法務需要の高まりと過熱する法務人材確保

一部に楽観的な見方もあるなかで、法律事務所の経営者は、現在の法務人材の過熱状態が事務所の利益にどのような影響を与えるかを心配して眠れない夜を過ごしています。

コロナ禍においても好調な法務業界

トムソン・ロイター・インスティテュートが新たに発表した「2021年法律事務所ビジネスリーダー・レポート」によると、法律事務所のビジネスリーダーは人材に関する問題に日夜頭を悩ませています。

この年次報告書は、中規模および大規模な法律事務所で財務および運営の役割を担っている管理職並びに経営幹部の考えや意見に焦点を当てたもので、現在の法務業界の状況を把握できる貴重な報告書となっています。法律事務所を経営しながらクライアントのビジネスを維持するという二重の目的を持たないこれらのリーダーは、法律事務所の経営戦略に異なる視点をもたらします。

当然のことながら、昨年の調査では、これらの法律事務所の多くの経営者が、コロナ禍による経済全般と、それが将来の事務所の収益性に与える影響を懸念していました。しかし、多くの法律事務所が2020年末に好調な業績を上げ、2021年も飛躍の年になったことから、景気変動の影響に対する懸念は薄れてきています。

法律事務所の経営リスク トップ5は?

一方で、2021年の調査では、人材に関する懸念が法律事務所の経営者の重要事項として急上昇していることがわかりました。実際、事務所の将来の収益性に対して「高リスク」とされた上位5項目のうち4項目が、人材に関するものでした。回答者が挙げたリスクの高い項目のトップ5は、以下の順になっています。

  1. 弁護士の採用と維持
  2. 競合他社によるスタッフの引き抜き
  3. アソシエイトの給与上昇
  4. 業績不振の弁護士
  5. 手数料をめぐる法律事務所間の競争

そして、これらの問題に対する懸念は、市場の現実に裏付けられています。

例えば、最新のトムソン・ロイター「ピア・モニター・インデックス・レポート」によると、法律事務所は、専門職、特にアソシエイトの離職が顕著に見られます。2021年に顕著に見られたアソシエイトの昇給により、法律事務所の経費は急増しました。また、弁護士一人当たりの生産性は、2019年(最後の「正常な」基準年)と比較すると、低下し続けています。

楽観的な事務所経営者も

しかし、このようなリスク項目があるにもかかわらず、法律事務所の経営者の多くは、事務所の将来性に強気の姿勢を崩していません。回答者の大多数は、法律事務所の収益性を示すほぼすべての主要指標において、中程度から高い成長を期待しており、ほぼすべての業務分野における需要についても同様の期待を持っていると述べています。このような明るいムードは、過去1年半ほどの間に起こったパンデミックによる苦境が和らぎ、今後はより良い日々が続くだろうという、より一般的な楽観的な感覚を反映しているのかもしれません。

法律事務所経営の変革:「コスト」「テクノロジー」「人材」

事務所が将来に向けて準備をする中で、多くの事務所経営者は、ハイブリッドなワークモデルに対応するために、また過去2年間に経験した経費削減を引き続き活用するために、事務所の不動産使用を再検討するとしています。

また、多くの事務所が、革新的なテクノロジーを用いた効率性の向上を強化するとともに、重要な戦略としてラテラルハイヤリング(同ポジションの中途採用)や請求額の増額(値上げ)に取り組むでしょう。

最新テクノロジー活用の目的

テクノロジーに関する戦略については、詳しく調べる必要があります。今回の調査では、テクノロジーの利用拡大に関する質問を、コスト削減を目的とした利用と、コスト削減以外の目的で利用する場合とに分けて行いました。その結果、「コスト削減以外の目的でテクノロジーの利用を増やす予定」と答えた企業が多いことがわかりました。

最新テクノロジーの導入は、顧客により良い価値を提供する手段

では、コスト削減以外では、どのような分野でテクノロジーが活用されるのでしょうか。テクノロジーソリューションのアップグレードまたは購入を計画していると回答した企業を見ると、ほとんどの用途は、新たなワークフローを促進したり、資料などをより効率的に作成することを目的としています。また、リモートワーク、財務管理、社内コラボレーション、クライアントポータル、市場分析、リーガルプロジェクト管理、電子請求書などの分野で購入やアップグレードを検討している企業が多いようです。全体として、企業は、クライアントにより良い価値を提供する手段として、新たなテクノロジーの導入を検討しています。

クラウドやサーバーのインフラ、電子証拠開示、ITサポートなどは、現在アウトソーシングしていたり、または将来的にアウトソーシングしたいと考えている分野として挙げられています。

本レポートでは、国内での事業拡大の計画や、対面式とリモートの両方で従業員を管理することで生じる企業文化への懸念、ハイブリッド・ワークフォースの時代に法律事務所がどのようにコラボレーションを推進しようとしているかなどについても詳細に報告しています。



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