法人税データを管理するエコシステムの構築法

人材不足が懸念される中、税務担当者はまず自社のデータについて把握し、その課題にどう取り組むかを考える必要があります。

トムソン・ロイター研究所の「2022年法人税務部門の現状報告」によると、法人税務部門の責任者にとっての最大の懸念事項は、税制改革や規制の変化への対応、人材の育成、実効性の向上でした。

したがって、KPMGが最近発表した税務担当者を対象とした調査でも、こうした懸念が解消されていないのは当然と言えます。実際、税務責任者の50%近くが人材の確保に苦戦していると報告しており、60%以上が米国や国際的な規制の変更(例:BEPSやPillar 2)が税務に大きな影響を与えるとみています。

データについて考える

税務の課題を解決するテクノロジーやその活用方法について議論する前に、まずデータの状況把握が必要です。法人税部門は、組織全体から大量のデータを集めている数少ない部門の一つですが、データ収集に多大な労力を要しています。データ収集の改善は課題となっています。

KPMGによると、税務データの問題は「税務部門におけるコンプライアンス・プランニングと機会管理を効率的かつ効果的にサポートするためのデータを特定、収集、活用できないこと」と認識されています。

多くの税務部門が抱えている問題は、下記のようなものになります。

・規制の変更に対応し、規制当局に情報を迅速に提供
・データ収集
・データの質を判断し、現在のテクノロジーに限界があるかどうかを評価

企業の税務部門は、これらの課題を解決するためのエコシステムを構築することで、用途に合ったデータの処理を可能とする再現性の高い方法を作成することができます。データエコシステムとは、多数のソースからのデータを組み合わせ、処理されたデータを有効活用することで価値を構築するプラットフォームのことです。データエコシステムという言葉の使用は、技術的な用語として使われることが多く、IT部門に属することがほとんどです。しかし、税務部門は、技術的ではないものの、非常に効率の良いエコシステムを構築することができます。( 勿論、税務部門がIT部門と連携する必要がないと言っているわけではありません。)

エコシステムに必要なピースとは?

データのエコシステムには、データソース、データ抽出、データストレージ、データ分析の4つの中心的な構成要素があると一般的には言われています。これらの用語は、企業の税務部門で使用する場合、次のように指定することができます。

データソース

税務部門は、コンプライアンス業務、戦略的な経営判断、会社へのアドバイスに必要な情報のリストをカタログ化します。次に、各情報がどこに存在し、そのデータが構造化されているのか非構造化なのかを判断します。構造化データとは、標準化されたフォーマットで、明確に定義された構造を持ち、データモデルに準拠し、一貫した順序を持ち、簡単にアクセスできるデータです。一方、非構造化データとは、構造化されたデータベース形式に保存されていないデータセット(典型的な大規模ファイルの集合体)で、多くの場合、人手による生成が必要とされます。

データ抽出

さまざまなデータが存在する場所とデータの形式を決定した後、いつ、どのようにこの情報にアクセスするかという計画を立てる必要があります。必要な情報をタイムリーに提供するために、優先順位を決めておく必要があります。このステップでは、データの管理方法についても検討する必要があります。例えば、データが非構造化であるためダウンロードする場合、部門はアップロードする場所や使用方法に応じて最適な形式を判断する必要があります。データが構造化されている場合(ERPやCRMにある場合)、部門はデータを税務チームが分析できる形式に移動するための最適な方法を確認する必要があります。

データストレージ

収集したデータをどこにどのように保存するかを決めることは、データエコシステムを確立するための次のステップです。特に特定の部署から頻繁に情報を収集する場合は、この機会に複製可能なシステムを構築し、使用することが理想的です。

データ分析

税務チームはデータを分析し、業務を遂行する準備が整いました。しかし、もしかしたら、スキルアップが必要かもしれません。情報に素早くアクセスし、それを理解し、アウトプットを提供する能力は、よりスマートに仕事をするための鍵となり得ますが、それには専門的なトレーニングや人材の確保が必要です。

データのエコシステムを構築することで税務部門のリーダーは、IT部門の担当者とともに、税務部門の機能を強化するためにどのようなテクノロジーが必要かをしっかりと議論することができるようになりました。データのエコシステムによって、ITチームは、税務グループにとって何が問題なのか、税務部門が最高のレベルで機能するためにはどのようなテクノロジーや人材への投資が必要なのか、といった明確なマップを把握することができます。


ONESOURCE BEPS Action Manager

標準化された持続可能なグローバル コンプライアンス プロセスの基盤

税務書類と報告書の作成にかつてないレベルの透明性をもたらします。この透明性は世界中の税務当局の新たなベンチマークとなります。

OECD の BEPS 提言において最も複雑な要件の国別 (CbC) 報告書要件では、初の試みとして、税務書類にグローバルな基準を一貫して適用することを求めています。

およそ 100 か国において、OECD の BEPS 提言に合わせた移転価格規則を盛り込んだ法律やその他のガイダンスがすでに導入されています。このため、現地要件の把握と遵守は、私たちが現在直面する中心的な課題の 1 つと言えます。

BEPS関連の法整備が進む日本で税務調査リスクを軽減するには、税務ガバナンスと管理を確立して、精査に耐える報告書を提出することが唯一の手段です。 

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