
2026年7月28日、みずほ銀行、フォーティエンスコンサルティング、損害保険ジャパン、SOMPOリスクマネジメントの4社が業務提携により推進している「サプライチェーン途絶リスクマネジメント支援」に、新たにトムソン・ロイターと日立製作所が支援メンバーとして参画したことが発表されました。(注1
当ニュースリリースにおいて、「サプライチェーン途絶リスク」とは、原材料の調達から製品・商品の製造、需給管理、物流、販売に至るサプライチェーンの一部工程が、災害や紛争、規制等を原因として停止し、供給が滞ることと定義されています。
本取り組みは、企業におけるこれらリスクに対する分析・評価、対策方針・目標の策定、具体施策の立案と実行までを包括的に支援するもので、2024年11月にフォーティエンスコンサルティングとみずほ銀行の業務提携により開始され、段階的に提携企業が追加されています。(注1、注2、注3
その背景には、地政学リスクの高まりに伴い、制裁や関税などの外部環境が急激に変化しており、リアルタイムでの情報把握が求められているという課題認識があります。また経済のグローバル化に伴うサプライチェーンの複雑化により、リスクが潜在する箇所を把握することが難しくなっているという点も挙げられます。(注1
こうした変化の渦中で、トムソン・ロイターはどのような役割を担い、何を目指しているのでしょうか。同社執行役員 コーポレートビジネス本部 本部長の橋爪整氏にお話を伺いました。
制裁・関税情報の専門性を生かし企業を支援
──まず、橋爪氏ご自身は、現在のサプライチェーン途絶リスクを取り巻く環境をどのように見ていますか。
「サプライチェーン途絶リスクは、企業の経営リスクに直結します。海外進出やビジネスの多角化の推進と並行して、コストの削減と高品質・短納期の製造を実現するためのサプライチェーンマネジメント・高度化は、これまでにも企業は取り組んできました。」
「ただ、ここ数年で急速に高まり続ける地政学リスクへの更なる対応は不可避であり、そうした外的要因を踏まえたサプライチェーン途絶リスクを自社の最重要経営課題の1つとして捉え、対応できるか否かは、企業の生き残りを大きく左右すると考えます。」
橋爪氏は、同社がこの取り組みに加わった経緯について、次のように説明します。
「サプライチェーン途絶リスクを鑑みた時、日々刻々と変化する法規制や制裁リストへの対応は、グローバルで信頼できる一次情報を持つトムソン・ロイターが高いレベルで支援できる分野だと考えているためです。」
実際、今回の取り組みでは6社がそれぞれの強みを活かし、企業におけるサプライチェーン途絶リスクに対する分析・評価、対策方針・目標の策定、具体施策の立案、実行に至るまで連携して支援することが示されています。(注1
| 企業 | 役割 |
| みずほ銀行 | 企業の経営課題であるサプライチェーン途絶リスクに係る全般的なアドバイス、資金管理、決済、貿易金融等についての知見および関連情報を提供 |
| フォーティエンスコンサルティング株式会社(旧株式会社クニエ) | 自然災害やパンデミック、サイバー攻撃、地政学リスク等による、調達から生産、物流、販売に至るまでの一連のサプライチェーンにおける途絶影響の分析・対応策検討を支援 |
| 損害保険ジャパン株式会社 | 損害保険事業を通じて培ってきた知見を活かし、サプライチェーン途絶リスクに関する企業のリスクマネジメントについて、知見および関連情報を提供 |
| SOMPOリスクマネジメント株式会社 | サプライチェーンを取り巻く多種多様なリスクを、定量的な評価により可視化するリスクスコアリング機能を提供 |
| トムソン・ロイター株式会社 | 輸出管理ならびに関税マネジメントを踏まえた貿易業務の高度化を、最新法規制コンテンツとSaaS x AIテクノロジーで支援 |
| 株式会社日立製作所 | AIを活用したサプライヤー拠点推定技術により、サプライチェーン途絶リスクの可視化・分析を支援。また、本技術を用いたサプライチェーンレジリエンスの高度化に向けた取り組みを加速 |
| 共通 | お取引先への相互の紹介 |
出典:『サプライチェーン途絶リスクマネジメント支援』の第三弾として、新たにトムソン・ロイター、日立製作所が支援メンバーとして参画」(2026年7月28日)|株式会社みずほ銀行ほか
