サプライチェーンの課題を管理し、リスク軽減を実現

新型コロナウイルス感染症による影響

コロナ禍の2年間、サプライチェーンの混乱は、新車から食料品、半導体、ガソリンに及び、さまざまな供給不足が世界中の生活に影響を及ぼしました。このサプライチェーンの課題は、企業の一部署の頭痛の種から世間の関心を集めるトップニュースへと変化しました。

中国との貿易戦争に始まり、次に新型コロナウイルス感染症によるロックダウン等の行動制限により、世界の商品需要が激減。その後、予想以上に早く供給が戻ったため、貨物、船舶、工場運営、人材などの物流課題が連鎖的に発生しました。また、世界中の産業が小麦、トウモロコシなどの植物油、機械設備の供給不足は言うまでもなく、イギリスの欧州連合離脱や、ロシアやベラルーシへの経済制裁にも影響を受けています。

トムソン・ロイターのアジア・新興国市場担当 グローバル・トレード・プロポジション・リーダーのゾーイ・マルティネスは、「現代のサプライチェーンはグローバルに統合されているため、世界中のあらゆる地域でこうした混乱の影響を受けます。要するに、世界の企業で、サプライチェーンに影響を与えるような品不足を経験していない企業はほとんどないのです」と、と指摘します。

不確実な状況においてサプライチェーン課題を管理

とはいえ、企業が、制裁やサプライチェーンの課題により事業運営に与える影響を軽減できる方法は数多くあります。そして、分断が進み、予測不可能な世界において、企業がサプライチェーンを管理するのに役立つテクノロジーツールも多数開発されています。

「現在、企業が直面している最も困難な課題の1つは、個人に対する制裁はもちろん、発行されるすべての国別制裁や規制の変更、拒否される当事者のスクリーニング、輸出許可番号(ECN)や調和システム(HS)番号の更新に対応することです」とマルティネスは指摘します。

例えば、トムソン・ロイターのグローバルトレードチームは、取引禁止対象について650以上のリストを完備しており、ウクライナ侵攻が始まった2022年2月から4月末までの5週間の間にさらに、13,370件のリストを更新。1日あたり平均393件が更新されました。 さらに、常に256の規制変更を追跡し、数十万のECN(Export Clearance Numbers)とHSコードを更新、日々最新の情報への変更が反映されています。

規制情報の変化のスピードと範囲はめまぐるしく、事態はすぐには収束しそうにありません。米国、英国、EUは現在、ロシアに対する金融、貿易制裁のさらなる強化を検討しており、中国、アジア、アフリカ、インド、南米など世界の企業も、ロシア・ウクライナ紛争の影響から身を守るためにできる限りのことをしています。

サプライチェーンリスクの軽減のために実践すべきこと

このように不安定な世界において、企業はどのようにしてサプライチェーンを保護し、混乱のリスクを最小限に抑えることができるのでしょうか。

国際貿易の物流とコンプライアンス課題に直面する企業が実践すべきポイントをいくつかご紹介します。

1. サプライチェーンの脆弱性を特定する

ONESOURCE Global Tradeのシニアプロダクトマネージャーであるフェルナンド・トチーニ・アリアガは、「サプライチェーンが脆弱な企業は、サプライチェーンの弱点を特定し、サプライヤーと協力して生産の分散化や別の地域の代替サプライヤーの確保を行うべき」とアドバイスしています。サプライチェーンを分散化し、多様化することで、柔軟性と回復力を高め、制裁や禁輸、その他予期せぬコンプライアンスの課題によって突然の方向転換を迫られたときに、企業に選択肢を与えることができます。

2. 常時、最新の貿易規制とコンプライアンス要件に対応する

企業は、自社に適用されるすべての貿易規制を常に把握し、自社のビジネスに影響を及ぼす可能性のある最新の制裁措置やその他の公的措置を常に把握しておくことが不可欠です。これは賢明なアプローチであり、高額な罰則や貿易特権の喪失、企業に対するイメージの低下を回避する最も確実な方法です。

膨大な作業ではありますが、サプライチェーンに影響を与える可能性のあるすべての制裁措置、取引禁止対象リスト、新たに追加される禁輸措置やライセンス要件を把握することは、2次・3次サプライヤーも含めて不可欠です。

例えば、外国資産管理局(OFAC)の50%ルールでは、企業は、取引禁止対象とされた人物や当事者が50%以上所有している企業や団体と、その団体自体がリストに載っているかどうかにかかわらず、いかなる関連も持つことができないとされています。新規のサプライヤーと取引する前に、そのサプライヤーが取引禁止対象の当事者と何らかの関係があるかどうかを判断することが重要です。

3. サプライチェーンの課題、プロセス、業務手順に関して社員教育を徹底する

「サプライチェーン、輸出入プロセスに関わる全員が、取引禁止対象者、制裁、禁輸の概念を理解する必要があります」と、アリアガは説明します。さらに、この重要な概念は標準業務手順書(SOP)に記載すべきであり、新しいプロトコルは徹底的に文書化し、社内研修に確実に組み込む必要があります。

4. 自動化を推進し、サプライチェーンのコンプライアンス確保する

現代の国際貿易のガバナンスの複雑さと範囲、そして制裁と規制の変化のスピードを考えると、自動化はコンプライアンスを確保するための最良の方法だと考えられます。ONESOURCE 国際貿易管理ソリューションは、規制に対応して、コスト削減、作業効率化、コンプライアンス遵守を実現するために、貿易実務に特化し、設計されています。

例えば、ONESOURCE Analyzer Suiteは、サプライチェーン担当がコンプライアンスコストとリスクを分析し、代替調達と流通戦略の潜在的な機会を特定することを可能にします。同様に、ONESOURCE Denied Party Screeningは、取引制限人物、制裁、禁輸、および取引禁止対象団体が所有する企業について715以上のグローバルリストを継続的に監視しています。その他、Global Trade Contentなどのツールは、210以上の国や地域における外国貿易規制のコンプライアンスを確保します。

世界貿易の環境が変化し続ける中、製造や物流が途切れることなく、リスクを最小限に抑えるためには、企業はサプライチェーンの課題を管理し、規制に対するコンプライアンスを確保することが不可欠です。それを実現するためには、貿易に特化したツールを活用しつつ、すべてのサプライチェーンが理解し受け入れることができる前述のポイントを実践していくことが重要となります。


Supply Chain Compliance

取引先の審査・調査・管理を行うサプライチェーンコンプライアンス・ソフトウェア

サプライチェーンにおける情報管理の必要性は、かつてないほど高まっています。グローバルサプライチェーンにおける取引企業との連絡、管理、トラッキングを効率的に行い、リスクを特定・軽減し、コンプライアンスを維持する必要があります。

トムソン・ロイターの ONESOURCE Supply Chain Complianceは、サプライチェーン全体の可視性を高め、コンプライアンスを管理し、リスクを軽減するための統合的なソリューションです。

デューデリジェンスと情報収集を力強くサポートするSupply Chain Complianceの詳細はこちら


ビジネスインサイトを購読

業界最新トレンド情報をアップデート

購読する