日本のプロフェッショナルの現場の大きな変革が静かに進行しています。法律事務所、企業の各部門、専門的サービス組織において、個人が生成AIを試し、独自のワークフローを築き、有意義な生産性向上を実現しています。しかしその多くは、組織からはほとんど認識されていません。
本調査はトムソン・ロイターが実施した調査で、同社が最近公表した「Future of Professionals」レポートのデータに基づいて、日本の専門職の現場で進む「個人主導・非公式(シャドー・イノベーション)」型の生成AI活用を可視化し、その潜在的な機会と差し迫った課題を明らかにしました。個人の自発的な実験や学習、そして高度な機能の構築が進む一方で、組織の認識や制度、投資との間に横たわるギャップを検証し、プロフェッショナル・サービス領域における今後の方向性を示します。法務、税務・貿易、リスク・コンプライアンス、企業経営幹を対象に、日本のプロフェッショナルの現場のシャドー・イノベーションのダイナミクスを深掘りしました。
機会は明白であり、その活用には迅速かつ適切な意思決定が求められます。日本企業がシャドー・イノベーションを正当化・整合・拡大できれば、AIは単なる導入にとどまらず、優れた成果を生む戦略的レバーとなります。日本のプロフェッショナル・サービスに根差す慎重さと品質志向を、従業員に既に備わる革新的エネルギーと結び付けることが鍵であり、論点は「AIを受け入れるか否か」ではなく、現場で進行する隠れた革新を組織として可視化し、制度と運用で活性化できるかどうかにあります。
調査の要点(一部要約)
日本のプロフェッショナルはAIに対して非常に前向きで、回答者の90%がAIを変革的と捉え、業務での定期的な活用割合も世界平均の約2倍に達しています。しかし、その活用は主に水面下で行われ、職場でAIについて議論している割合は日本では15%にとどまり、世界の64%を大きく下回ります。AIを組織目標に組み込む動きも限定的で、AI関連のパフォーマンス目標を設定している組織は19%と世界平均の約半分に過ぎません。一方で投資は前進しており、日本の組織の58%がAI活用サービスに投資済み、または年内に投資予定である一方、42%は導入計画がまったくないと回答しています。こうした状況は、個人が積み上げた知見が公式チャネルを欠くために共有・再利用されず、重複開発やスケールの機会損失を生むという、未活用のエネルギーが滞留している実態を示しています。
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調査方法 :
この分析は、トムソン・ロイターによる年次発行する第3回「Future of Professionals」レポートに基づいています。データは2025年2月から3月にかけて、法務、リスク、コンプライアンス、税務、会計、監査、貿易の各業界に属する世界の2,275名から収集されました。日本向けの調査では60名からの回答を得ることができました。