シリコンバレー銀行破綻に伴う、5つの重要な規制要素

シリコンバレー銀行の破綻は金融分野を混乱させ、適切なリスク管理、インサイダー取引、暗号通貨へのエクスポージャーに対する疑問を投げかけました。

シリコンバレー銀行として知られるSVB Financialの破綻はベンチャーキャピタルやテクノロジー業界に衝撃を与えた2008年の金融危機を彷彿とさせます。投資家、規制当局、政府関係者は、銀行の破綻に伴う金融機関の信用失墜や連鎖反応を最小限に抑えることを念頭に置きながら、混乱の収拾に当たっています。

多くの事実が表面化するにつれ、規制当局や政府は銀行内のリスク管理またはコンプライアンスの失敗について調査を進めるでしょう。そして、将来的に新たな規制や規制の変更につながる場合があります。

SVBとその崩壊

SVBは1983年にシリコンバレーで設立され急成長を遂げてきました。その成長は、多くのテクノロジー企業の立ち上げを支援したベンチャーキャピタルやプライベートエクイティ企業との緊密な関係が背景となっているようです。

預金残高は2,090億ドルの米国で16番目に大きな銀行でした。破綻は3月8日深夜、収支補強のために20億ドル以上の資本を調達しようとしたことから始まりました。同社は、米国債と住宅ローン担保証券への投資で18億ドルの損失が発生したため、追加資本が必要だと述べていました。

カリフォルニア州の規制当局に提出された書類によると、SVBは株式が暴落したため必要な資本を調達できなくなり、さらに預金者は翌営業日までに420億ドルという途方もない額を引き出しました。それにより、同行は営業終了時点で9億5800万ドルの現金残高がマイナスになっていました。3月10日(金)カリフォルニア州の銀行規制当局は同行を閉鎖し、連邦預金保険公社(FDIC)を後の資産処分のための管財人に任命しました。

ジャネット・イエレン米財務長官は、CBSニュースの「フェイス・ザ・ネイション」番組で、規制当局と協力して「状況に対処するための適切な政策を立案している」と述べ詳細については明言を避けました。また、預金が全額返済されるべきかという質問にも詳細なコメントを避け、「預金者が抱えるであろう問題は重々承知している。その多くは、国中で人々を雇用している中小企業であり、もちろん重大な懸念事項である」と述べました。

米国の地方銀行やそれ以外への波及が懸念される中、イエレン氏はCBSの取材に対し、「一つの銀行で発生した問題が、健全な他の銀行に影響しないようにしたい」と述べました。

連邦準備制度理事会、FDIC、財務省はすべての預金者を支援すると共同声明を発表しました。「預金者は3月13日(月)からすべての資金にアクセスできるようになり、シリコンバレー銀行の破綻処理に伴う損失が納税者に負担されることはない」と述べたのです。

この資金は新しい銀行定期資金調達プログラムを通じて、すべての預金者の要求に応えるるために連邦準備制度によって銀行に提供されることになります。これとは別に規制当局は、州の認可機関によって閉鎖されたニューヨークのSignature Bankに対し同様の動きを発表しました。

規制当局は、預金者の支援は株主や企業の “救済 “ではなく、”預金者の貯蓄の安全を確保するための必要な措置 “であることを明確にしました。

リスク&コンプライアンスの観点から見た未知の領域とは

SVBが被った損失は、連邦準備制度理事会がインフレ対策として短期金利Fed Fundsを過去1年間に0.25%から4.75%まで引き上げたことによる金利急騰が原因です。金利の上昇により投資損失が発生し、その結果、預金者が資金を引き出して銀行を破綻させることになったのです。

銀行の突然の破綻は、幅広い金融サービス企業にとり規制、コンプライアンス、リスク管理に関する下記のような多くの問題を提起しています。

  • リスク管理 – SVBは昨年8カ月近く最高リスク責任者(CRO)が不在でした。それによってリスク管理や統制の不備につながったかどうかは不明ですが、SVBが過去1年間で予測可能な金利上昇をヘッジしたり、効果的に乗り切ったりすることができなかったことは重大な問題です。

  • 暗号通貨への波及 – SVBの破綻は暗号通貨に直接関連はしませんでしたが、USドルに連動したステーブルコイン「USDC」においてドルペグを失い史上最低水準まで低迷しました。それを支える企業Circle社はSVBへのエクスポージャーにかかわらず、ペグを尊重すると投資家に保証したため、損失のほとんどを回復することが出来ました。Circle社は先週金曜日のツイートで、400億ドルのUSDC準備金のうち33億ドルをSilicon Valley Bankに預けていると述べました。

  • インサイダー取引の可能性 – SVBの最高経営責任者であるグレッグ・ベッカー氏が破綻前の2月27日に360万ドルの株式を売却した理由について、今後規制当局は捜査する可能性があります。

  • 役員報酬の返還 – 役員報酬の返還を要求される可能性があります。その際、どの程度過去にさかのぼって報酬の差し戻しが行われるのかが重要な問題です。いつ、何が判明していたのかによりその対応は違ってきます。

  • ESG批判 – 環境・社会・ガバナンス(ESG)政策は、銀行のESGへの取り組みや、環境・社会へのコミットメントが従来のファイナンシャルリスク管理よりも重要かどうかについて疑問視されています。

米国証券取引委員会(SEC)のゲーリー・ゲンスラー委員長は「ボラティリティと不確実性が高まる中我々SECは市場の安定性を監視し、投資家、資本形成、あるいはより広く市場を揺るがすあらゆる不正行為を特定し、訴追することに特に重点を置いています」と述べました。

また、「個々の企業や個人を問わず、連邦証券法違反を発見した場合は調査し、強制執行を行う」と付け加えました。


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