最近発表された「法務部門オペレーション(LDO)インデックスレポート」によると、「法務部門がプロセスを合理化し、急速に増加するビジネス需要に対応するためにテクノロジーへの投資を増やしているにもかかわらず、50%以上の法務部門がテクノロジー投資から得られるリターンは限定されていると回答している」ことがわかりました。
報告書はその理由として「法務部門の責任者がベンダーにテクノロジー戦略を決定させ、喫緊のビジネスニーズに合わないソリューションに高額の投資をしているケースがあまりにも多い」ことを指摘しています。
今回は、クライアントスマート社のCEOであるオース氏とネットアップ社の法務・テクノロジー・オペレーション担当、副社長であるブレントン氏に、法務テクノロジー導入計画を策定することで、テクノロジーへの投資効果を最大化する方法についてお話し頂きました。ブレントン氏は導入工程の作成に先立ち、企業の利益のために適切な人材、適切なプロセス、適切なテクノロジーを導入することに根ざした法務部門の戦略を策定することなど、必要な作業について語っています。
オース氏: リーガル・テクノロジー・ロードマップとは何でしょうか。また、なぜロードマップを作成することが重要なのでしょうか?
ブレントン氏:テクノロジー・ロードマップは、法務部門の効率と効果を最適化するテクノロジーの導入を成功させるために必要なステップを示しています。ロードマップは、テクノロジー投資の基となる企画書兼計画書となるため、非常に重要です。また、ロードマップは、何を、いつ、どのように展開するかを示すプロジェクト管理ツールでもあります。
オース氏:ロードマップを作成する前に、どのような作業が必要ですか?
ブレントン氏: 法務部はまず、その目的と優先事項を定めた戦略を持たなければなりません。次に、部門の仕事の種類、仕事をする人、仕事のプロセスを追跡し、「何を」「誰が」「どのように」を深く掘り下げていく必要があります。
オース氏:なぜ現在の仕事の進め方を把握することが重要なのでしょうか?
ブレントン氏 :プロセスマップでは、非効率な部分とその根本的な原因を特定することができます。このマッピングによって、何を修正すべきかの優先順位が決まります。優先順位が決まれば、どのような技術投資をすべきか、導入までのタイムライン、予算などの技術的な計画書を作成することができます。
限られたリソースを適切に配分し、タスクを適切に完了するためのリソースを確保するためには、常に改善する内容に優先順位をつける必要があります。
オース氏: このような事前分析をしないと、どんな落とし穴があるのでしょうか?
ブレントン氏 :現在、単一の技術プラットフォームは存在しません。存在するのは、さまざまなリーガルテックベンダーが提供する個々のテクノロジーです。構成要素であるこれら個々のテクノロジーを既存のリーガルテクノロジーや企業全体のテクノロジーと連携する統合システムに組み立てる必要があります。
このプロセスは、ハイエンドのステレオシステムを組み立てるのに似ています。異なるベンダーから最高品質のコンポーネント(部品)を選択し、その互換性を判断して、それらを統合します。必要な相互接続をすべて確認しないと、全てのニーズを満たさない危険性があります。
オース氏: 展開する技術の優先順位はどのように決めていますか?
ブレントン氏 :導入工程は、各部門ごとに異なります。優先順位を決めるのは、その部門の戦略です。その上で初めて、特定の仕事の進め方を変更することを判断できるのです。例えば、契約書への署名が大きなボトルネックになっていると判断した場合、電子署名技術の導入を優先させることができます。
もう一つの重要な問題は、リソースの割り当てです。新しいテクノロジーを現在の全社的なシステムや法務部門のシステムと統合するためには、どのような会社のリソースが必要でしょうか。会社のITリソースを大量に必要とするテクノロジーを購入したい場合は、最初の段階でITリソースを確保し、ITリソースを必要とする他のテクノロジーの展開を延期または遅延させる必要があります。テクノロジーロードマップが通常3年から5年の戦略である理由は、このリソース配分の問題にあります。
オース氏:新しいテクノロジーに関する情報をどう入手していますか?
ブレントン氏: 法務業界の技術革新は驚異的なスピードで進んでいます。すべての質問に答えてくれる情報源はありません。積極的にリーガル・オペレーション・コミュニティに参加して、業界の動向を把握し、コミュニティーから得られる情報を活用する必要があります。
テクノロジー導入を検討する際には、テクノロジー自体だけでなく、そのテクノロジーを支える開発チームの存在も大変重要です。開発チームの力は、新テクノロジーの研修や技術の改善など、継続的なサポートに不可欠です。彼らをパートナーとしてとらえることが大切です。
技術的なツールを導入する際には、すべてが意図したとおりには動かず、調整が必要になるのは当然のことです。私は、当社の社員とサードパーティの社員からなる導入チームを編成していますが、これは、彼らの多様な経験が、さまざまなタイミングでさまざまな問題を特定するのに役立つからです。問題の特定が早ければ早いほど、その解決も早くなります。
オース氏: 法務業務に従事する皆様に何かアドバイスはありますか?
ブレントン氏:テクノロジーに投資すれば、解決しようとしている問題を解決してくれる魔法の杖になると考える傾向があります。ロードマップのプロセスにおいて、実際に選択したテクノロジーツール自体が最も重要ということではありません。
大切なことは、組織全体がテクノロジー導入のロードマップを作成するという大変な作業を行うなかで、それを守るための規律を持ち、直面する変化に対応し、高いハードルを乗り越えるために全力で取り組むことなのです。