ESGの二極化・政治化を乗り切るには

ESGをめぐる議論が政治化、極論化する中、企業はどのようにすれば株主・投資家に利益をもたらすことに集中できるでしょうか。

グラント・ソントン社の ESG & サステナビリティ担当マネージング・ディレクターであるジョン・フリードマン氏は、2023 年の企業における課題のトップ 3 の一つは、環境、社会、ガバナンス(ESG)問題をいかにして非政治化するかであると述べました。この課題は業界や部門を問わず存在し、法律業界も無関係ではないと付け加えました。

実際、法律事務所は、最近互いに無関係な問題で対立するクライアントを代理する場合があり、慎重な作業が必要であると述べています。このような状況を表すと「企業の政治的責任」であり、今起こっている特定の問題に対して企業の立場を明確にすることです。

法律事務所サステナビリティ・ネットワークの元エグゼクティブ・ディレクターで、ボーゲイト・リーガルESGインパクトのパートナーであるガヤトリ・ジョシ氏は、法律事務所やその他の法律団体が直面している企業の政治的責任を巡る圧力は2023年に強まると見ていると述べ、すでに起きている証拠として、ロシアのウクライナ侵攻に対する多くの法律事務所の2022年初の対応を挙げています。

ある法律事務所のサステナビリティ担当者は、大手のクライアントの中には、公の声明に同意するよう求めてくるところもあるとコメントしています。

もう一つは、法律事務所が感じているクライアントからの圧力です。クライアントはサプライヤーがある問題に対して同じ側に立つことを望んでいます。ある法律事務所のサステナビリティ担当者は、大手のクライアントの中には、る公の声明に同意するようサプライヤーに求めてくるところもあるとコメントしています。

また、従業員グループとクライアントの間で対立する可能性のある意見をどのように調整するかという問題もあります。例えば、ある法律事務所では、従業員グループが熱心に二酸化炭素排出量の削減を主張する一方で、化石燃料産業の企業の代理人として取引を行っている場合があります。

具体的な状況がどうであれ、価値観の一致を求めるステークホルダーからの圧力は高まっており、すぐにその流れが変わることはないでしょう。企業は賢く対応する必要があり、多くの企業がこれらのベストプラクティスの戦略を使用しています。

政治化するESG課題を解決する方法

ESGをビジネス効率性の一部として捉え直す – ESGはビジネスに効率的に寄与することを証明する必要があります。多くの点でESGの非政治化は、企業のリスクと機会の視野を広げようとするSWOT分析の強化につながります。

2019年、アメリカの大手企業の最高経営責任者(CEO)の団体であるビジネス・ラウンドテーブルは、181人のCEOが署名した公開声明の中で、企業のリーダーは顧客、従業員、サプライヤー、地域社会、株主などすべてのステークホルダーに利益をもたらす方法で企業を運営することに尽力すべきと企業の目的を再定義しました。

株主価値主義からステークホルダー資本主義への転換は、1970年代から続いていた株主優先主義から企業の目的を拡大するものであり、重要な意味を持つものでした。

今日、ステークホルダー資本主義は多くの点でESGと類似しています。確かに、ESGやサステナビリティという言葉が注目されているかもしれませんが、基本的には、企業が正式なESG戦略を持っているかどうかにかかわらず、業績、成功、効率、効果に関するステークホルダー間のビジネス基準は確立されています。

ステークホルダーの声を聞き、企業価値に合う対応をする

今後も茨の道を進むことは続くでしょうし、おそらくさらにビジネスにおいてのESG問題が不安定になることを認識しておいて下さい。最善の方法は、個々のステークホルダーと真摯に向き合うことです。

「私が行う指導は、ESGの問題が誰かにどのような影響を与え、それに対応するアクションプランは何かということに関連付けることです」とジョシ氏は言います。クライアントがたまたま対立の立場側にいたとしても、関係者グループに対してその問題が重要であることを伝え、直接フォローアップしていることを評価するでしょう。

ESGの個々の要素を見ると、支持しない理由を実際に見つけるのは非常に困難です。

例えば、ある法律事務所のリーダーは最近、中絶の権利を連邦レベルで事実上無効化したドブス判決の後、戦術をどのように使ったかを話してくれました。その法律事務所では、若手社員が公の立場を取るよう即座に働きかけました。ドブス事件では公的な立場を取らなかったものの、重要なステークホルダーである若手社員からのフィードバックには、さまざまな方法で真摯に対応しました。

もし、クライアントが当社の対応に不満を表明した場合、当社は、質の高い人材に大きく依存する雇用主としての価値観に合致していることを主張することができます。そのために、従業員の意見に積極的に耳を傾けるケア文化を提供することを目指します。特定のクライアントは、法律事務所の行為に同意しないかもしれませんが、法律事務所が従業員をサポートし、重要な人材を引き付け、維持し続けるというコミットメントの一環として、耳を傾け、対応したという事実を尊重することができます。

ESGをめぐる対立は実際に存在し、多くの場合、それは逆風となっています。温室効果ガス削減やコーポレートガバナンスなど特定の課題を検討することは、不透明な状況を打破する効果的な方法となり得ます。実際に、気候変動リスクや、より良いビジネスパフォーマンスを生み出すための多様性の必要性については、一般的に受け入れられてきています。

「風説の流布が起きている」と、ベンチマークESGのCEOであるR・ムクンド氏は言います。「しかし、ESGの個々の要素からは支持しない理由を見つけるのは非常に困難です」と述べています。


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