戦略的優先順位 :法務部門におけるデータ駆動型アプローチ 

企業法務部門の戦略的優先事項を企業の経営目標と連動させ、相乗効果を生むために、指標をどのようにを利用できるのでしょうか。 

新しい年の始まりには、その年に達成したことや学んだことを振り返り、翌年に向けて意欲的な目標を設定しますが、多くの場合、その目標は非現実的であり、達成できないまま年を終えてしまいます。このような場合、設定した目標を深く掘り下げ、目標に対するコミットメントを強化し、達成の可能性を高めることが重要となります。 

企業では戦略的な優先順位が、このような目標設定のベースとなります。では、企業の法務部門は、今年、どこに重点を置いているのでしょうか。 

戦略的優先課題

トムソン・ロイターは、毎年恒例の法務市場調査において、約400名の法務部門リーダーに、部門が直面している主要な戦略目標や課題についてご回答をお願いしています。この調査は、特定の法務部門の課題にとどまらず、法律部門のリーダーが今後1年間、どのような課題に焦点を当てるかを明らかにすることが目的です。 

その結果、法律部門のリーダーが重点的に取り組んでいるのは、次の4つの課題であることがわかりました。効果的な法務業務の提供、効率的な業務遂行、リスクに対する積極的な防御、そして長期的な法務チームの人材育成への投資です。 

今後12か月の法務部門の戦略的優先課題(上位から、効率的な運用を実現、事業の保全、効果的な法務業務による課題への対応力、人材の維持・育成)

業務の効率化 

回答者の半数(50%)が、効率化を最優先事項としていることが明らかになりました。これは、仕事量の増加に直面しても、質の高い法務サービスを提供する部門の能力を損なうことなく、コストの管理または削減を求める経営側の要求に対応することを意味しています。多くの企業では、より少ないコストで、より多くの業務を処理しなければならないというプレッシャーから法務ソリューションの導入や業務のデジタル化をより迅速に進める一方で、効率的な業務やプロセスの推進に重点を置くようになっています。 

ある回答者は、デジタル時代に追いつき、部署の業務を刷新するという課題を挙げています。「電子請求書、内部案件管理システムなどを新たにに進化させる必要があります」と述べています。「つまり、そこにあるのに使っていないテクノロジーを使うということです」。 

ビジネスをリスクから守る 

回答者のほぼ半数(46%)が、リスクから組織を守ることに注力していると答えました。リスクとは、継続的に変化する規制やコンプライアンスに関するものです。 多くの国や地域で事業を展開するグローバル企業にとって、最大の課題は、複数の国や地域で変化する規制にどのように対応するかということです。そして、その変化の意味をどのようにビジネス全体に伝えていくかということです。 

複雑に変化する規制のほかにも、多くの企業が新型コロナウィルス感染症の世界的な流行が事業に与えた影響に対処していました。また、そうしたリスクを先取りして軽減することで訴訟リスクを回避しようとしている企業もありました。そして、言うまでもなく、サイバーセキュリティとデータセキュリティも、多くの法律部門にとって懸念事項の上位に挙げられています。 

懸念事項のなかで事業の保護は、2019年以降最も増加しており、パンデミックによって2年前には存在しなかったリスクが出現しています。 

“言葉は悪いですが、最近の課題は、地域規制の狂気です “と、スペインの小売企業の法務部門に勤務する回答者は述べています。「毎日、新しい地域規制があり、私たちにも影響があるため、組織全体が各規制の最新情報を把握する責任を負っています。」 

法務業務の効率的な提供 

次に回答者の3分の1以上(39%)が挙げるのは、法律部門が新たな外的プレッシャーにどのように適応し、効果的に法務業務を遂行することができるかという点です。 パンデミックに新たな成長機会を見出した企業もあります。例えば、リモートワークやロックダウンによる様々なサービスのデジタル化により、多くのハイテク企業は、急速に成長しました。そのようなハイテク業界の法律部門が直面する大きな課題は、部門自体の活動を急速に拡大させることです。 

また、法律部門と他の事業部門との連携を向上し、法律部門が事業全体の戦略を実現する存在になることも重要な課題です。 興味深いことに、法律部門の組織内の影響力については、以前ほど言及されなくなりましたが、部門リーダーの約2/5が依然として企業の戦略的目標を達成し、ビジネスの成長を促進しようとしていることが分かります。 

「合併したばかりなので、課題は統合です」と、米国に本社を置くエンジニアリング企業のある部門長は述べています。「2つの企業における現在の法務機能は非常に重要であり、組織の基本的なニーズと内部での日常業務をサポートし、何が必要かを理解し、それに対応することが必要です」 

人材育成 

4番目の課題は、回答者の14%が言及した、人材の開発と維持に関するものです。人生や仕事、キャリアにおける自分の位置づけを振り返り、「大退職」が起こるにつれ、雇用主は人材戦略や、長期にわたって適切な人材やスキルを社内に根付かせ、維持し、育成する最善の方法をじっくりと考えなければならなくなってきました。 

人材もまた、パンデミックによって働き方が一変した今、顧問弁護士の頭を悩ませている問題です。人材分野の課題は、質の高い人材を集め、維持すること、より持続可能な働き方としてハイブリッドワークなどへの移行を管理すること、そしてチーム全体の連帯感を確保することが優先事項となっています。 

「パンデミックから立ち直り、退職し、転職する人がいるため、人材確保と採用が優先課題となっています」と、回答者は語り、こう続けました。「その点で、昨年は大変な年でした。グローバルに活躍する人たちの心を、会えない間でも掴もうとするのですから。定期的に社員と会うようにはしていますが、他社からの勧誘による人材損失があるのです」


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