ISSBは証券規制当局のグリーンウォッシング対策の突破口となり得るか

グラスゴーで開催された国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)において、国際サステナビリティ・スタンダード・ボード(ISSB)の設立は、証券規制当局にとって「極めて重要な瞬間」であると、国際証券監督機関(IOSCO)の議長が述べました。 

「ISSBは、ベースラインとなる情報開示基準を策定する最も信頼できるメカニズムであり、現在の混乱した状況に効果を発揮するものと考えています。」 

香港証券先物取引委員会の最高責任者、アシュリー・オルダー委員長は、グリーン・ホライズン・サミットの参加者に対して次のように述べました。「ISSBは、投資家の情報ニーズを満たす包括的なグローバル企業情報開示基準を策定します。これにより、投資家は投資戦略をネットゼロに合わせることができ、潜在的なグリーンウォッシングのリスクを軽減することができます。」 

プロトタイプ基準 

ISSBのプロトタイプ基準については、IOSCOが深く関与していると言われています。IOSCOがこの基準を承認すれば、IOSCOのメンバーである規制機関や監督機関がこの基準を使用することになり 、各国市場での使用が定着します。 

「20年前、IOSCOが国際財務報告基準(IFRS)を承認したことで、加盟企業が国内で基準を採用する道が開けました。 」英国金融行動監視機構(FCA)の消費者・競争担当エグゼクティブ・ディレクターであるシェルダン・ミルズ氏も、新組織の設立を支持する発言をしています。 

ミルズ氏は、アルダー委員長の講演後に行われたパネルディスカッションで、「企業報告の統一基準を一刻も早く確立する必要があるため、ISSB発足の意義は過小評価できない」と述べました。 

また、各国がISSBのベースラインを超える基準を選択した場合、監督機関として基準の優先順位に混乱が生ずるのではないかという懸念について、「うまくいけば、良いテストケースになるでしょう。二重チェック機能として、政府がISSBの報告ベースラインからさらに踏み込んで、企業に監視の目が行き届くのです。現在開発中の英国の分類法は、基準のベースラインの上に政府の政策目標を置くものです。」と、述べています。 

ISSBの設立の意義

国際財務報告基準(IFRS)財団のエグゼクティブ・ディレクターであるリー・ホワイト氏は、「ISSBの基準を超えるかどうかは、各地域の判断に委ねられます。私たちの目的は、国際的な統一基準のなかで世界的なビジネスを可視化することですが、各地域がさらに上を目指すために追加の指標を求めることもあるでしょう」と、述べています。 

20年以上にわたってグローバルな会計基準を発行してきたIFRS財団が、COP26でISSBの設立を発表しました。ISSBは、フランクフルトに本部を置き、当初はモントリオール、サンフランシスコ、ロンドンに事務所を置く予定です。 

  ISSBは、カーボン・ディスクロージャー・プロジェクトの主導権を握る気候変動開示基準委員会と統合報告書フレームワークをとサステナビリティ会計基準委員会(SASB)の基準を含むバリュー・レポーティング財団の両方を2022年6月までに吸収します。 

ホワイト氏は、昨日発表されたサステナビリティに関する一般的な情報開示のプロトタイプは、気候変動以外のより具体的なサステナビリティ基準が開発されるまでの間、すべてのESG情報開示の暫定基準として機能する可能性があると述べました。気候と一般的な開示基準は2022年下半期に採用される予定です。 

共通基盤であるタクソノミー

リシ・スナック財務大臣は、COP26に間に合うようにグローバルなグリーンタクソノミーの確立を目指すと述べましたが、結局実現しませんでした。 

一方で、持続可能な金融に関する国際プラットフォーム(IPSF)は、共通の基盤となるタクソノミーに関する報告書を発表しました。この報告書を作成したIPSFのワーキンググループでは、中国とEUが共同議長を務めました。 

EU委員会が主催したパネルディスカッションで、中国国際資本公司の投資銀行部門のエグゼクティブ・ディレクターであるダミン・チェン氏は、「これで資本市場を頻繁に利用する人々のための共通の基準となる分類ができました。これは航空業界と同じで、共通基盤のタクソノミーがあれば国境を越えて安全に飛行することができます。これで、欧州中央銀行はパンダ債を発行することができ、同時に中国はユーロ債の発行を検討することができます」と語りました。


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