グローバルミニマム課税(GMT)とデータのジレンマ

経済協力開発機構(OECD)が新たに承認し、2024年1月に施行される課税制度に関連した法律の制定に韓国が世界で初めて踏み出し、グローバルミニマム課税(GMT)(GloBEルール、OECD BEPS 2.0プロジェクト第2の柱)が現実となっています。世界経済の90%を占める137ヵ国が、15%のGMT導入に合意しています。世界中で約10,000社が影響を受けると予測されています。もしあなたの所属する組織がその中に含まれる可能性があるのであれば、今こそ対策を準備するタイミングです。

グローバルミニマム課税(GMT)ルールは、データの収集、分析、報告をかつてないほど企業に課す制度で、  大企業(最終親事業体の連結財務諸表の売上高が7億5,000万ユーロ以上の企業)が低課税国に利益を移転する「課税逃れ」の防止を目的としています。 

しかし、(多くの国では現在も国内法令の整備中である)この制度は、コンプライアンス関連の問題を多数投げかけることになります。多くの企業にとって、最も煩雑なのはグローバルミニマム課税(GMT)の報告に必要なデータの管理です。新たな法制度では、さらに多くの組織データ(例:株式報酬、年金費用)が必要とされるなど、組織全体で収集するデータの範囲の拡大が求められ、第2の柱関連のデータ(例:損失選択、繰越)も追加する必要があります。変革が重視されてリスク軽減が促され、効率化が進む中、データ管理の重要性はこれまでになく増しています。 

グローバルミニマム課税(GMT)とは?   

  • グローバルミニマム課税(GMT)とは、各法域が合意、承認した国際的な最低法人税率で、課税による利益が各国に配分されます。 
  • 経済協力開発機構(OECD)が先導するこの制度は、課税率の 「底辺への競争」を回避し、課税率が低い国への税収移転を阻止することを目的としています。主要経済大国は、企業が利益を上げた国において法人税課税を確保したいのですが、物理的に企業がその国に存在しない場合もあります。この問題は、昨今、世界経済のデジタル化により深刻化しています。 
  • 売上高7億5,000万ユーロ以上の多国籍企業は、事業を展開する国で生まれた収益の税率が最低限負担すべき法人税の割合を下回る場合、トップアップ税の支払い義務が生じます。また、新たな規制では、売上高が200億ユーロ超の場合、収益の10%を超える利益が市場国に再分配されます。 

なぜデータがそれほどまでに重要なのか? 

  • デジタル化は企業の運営や税徴収にも重要な影響を与え、データ重視傾向が高まりました。税務担当者は十分理解していますが、正確で詳細な財務・税務データを迅速に幹部に提出しなければならないプレッシャーは相当高いものです。政府は、税務部門や企業に透明性というさらに大きなプレッシャーもかけています。 
  • 現在、グローバルミニマム課税(GMT)制度は国際的な法人課税と連動していますが、税務部門への要求はさらに高まり、前例のない世界規模の可視性の提供と報告義務の強化が課せられます。これらはすべて、データに裏打ちされます。 
  • GMTは様々な税法規(ブックタックス、キャッシュタックス、クロスボーダー規制、現地の規制)にも関連しますが、異なるデータが様々な形式(スプレッドシート、メール、ERPシステムなど)で存在します。トムソン・ロイターの2022年企業税務部門の状況レポートには、上級税務専門家は税務部門が現在直面している最大の課題として税制改革を挙げていると記載されています。GMTは、税制改革が国際的な税務対策に提示する大きな課題の1つです。 

管理を強化する重要性 

新たな規制に準拠するためには、より詳細なデータを社内の多くの分野から(継続的とまではいかなくとも)より頻繁に、より迅速に収集しなければないので、実際には税額計算と申告を行う間隔が短くなります。 

OECDが第2の柱の導入枠組みにまつわる詳細なガイダンス(主に国別報告事項のデータに基づいたセーフハーバーや、適格国内ミニマム課税(QDMTT)、Subpart F/GILTI、第2の柱関連のその他課税の順序ルールに関して待ち望まれていたガイダンス)を続々と発行する中、データに関する課題の重要性と、世界中の膨大な各種システムと多様な利害関係者からデータを収集できる自動システムの必要性は緊急性を増しています。 

簡単にいえば、アメリカの多国籍企業の場合、第2の柱はデータ収集の入念な調整と全世界の税金引当計算に加え、国外源泉所得(Subpart F、GILTI、FTC)の計算、国別報告事項(CbCレポート)の金額、第2の柱関連の税額を求めており、入力値と計算値をさまざまな計算エンジンの間で送受信せねばなりません。 

このすべてを、四半期ごとの税引当金の計算時だけでなく、各国の法人税申告の準備と提出時、そしてCbCレポートの情報申告とGloBE情報申告の準備・提出中に行わねばなりません(未だに明確にされていないSTTRの準拠要件もあります)。 

要するに、このような計算を適切に行えるデータエンジンや計算エンジンがなければ、四半期の終了時に税引当金の計算は完了しません。 

適切なデータガバナンス達成の基本は、様々なシステムやフォーマットのデータを一元化し、信頼できる税務データ情報源を構築してソリューションを使用することです。ONESOURCE Data Hubのような中央データウェアハウスを利用すれば、データを準備する時間や税務データを複数のアプリケーションから検索する時間を節約できます。そのため税務担当者はグローバルミニマム課税(GMT)の影響などの複雑な問題を分析し、戦略的に取り組むことに時間を費やせます。 

グローバルミニマム課税(GMT)分析にすぐに使用できるデータは、「信頼できる唯一の情報源」から得るべきです。そこには1つのデータセットにすべてのデータが格納され、(社内外への)報告や開示には目的にかなったデータ、すなわち一貫性があり、包括的で正確な最新データが使用されます。 

今後の影響に備える 

施行まで1年を切っている中、このような要求を満たすことは非常に困難です。「データ」ハウスを整備する時間はあまりありません。国際的な税務テクノロジー企業であり、トムソン・ロイターのテクノロジーパートナーでもあるOrbitax社は、これを「国際税務には荒波が発生しており、国際税制は100年に1度の激変を迎える」と捉えています。 

この激変こそが、ワークフローを自動化・標準化し、グローバルミニマム課税(GMT)の影響を明確化するために、Orbitax Global Minimum Taxのような高度なテクノロジーツールを導入すべき理由なのです。 

税務テクノロジーは、企業がグローバルミニマム課税の要件を満たすためのお手伝いをします。


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