拡大する法務責任者の影響力と役割

企業の法務責任者の役割は年々変化し、特にコロナ禍において企業の戦略的方向性を示す重要な幹部社員として活躍しました。

企業の最高法務責任者(CLO)は長い間、経営管理職の一人と考えられてきましたが、パンデミックによる世界経済の停滞によりCLOは組織内で新しい役割を担いながら、前例のない未知のビジネスの課題を次々に乗り越えていく中心となりました。

今回の実例は、クライアントスマート社のCEOであるローズ・オーズ氏が、3人のCLOに、経営管理職としての役割、企業の成長と持続性を確保するための取り組み、そして安全を守るための主な役割について話を伺いました。

C-Suiteにおけるビジネスパートナーとして

企業の経営責任者の一人として、CLO は CEO、CFO、その他の C-Suite と「同席」し、企業のリーダーとしての法的洞察力が問われることになります。「法務知識はお金で手に入れることが出来ます」、「CLO がもたらす最も重要なスキルは、健全なビジネス判断です」フォーチュン 150 のエネルギー企業、デューク・エナジー社の取締役副社長、最高法務責任者およびコーポレート・セクレタリーのコドウ・ガーテイ・タゴエ氏は述べています。

世界80カ国で不動産サービスを展開するジョーンズ・ラング・ラサール(JLL)のグローバル最高法務責任者兼コーポレート・セクレタリーであるアラン・ツェ氏も同意見です、「会議での私の役割は、法律について説明することではありません。戦略的な目標に焦点を当て、大局的な質問をし、問題を解決することです」と述べています。

世界50カ国の企業、都市、政府機関と取引し、デザイン、エンジニアリング、テクノロジー主導のソリューションを提供するジェイコブス・エンジニアリング・グループの上級副社長兼最高法務・総務責任者のジョアン・カルーソ氏は、法務スキルは後回しにされると説明します。「私の役割は、戦略を理解し、その実行を支援することだけではなく、構築にも携わることです」と述べています。

デューク・エナジー社 
コドウ・ガーテイ・タゴエ氏

役員室で信頼されるアドバイザーとして

信頼と透明性に基づく関係をCLOと取締役会の間に確立することは、不可欠です。取締役会は、受託者責任と監督義務の遂行に不可欠な情報を提供するために CLO を頼りにしています。「取締役会は、私が会社、業界、競合状況について積極的にアドバイスを提供することを期待しています」とガーテイ・タゴエ氏は述べています。「法的リスクとなる前に問題を特定することを期待されているのです。そして、急速に変化し、時には混乱もある規制の状況について、取締役会を教育することが、今ほど重要な時期はないのです」

環境・社会・ガバナンス(ESG)分野はその代表的な例です。コーポレートセクレタリーとして、ガーティー・タゴエ氏はデューク・エナジーの取締役会が常にこの重要な分野における取り組みについて、最新の情報を得られるようにし、会社の気候変動への取り組みや目標に対する進捗状況を更新、さらに正式に取締役会に報告しています。「当社の長期的な価値の管理者として、取締役会の環境監視の役割は非常に重要です。私たちは2050年までに炭素排出量をゼロにすることを目指しています。取締役会は、経営陣と私に、それが何を意味し、どのように達成できるのかを説明するよう託しています」とガーティー・タゴエ氏は述べています。

同様に、カルーソ氏とツェ氏は、ESGに関連するすべての重要な開発について、企業の取締役会が常に把握できるようにしています。

ジェイコブス・エンジニアリング・グループ 
ジョアン・カルーソ氏

企業倫理の守護神

CLO はビジネスの成長を促進することが期待されているますが、企業が最高の倫理基準で行動する義務も負っています。これは、ゼネラル・エレクトリック社の元顧問弁護士、ベンジャミン・W・ハイネマン・ジュニア氏が書いた有名な言葉に象徴されています。「弁護士・法律家にとって、最初の質問は『それは合法か』です。しかし、究極の疑問は、”それは正しいのか “です」

デューク・エナジー社にとって、正しいことを行うという評判は、「株主、従業員、顧客、サービスを提供する地域社会を含むステークホルダーとの優れた関係」を維持する基盤です。また、エネルギーのように規制の厳しい業界では、連邦・州レベルの規制当局と有益な関係を築くためには信頼と透明性が不可欠です、とガーティー・タゴエ氏は述べています。

ジョーンズ・ラング・ラサール社(JLL)
アラン・ツェ氏

法律部門のリーダー、そしてその先に

CLOの影響力の拡大は、企業法務部以外の部門が直属となるケースが増加していることでも裏付けられています。Association of Corporate Counselの2022年最高法務責任者調査によると、CLOの88%がコンプライアンス、54%がコーポレートセクレタリーの役割、50%近くが倫理とプライバシー、25%がESG、そして24%がビジネスリスクを統括しています。興味深いことに、2020年にこの傾向が急激に上向きになったこともわかっています。

ガーティ・タゴエ氏、ツェ氏、カルーソ氏の3人は、自分たちの責任範囲が広がっているのは、任務上重要な分野になってきたことの現れであると考えています。例えば、デューク・エナジー社では、内部監査と倫理・コンプライアンスチームがガーティー・タゴエ氏に報告します。ジェイコブズでは、グローバルセキュリティチームとセールスセンターオブエクセレンスチームがカルーソ氏に、JLLでは、ツェ氏が事業継続とリスクチームを統括しています。組織的な観点からも、こうした機能をCLOに任せることによって、部門間の連携強化の必要を明確にしています。

最後に

最高法務責任者(CLO)は、執行役員室や取締役会の席で、リーダー、戦略家、アドバイザーとしてその影響力を高めています。法律部門以外の戦略的に重要な部門に権限を拡大することは、今後も続く傾向です。その影響範囲は広がり、ビジネスへの影響力は深まるばかりです。


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