「点」ではなく「線」でつなぐ、6社のワンストップ支援
──今回、6社それぞれが異なる専門性を持ち寄る形になっています。この「ワンストップでの包括的支援」は、企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。
「企業が欲しいのは個別のソリューションではなく、課題の発見から対策の実行までを伴走してくれるパートナーです。今回の連携は、その実現を目指したものです。実際、企業を取り巻くリスクは、地政学、サプライチェーン、貿易管理、災害、保険、資金調達など複数の領域にまたがっており、もはや一つの専門領域だけで解決できるものではなくなっています。今回の取り組みの大きな価値は、それぞれの分野で強みを持つ企業が連携し、お客様が直面する課題に対してワンストップで支援できる点にあると考えています。」

輸出管理の最前線ならびに関税対策を、グローバルな一次情報で支える
──今回の枠組みにおいて、トムソン・ロイターはどのような役割を担うのでしょうか。
「複雑な法規制や制裁リストへの対応といった、輸出管理において最も大事な業務の1つを、グローバル観点かつ継続的に支援します。」
「制裁対象企業や個人のリストは頻繁に更新されており、ここ数年で、制裁・輸出管理リストに対するスクリーニング業務は、もはや手作業だけで対応できるレベルを超えています。さらに、地政学リスクの高まりを背景に、制裁対象企業や規制対象者の追加指定が頻繁に行われるようになり、取引先やサプライヤーが新たに規制対象となっていないかを継続的にモニタリングすることが求められています。」
「加えて、規制変更への迅速な対応も重要です。例えば、2026年11月10日に適用開始予定のBIS Affiliates Rule(通称:BIS 50%ルール)では、Entity List等の掲載企業が直接または間接的に50%以上保有する関連会社についても規制対象となるため、企業は自社のサプライチェーンや取引先の資本関係をこれまで以上に正確に把握する必要があります。単なるリスト照合だけでは十分ではなく、継続的なスクリーニングと企業グループ構造の可視化が、コンプライアンス対応の重要な要素となっています。」
「制裁リストは常にアップデートされており、企業の週次スクリーニングを待ってくれるわけではありません。」
この即時性こそが顧客への価値の源泉だと同氏は続けます。
「制裁・関税情報の即時性は、企業がリスクを事後に知るのではなく、事前に察知して対応するための時間を生み出すこと、経営判断のスピードを速めることにつながるため、価値があります。」
実際に、トムソン・ロイターが提供するスクリーニングソリューションを活用いただくお客様からは、以下のようなコメントが挙げられています。
「トムソン・ロイターのシステムを活用して精度の高い自動スクリーニングを行うとともに、自動化により確保した時間を活かしてリスクベースアプローチに基づいた新たな施策に取り組み、コンプライアンス基盤の更なる強化に努めていきたい。」
事例記事のつづきはこちら:懸念取引先照合サービス「ONESOURCE Denied Party Screening」導入事例 | 日本 | トムソン・ロイター
情報提供から、意思決定支援へ
ここまで、制裁・関税情報を迅速に把握することの重要性や、トムソン・ロイターが今回の枠組みで担う役割について聞いてきました。一方で、サプライチェーン途絶リスクへの対応では、情報を把握するだけでなく、その情報をもとに影響を見極め、関係部門と連携しながら対応方針を検討・実行していく流れをつくることが重要になります。 (注1、注2
では、トムソン・ロイターは今後、こうした情報提供をどのように意思決定支援へと発展させていくのでしょうか。橋爪氏に聞きました。
──今後、トムソン・ロイターとしてこの取り組みをどのように発展させていきたいとお考えですか。目標や意気込みがあれば教えてください。
