物流プロセスを効率化し、手作業を減らし、FTAのガイドラインを遵守し、関税を削減または回避できます。

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