ESGリスク対策:マテリアリティ評価の5ステップ

昨今、企業や法律事務所がESG活動のマテリアリティ(重要性)評価を行うことは必要不可欠です、そのための5つのステップを紹介します。

環境・社会・ガバナンス(ESG)活動に関するマテリアリティ評価の実施についてのコンセプトは明確ですが、すぐに泥沼化する可能性があります。

この評価には財務的な評価と、より広範な問題を分析する評価の2種類があります。財務評価では、組織の財務価値に影響を与えるESGリスクのみに着目します。より広範な視点からの評価は、しばしば「ダブルマテリアリティ」評価と呼ばれ、財務的影響と企業活動が環境や社会全体に与える影響の両方からESG課題を検討します。

1.運営委員会を作る

ESG課題を見極める最初のステップは、ESG戦略の策定と実行に責任を持つエグゼクティブからなるクロスファンクショナル・チームを結成することです。多くの場合はこの取り組みをリードする人材を雇うか、既存の社内リーダーを起用します。

例えば、英国を拠点とする法律事務所バーグズ・サーモン(Burges Salmon)は、カースティ・グリーン・マン氏をコーポレートレスポンシビリティの責任者として採用しました。グリーン・マン氏のリーダーシップの下、社内の専門家(人事、コミュニティ、プロボノ、施設、環境管理、多様性と包括性、リスク管理、有力パートナー、C-suiteなど)を集め見解を得ることができました。

2. ステークホルダーの特定

企業は、重要な問題、実務、方針に関するステークホルダーを特定し立場を明確に把握する必要があります。また、それはより広範なESG関連事項の一部として、戦略的計画や報告書作成の機会となるかもしれません。法律事務所の場合ステークホルダーには、パートナー、アソシエイト、ビジネススタッフ、専門スタッフ、クライアント、重要なサプライヤー、そして地域社会との関わりなどが含まれます。

3.重要課題のリストを作成する

そして、これらのステークホルダーと協力して「ホライズンスキャンニング」調査を実施し、重要課題のリストを特定する必要があります。同業者とのベンチマークを行い、グローバルレポーティングイニシアチブのモジュール式基準アプローチやサステナビリティ会計基準委員会(Sustainability Accounting Standards Boar)のマテリアリティ・ファインダーやマップなど、グローバルまたは課題横断型のフレームワークを参考にするとよいでしょう。

グリーン・マン氏は「私は、法務部門を対象に、主要顧客がESGにどのように取り組んでいるのかまた、ビジネス課題としてどのような問題を抱えているのか調査を実施しました」と説明しました。

もちろん特別な数はありませんが、会社の規模、ESGの取り組みに専念する従業員の数、その他のビジネスプロフェッショナルを考慮すると管理しやすく包括的であることが重要です。

4.ステークスホルダーとの面談

ステークホルダーと協議するためには、アンケート、利害関係者とのセッション、1対1の個別面談などを組み合わせて、包括的なアプローチをとり意見を聞くことが有効でしょう。

・例えば、バージェス・サーモン法律事務所は従業員のグループワークを活用して、従業員が関心を持つ問題を常に把握し会社のサステナビリティ戦略のために従業員の協力を得ています。
・チャップマン&カトラー(Chapman and Cutle)法律事務所では、世代を超えたパートナーや従業員が運営委員会に参加するようにしました。

マテリアリティ評価のステークホルダー・エンゲージメントにおける最善の方法は、企業の目的をどのようにサステナビリティに統合するかを確認することで。企業の目的とサステナビリティ戦略を統合することによって、多くの企業が社内外のステークホルダーに効果的にコミュニケーションすることができます。

5.重要課題を分析し、戦略を立てる

マテリアリティ評価の最終ステップは、ステークホルダーとの協議において得た結果を多角的に分析し計画を作成します。これまでのステップで得た情報は、企業のサステナビリティ戦略を構築し、将来に向けて形成する土台となります。そして、その戦略実行に重要なのは、戦略や進捗状況についてステークホルダーと継続的にコミュニケーションをとることです。

法律事務所によっては、世界経済フォーラムや国連のサステナビリティ目標などより大きな枠組みに戦略を合わせることで、ステークホルダーがより容易に進捗状況を把握できるようにすることができます。例えば、チャップマン&カトラーとバージェス・サーモンは、国連のフレームワークと戦略を合わせました。

法律事務所のビジネスが変化し、成長するにつれて、サステナビリティ戦略やステークホルダーの視点も変化していくことでしょう。そのため、繰り返し行われるプロセスであるマテリアリティ評価を定期的に見直す必要があります。

評価を行うための時間と労力に加え、戦略や主要な優先事項に対する進捗状況を効果的に伝えることも最優先事項として取り組まなければなりません。多くの法律事務所では、ESGや社会的影響の年次報告書の発行、従業員への定期的なコミュニケーションに重要な要素の取入れ、経営陣の基調講演やタウンホールで最新情報を紹介する、執行委員やパートナーの音声やビデオインタビューをソーシャルメディアで宣伝するなど、複数のチャネルを使って最新情報を伝えています。

その一環として、特定の公的問題に対する会社の透明性について従業員の懸念を明らかにすることは、ブランディングの観点からますます重要となっています。しかし、透明性の最も重要な要素は、間違いを認め、学んだことを概説しより良い行動をすることを約束することです。


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