『アジア企業の国際貿易に関する10の発見』パネルディスカッションより
サプライチェーンの混乱は、透明性の欠如や複雑に変化する規制環境以上にアジアの国際貿易における最大の障壁であると考えられています。 こうした調査結果がトムソン・ロイターの『アジア企業の国際貿易に関する10の発見』レポートで発表され、さらに3名の専門家による最新のアジア貿易に関するパネルディスカッションが実施されました。
KPMGのTrade & Customsパートナーであるレオニー・フェレッター氏は、パンデミックによって引き起こされたサプライチェーンの混乱は、前例のない状況ではありながらも、おそらく短期的なものだと考えています。
「いつかこの混乱は収まり、サプライチェーンは正常な状態に戻るでしょう。」しかしフェレッター氏は次のように続けます。「しかしながら、貿易の複雑さをめぐる規制上の障壁や問題は今後も続くことが予想されます。」
購買者の選好の変化がサプライチェーンに影響
ハーレーダビッドソン社のトレードコンプライアンスディレクター、シャノン・ブライアント氏は、混乱が続く現在の状況を楽観的には捉えていません。
「供給と需要、そして人々の好みは明確に変化しました。お客様が購入しているものと、その数量には違いがあります」とシャノン氏は言います。
「パンデミックが収束し、サプライチェーンの問題もそれに伴って解決されることを願っています。しかし、人々の行動の変化は、私たちが考えるよりも長く波及するのではないでしょうか。」
対応が必要な弱点
パンデミックだけがすべての混乱の原因ではありませんが、サプライチェーンに内在する広範な脆弱性がパンデミックによって明らかになりました。これを受け、アジアを拠点とする企業は一歩距離を取って、サプライチェーン戦略を見直すようになりました。
『アジア企業の国際貿易に関する10の発見』によると、パンデミック前に多様化したサプライネットワークを運用していたのは、アジアの5つの企業のうち1社のみでした。 パンデミック後には、調査の対象となった200人の経営幹部の2/3が、多様化を利用してサプライチェーンのレジリエンス(復元力)の構築を図りたいと回答しました。そして回答者の多くがこの多様性を長期的に維持する意向を示しています。
貿易コンプライアンスが注目される理由
また、大企業が複数の法域において急速に変化する規制への違反による損失と信用に対する問題解決に取り組む中、貿易コンプライアンスも注目を集めています。
シンガポール通商産業省主席貿易スペシャリストのエリザベス・チェリア氏によると、「多くの企業では、貿易コンプライアンスに対する十分な認識と配慮がなされていません。」
「多くの場合、会計士や物流担当者は、各自の業務をこなしながらコンプライアンス規制がどのようなものなのか把握することで精一杯です。」と、述べています。
チェリア氏は、貿易コンプライアンスが最重要課題となり、対策が急がれる理由を次のように説明しています。「それほど昔の話ではありませんが、企業がまだ1つの国から資源を供給していた頃は、1つのゾーンを管理するだけよく、非常にシンプルなものでした。」
「しかし、グローバル化が進み、さまざまな場所から部品が持ち込まれ、これが1つの地域で組み立てられるようになり、現在ではより多くの規制を意識する必要があります。」
コンプライアンスに関する知識や専門性の重要性を考慮しなければ、企業はリスクを負うことになる、と同氏は警告しています。
「コンプライアンスに十分な注意を払わないと、供給不足が生じたときにサプライチェーンは混乱に陥り、企業は苦境に立たされることになります。」
サプライチェーンにおける透明性の実現
危機的状況に陥ることで、明らかになることがあるとシャノン氏は説明します。
「以前から継続的な供給にはリスクがあることは分かっていましたが、可能性は低いと考えられていました。しかし今では、各社のリスクマップの中でより広い範囲を占める問題になっています。」
「製造業者が認識するサプライチェーンの変革は、いつかは実現させるべきものでした。パンデミックによるサプライチェーンの混乱状態から生まれたビジネスケースを、まさに今、変革へと進めるべきなのです。」
「テクノロジーへ投資し、テクノロジーの利用から見えてくるものは、上流部門の管理に改善をもたらし、新たなリスクと業界のトレンドへの認識を高めるのに役立つでしょう。」
ビジネスの主導権を握り、時代を先行するには?
今こそ、サプライチェーンを変革し、貿易の真の変化に影響を与える時なのです。