強化型デューデリジェンスの実践と課題 

企業が強化型デューデリジェンス(EDD)実施手順を完璧に作成し、実施環境を整えても、実際に職場で機能するのでしょうか。新たなデューデリジェンス業務を担当する者の負担と業務の進捗状況を考慮しなければなりません。 

国連の「国際腐敗防止デー」に際し、強化型デューデリジェンスプロトコルに関する問題をご紹介します。 

強化型デューデリジェンス(EDD)の課題

強化型デューデリジェンス(EDD)に関する方針や手続きの実施が不十分だと、政治的な問題のある人物を含む高リスクの顧客を迎え入れてしまったり、逆に、ビジネスに重要であるにもかかわらず高リスクと判断した顧客を、あまりにも多く追い払ってしまったりすることになります。 

すべての企業がEDDのスクリーニングにおいて最適な方法を見つけようと努力している中で、この問題に対する企業の全体的なアプローチを再評価する必要があります。 

パンデミックとその余波は、すべての企業と世界中の人々を混乱させました。ほんの20ヶ月前の好景気が嘘のように消えてしまったり、一方で、たまたま自宅待機を余儀なくされている顧客層に適したビジネスが繁栄した場合もあるでしょう。人々は、会社や店舗の休業や時短営業などに気を取られ、子供の通学などの問題から、ウイルスに感染した家族の心配、隔離生活や様々な生活物資の不足など、COVID-19パンデミックによって引き起こされたあらゆるストレスに悩まされました。 

なぜ今、EDDのプロトコルを更新するのか? 

それは、パンデミック前にはうまくいっていたデューデリジェンス業務が、同じように通用しない可能性があるということです。従業員の入れ替わりや欠勤により、1年前にデューデリジェンスを行っていた専門家が、今は過重労働になっていたり、経験の浅いチームを相手にしていたり、必要以上に無茶な仕事の依頼をしていたりします。 

企業のサプライヤーや顧客、強化型デューデリジェンスの実施者が変わり、ビジネスの進め方が変化すると、(ある企業がそう遠くない過去に経験したように)高リスクの個人を吟味して監督する責任者が、そもそもその人を推薦してビジネスを持ち込んだ人であるということにもなりかねません。リスクを監視する担当者が利益相反に陥らないようにすることは、重要なポイントと言えるでしょう。 

EDDのポリシーや手続きに違反する可能性があるのは、実際に実務にあたる担当者だけではありません。2020年11月、副社長兼機密法担当の肩書きを持つ人物が、銀行のEDDレビューの状況を銀行経営陣と連邦預金保険公社(FDIC)に誤って説明したことで、1万ドルの罰金を支払うことになりました。これは、多額の費用がかかるミスであり、また、結果として当局に「疑わしい取引報告(SARs)」を適切に提出しなかった事例になってしまいました。 

問題を未然に防ぐには 

状況の変化を踏まえ、現在のビジネス環境に照らし合わせて、EDDポリシーと手順を再評価する必要があります。これらのポリシーや手順は、何か問題が起こることを念頭に置いて構成されるべきです。例えば、現在の状況では、不適切な行為が行われたり、発見されなかったり、誰かが指摘しても無視されたりする可能性があります。 

現在は、かつて企業が考えていたよりリスクの高い企業と取引する必要性があることを現実的に認識してください。世界は変化しており、サプライチェーンは破壊され、供給不足が頻発しています。企業がこの非常に破壊的な時代を生き延びるためには、リスク許容度を拡大する必要があるかもしれません。これは、組織のEDDプロトコルをこの新しい現実に適応させる必要があることを意味します。また、特定の企業や企業との関係を監視することによってもたらされるリスクを完全に特定し、理解するためには、より多くのリソースが必要になるかもしれません。また、長年の顧客やビジネスパートナーであっても、パンデミックによる激変を経験し、リスクプロファイルが変化している可能性があることを忘れてはなりません。あなたの組織のEDDプロトコルは、これらの潜在的な新しいリスクを特定することができるでしょうか? 

企業が取り組むべきこと

プロトコルの更新と同時に、組織はデューデリジェンス、顧客および第三者のリスク管理、リスクモニタリングに関する研修を再検討する必要があるでしょう。また、企業がすべきことはいくつかあります。例えば、コンプライアンスに関するメッセージを従業員に頻繁に発信し、不適切な事象を発見した際や、懸念事項の伝え方、注意すべき点、最初の報告が無視された場合の対処法などについて注意喚起することです。さらに、従業員に協力を求め、必要に応じてフォローアップするように促してください。 

今、業績を上げなければならないというプレッシャーにさらされている経営陣が、常に正しい判断ができるわけではありません。組織内で不適切な行動が発見され、是正されるように、十分な保護措置を講じてください。 

確かに、現在の環境はビジネスを行う上で厳しいものです。規制当局や執行機関があなたの事業を調査し始めたら、さらに厳しい状況になるかもしれません。



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