「私たちは今回の取り組みを、単なる制裁リストや関税情報の提供にとどまらないものへ発展させていきたいと考えています。地政学リスクの高まりやサプライチェーンの複雑化によって、企業が直面する貿易コンプライアンスの課題は、新たな局面を迎えています。その中でトムソン・ロイターは、世界中の法制度・規制・制裁・関税情報を提供するだけでなく、それらの情報をお客様の意思決定に活用できる形に変えていく役割を担いたいと考えています。」
なお、本取り組み自体の枠組みも今後さらに広がる可能性があります。外部環境の不確実性が高まる中、サプライチェーン途絶リスクの検討は複雑さを増しており、このような難局には異なる専門性を有する企業が連携して立ち向かうことが必要であるといいます。
この6社以外の領域の専門性との融合につながる新たな提携も視野に、サプライチェーン途絶リスク対応に直面している企業への貢献をこれまで以上に進めていく方針が示されています。(注1
「先手を打てる環境」を共創する
──この取り組みに携わってこられた率直な感想や、印象に残っていることを教えてください。
「これまで、基本的には自社でのみこうしたサプライチェーン途絶リスク対応を支援してきましたが、今回の連合への参画によって、各社の強みを踏まえて更に厚みを持たせた提案ができることを大変嬉しく感じております。実際、定例会に参加することで、お客様の課題や懸念をワイドに吸い上げ、自社で対応しきれなかった部分に対しても他のメンバー各社がカバーしてくれることに大きな心強さを感じております。」
最後に、サプライチェーンリスクへの対応に課題を感じている企業の担当者の方へのメッセージを伺いました。
「今後は、今回ご一緒する各社との連携も深めながら、リスクの把握、影響分析、対策立案、実行支援までをよりシームレスにつなげていきたいと考えています。企業がリスク発生後に対応するのではなく、変化の兆しを早い段階で捉え、先手を打てる環境づくりに貢献していきたいと思います。」
ONESOURCE Global Tradeで貿易コンプライアンス業務を支援
トムソン・ロイターのONESOURCE Global Tradeは、輸出管理、制裁スクリーニング、関税マネジメントなど、グローバルな貿易コンプライアンス業務の高度化を支援するソリューションです。最新の法規制コンテンツとテクノロジーを活用し、取引先確認や規制対応、関税に関する業務の効率化とリスク低減に貢献します。
安全保障貿易管理ソリューション 「ONESOURCE Global Trade – Export Compliance」
グローバル秩序の不安定化が増す中、各国の規則を遵守し、安全保障貿易管理の高度化を実現することは容易ではありません。
日本企業の多くは、具体的な問題点や見直すべき範囲を明確にできず、リスクがどこに存在し、どの範囲で発生しているのかが把握できないまま、リスクに晒された状態が続いています。リスクの可視化と共有化を図るためには、経営層や関係部署の連携が不可欠です。また、危機意識の喚起や当事者意識の醸成も重要です。
トムソン・ロイターのONESOURCE Global Tradeは、広範な情報網羅とモニタリング体制を備えています。220以上の国や地域の貿易関連情報を網羅し、約190名以上の専門スタッフが365日体制で制度のモニタリングを行うなど、常に最新の規制や制度変更に対応し、ビジネス上のリスクを最小限に抑えることができます。
また、輸出管理プロセスの観点から、 該非判定や取引審査、輸出許可の管理におけるミスや漏れのリスクを軽減し、安全保障貿易管理業務の効率化に貢献します。 ユーザーは、見積もりから受注、船積み手続きが終わるまでの輸出管理プロセスを、一つのシステム内にまとめられた情報から整備そして実行することができます。
既存ERPシステムとの統合、各事業形態やガバナンスポリシーに合わせたカスタマイズ提案も可能です。是非一度、トムソン・ロイター「ONESOURCE Global Trade」の魅力を感じてみてください。
参考情報
注1:ニュースリリース「『サプライチェーン途絶リスクマネジメント支援』の第三弾として、新たにトムソン・ロイター、日立製作所が支援メンバーとして参画」(2026年7月28日)|株式会社みずほ銀行ほか
注3:ニュースリリース「クニエとみずほ銀行、『サプライチェーン途絶リスクマネジメント支援』に係る業務提携開始」(2024年11月18日)|株式会社みずほ銀行、株式会社クニエ