バイデン政権による米国の医薬品サプライチェーン保護

サプライチェーン保護を本格化。既存の脆弱性に対処する一連の政策提言を発表

ホワイトハウス、米国保健福祉省(HHS)の事前準備・対応担当次官補局(ASPR)、米国食品医薬品局(FDA)は、米国の医薬品サプライチェーンの脆弱性に対処するための一連の政策提言を発表しました。

プレスリリースで、FDA長官代行、ジャネット・ウッドコックは次のように述べています。「昨年、米国では医療従事者用N95防護マスクやエッセンシャルワーカー等を保護するためのマスクの広範かつ顕著な不足が見られました。また毎年、我々は医薬品や、生理食塩水のような医療用品の不足を目の当たりにしています」「医薬品サプライチェーンは、米国の国家医療保障と経済的繁栄において、極めて重要な役割を果たします。ですが新型コロナウィルス感染症の世界的流行によって、この国のサプライチェーンの脆弱さが露呈しました。今こそ、米国の医薬品サプライチェーンの安全性とレジリエンス(回復力)を確保しなければなりません」

特に懸念されるのは、ジェネリック医薬品の主要成分である医薬品有効成分(API)です。ジェネリック医薬品は、米国の全処方薬の90%を占めています。

海外サプライチェーンへの依存を軽減

ホワイトハウスのプレスリリースによると、米国は「さまざまな主要医薬品やAPIを、依然として輸入に大きく依存している」とのことです。ジェネリック医薬品のAPI生産拠点の約87%が海外にあり、中国とインドが「サプライチェーンのかなりの部分」を支配しています。これらの海外拠点は「過去10年間で数兆ドルのコスト削減」に貢献しましたが、海外拠点に依存しているため、米国の医療制度は必須医薬品の不足に対する脆弱性を抱えています。

国内でのAPI生産を拡大することで、とくに公衆衛生上のニーズが高まる時期に、不足している医薬品の世界的なサプライチェーンへの依存を軽減することができます。 HHSは、米国救済計画における国防生産法に配分された予算のうち約6,000万ドルを初期投資し、医薬品有効成分の国内生産能力向上のための新たなプラットフォーム技術を開発すると発表しました。

米国のサプライチェーンの脆弱性に関するFDAやASPRなどの共同報告書によると、医薬品サプライチェーンは複雑で、全世界に及んでいます。また、各種の市場要因の影響を強く受けており、それが医薬品やAPI、およびAPIの主要な出発原料の海外依存度を高める原因となっています。

米国の医薬品サプライチェーンの安全性を確保するために、この報告書では4つの焦点となる分野を特定しています。

  • 国内生産の強化および国際協力の推進
  • サプライチェーンのレジリエンス強化のための、革新的な製造プロセスや生産技術を確立する研究開発の推進
  • 一貫した信頼性の高い医薬品製造と品質性能を確保するための堅牢で成熟した品質管理の構築
  • サプライチェーンのレジリエンス向上のためのデータ活用

報告書はまた、「新型コロナウィルス感染症の世界的流行は、米国の公衆衛生産業基盤におけるレジリエンスの決定的な重要性を明らかにした」と述べています。米国の政府機関は、「より広範なパンデミック下のサプライチェーンにおけるレジリエンス課題」への取り組みを継続しており、その一環として、長期的レジリエンスに向けた目標と取り組みに対する戦略が今月策定される見込みです。

政府機関は、医薬品サプライチェーンの強化には、国防生産法などの既存の法的枠組みを活用する必要があると述べています。さらに、目標達成には官民協業が必要であるとの認識の下、継続的な改善、事業継続計画、サプライチェーン問題の早期発見に焦点を当てたシステムを運用するメーカーを評価し、報いるインセンティブを提案しています。

製造技術への資金援助

医薬品サプライチェーンのさらなるレジリエンス向上を支援するため、バイデン政権は連邦政府機関に対し、「主要な医薬品や成分の生産拡大に向けた先端製造技術に対する資金援助の拡大(支持療法用の輸液、API、最終剤形の医薬品の製造における、従来の製造技術およびオンデマンド製造技術の双方の活用事例を含む)」を奨励しています。新型コロナウィルスのワクチン開発と提供を促進する官民連携を見ても明らかなように、連邦政府はこれらの重要な製品に対する「市場形成能力」を有しています。

バイデン政権はまた、HHSに対し、議会から新たな権限を取得するよう要請しています。これはHHSに対し、施設別生産量やAPIの調達状況を調査し、米国で販売されている全ての医薬品のAPIおよび最終剤形について原料の特定を要求できる権限を与えることで、医薬品サプライチェーンの透明性を向上させるのが狙いです。

この報告書と提言は、バイデン大統領が2月24日に発令した、米国の重要なサプライチェーンの保護を目的とする大統領令14017に対応したものです。

バイデン政権はまた、「半導体製造や先端パッケージング」、「電気自動車用等の大容量電池」、「希少鉱物および重要材料」、「医薬品およびAPI」の4つの重要品目に焦点を当てたサプライチェーン混乱タスクフォースを発表しています。

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