日本の法律サービス業界は基本的に日本特有ではありますが、大枠ではグローバルの法律業界と実質的には似ています。世界の法律業界と同様に、日本の法律業界も複数の課題に直面しています。一方で、トムソン・ロイターの調査によると、日本の顧客による法務支出の増加は世界的に見ても突出しており、業界は大きく拡大しています。また同時に、国内の法律業界は日系の大手法律事務所、企業の法務部門共に需要の急増に対応する有能な人材の確保に苦慮、対応が難しく大きな足かせとなっています。
更に、長期的な国際化と現地対応能力の限界もあり、国際法律事務所、特にM&Aや規制遵守業務に焦点を当てた法律事務所にビジネスチャンスが生まれています。これら全体の動向と関係して、日本の法律市場は生成AI の可能性に関する様々な概念や、国内外法律事務所間の相対性を試す場として機能しようとしています。
今後も成長が続く日本の法律市場
成長する日本法律市場の潜在性に関して、最も重要な要素はその成長率と言えます。法律市場の現在の強さを測定する1 つの方法は、価格動向の予想です。例えば、純支出予想は大企業(収益が米ドル換算で10 億米ドル以上の企業)の上級社内法務意思決定者へのインタビューを用いて、法務部長が法律サービスの需要動向をどのように予測しているかを測っています。
実際、支出が増加すると予想している法務部長の数と支出が減少すると予想している数の変化は、法律市場の潜在的な需要と供給を示しています。例えば、純支出予想の世界平均は過去10 年の間2 桁台前半で推移しており、2024年においては20ポイントを下回っています。一方で、日本の2024 年のスコアは61 ポイントと驚異的であった上、前年も60 ポイントと同様に首位であり主要代表国の中で日本が世界のリーダーとなっています。2025年、そして今後も引き続き日本の純支出予想スコアは法務支出が増加すると予想されています。

個々の法律実務の純支出予想は少なくとも世界平均と同水準であるにも関わらず、特定の分野では明らかに需要が高いことが分布から見て取れます。例えば、M&Aは日本の主要法律実務分野の中でも最高水準の純支出予想スコアを獲得していますが、日本の強い需要圧力は、世界平均と比較すると明白に例外的です。これは、日本の大企業が現在行っている大規模投資の直接的な結果です。資本を多額に保有し、それに対して競争力のあるリターンを提供することに苦戦している日本企業は、結果として買収を通した事業拡大を模索するM&Aブームの最中にあります。

日本の法律業界は、日本経済のより広範で長期的な過程、特に国際的な経済的機会の豊富さと、労働力不足に関する遥かに多くの国内の懸念との接点に起因する、特有の課題に直面しています。これらの課題にも関わらず、生成AI その他先進的なリーガルテックの出現は、日系法律事務所に変革の機会をもたらします。そしてAI を業務に統合することで、これら法律事務所は対応能力を強化、プロセスを合理化し、労働力不足へ効果的に対処することが出来ます。
日本は優れた技術力、迅速な労働力問題解決の必要性、急速な法律市場成長の相乗効果により、法律業界における生成AI の進化と成功のための理想市場となっています。また、AI の可能性を活用する日本の力量が法律サービスの全体像の再定義に活用されれば、日本の法律業界は、効率性、革新性、回復力のモデルとして、他国が目指す存在になると思われます。
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