グローバルサプライチェーンがコロナ禍で習得したリスク管理対策

グローバルサプライチェーンが将来起こりうるリスクに備える上で、コロナ禍から得た教訓や、期せずして実施することになった方針転換は、非常に重要な役割を果たしたと言えるでしょう。

コロナ禍の教訓

2020年をサプライチェーンに関連する相次ぐ脅威の始まりの年とするのは少々強引かもしれません。コロナ禍は、全世界に大きな衝撃を与えた出来事でした。とはいえ、10年以内に少なくとも更に2つの危機が到来するとも言われており、また、言うまでもなく、中国のロックダウンの継続の影響で再び危機がぶり返されたりと、世界的な混乱の周期は継続しており、パンデミックが完全に収束したわけではありません。継続している課題を含め、これらの課題を乗り切る鍵は、過去数年間に学んだ教訓にあるのかもしれません。

グローバル・サプライチェーンが直面している課題をより深く理解するために、グローバル・サプライチェーンのロジスティクスとテクノロジーを手がけるフラット・ワールド・グローバル・ソリューションズ社のCEO、ブライアン・ウェンク氏に、現場の視点からの意見を伺いました。

フラット・ワールド・グローバル・ソリューション社 
ブライアン・ウェンクCEO

コロナ禍以前は、グローバルサプライチェーンは主に効率性を追求し、必要な時に必要な分だけを供給できるよう最適化されていました。コロナ禍になり、入港遅延、輸送機の不足、部品製造の停止などが起き、その結果、納期が極めて不安定になり、それがさらなる混乱を引き起こしました。フラットワールド社のようなグローバル企業では、効率的な輸送だけでなく、柔軟な対応力で迅速に対応する必要がありました。

サプライチェーンの混乱

「コロナ禍で、必要なときに必要な原材料を輸送できず、輸送しても労働力の問題で製造できず、その結果、顧客への納品遅延が発生しました」と、ウェンク氏は述べ、これを解決するために、同社は2週間以内に製品を搬入して加工する方法を考えなければならなかったと付け加えています。

「船便輸送を航空機輸送に切り替える必要がありましたが、航空機で対応するにはかなりのスペースが必要でした。例えば、アントノフ機は世界最大の貨物機ですが、当社は輸送のためにこれを何便も確保する必要があったのです。」と、同氏は述べ、「使用可能な機体は?コストはどれくらいかかるのか?」といったさらに多くの疑問が生じたと付け加えています。

以前、同社の顧客は10万ドルから20万ドルの費用で、3ヵ月かけて製品を輸送していました。「今は、輸送期間が2週間でなければならないので、輸送費120万ドルの負担を顧客に相談しなければなりません。」

変革の時期を乗り越える

コロナ禍初期の経験は、現在グローバルサプライチェーンが生き残るために不可欠な能力を構築する試金石となりました。というのも、2020年は需要の減少と混乱に対する耐性を高めるという両面において、企業が危機から学習する機会を得ることができたからです。

この変革期間に、サプライチェーン企業は新たな輸送方法を開拓し、課題を克服した結果、現在、大幅なコスト削減を伴う優れた施策を常時展開できるようになりました。もし、2020年のコロナ危機がなかったら、今の状況はどうなっていたでしょうか。輸送コストの増大と品不足により、世界的にインフレが進行し、状況はさらに悪化していたと思われます。

新たな脅威とは?

しかし、厄介なことに、今後数年のうちに、大きな危機に再び見舞われ、サプライチェーン業界はその脅威に直面する恐れがあると予測されています。

現代のロジスティクスの根幹を揺るがす危機が、徐々に、しかし必然的に迫ってきているのです。長期的なマクロ経済、低人口成長、就労志向の世代交代、パンデミックなどの要因が重なり、米国だけでなく、英国や日本など他の先進国でもトラックドライバーの不足が続いているのです。

輸送に関わる就労の変化

つまり、高齢のドライバーが退職し、業界はそれに代わる若いドライバーを十分に確保できないでいるのです。ドライバーの給与や契約ボーナスが前例のない水準に達しているにもかかわらず(ウォルマートは初任給10万ドル)、ドライバー不足は依然として深刻で、悪化の一途をたどっています。多くの場合、サプライチェーンの混乱は、貿易港でのオペレーションによって貨物船の荷降ろしができないからではなく、貨物船を最終目的地まで運ぶドライバーがいないために生じている。諸外国のドライバー不足が示すように、こうした混乱はサプライチェーンだけでなく、経済全体の運営に大きな支障をきたす可能性があります。

自動運転トラックが救世主となり得るか

ドライバー不足の解決策として、ドライバーの代わりとなる自動運転トラックは、大手自動車メーカーによる開発が進んでいることから、近い将来、実現することが期待されています。しかし、そのような明らかな進歩にもかかわらず、この技術は大規模に実装できる段階にはなく、最も楽観的な予測でさえ、この選択肢は今後10年以上たっても実現されないと見ているのが現状です。ただ、自動化と人工知能は、ドライバーを置き換えるのではなく、システム自体の柔軟性を高めるという意味で、解決策になり得るものです。

例えば、フラット・ワールド社はすでに人工知能の予測能力を利用して、将来の需要をモデル化しているとウェンク氏は説明します。過去のデータとリアルタイムのデータの両方を使用することで、複数の貿易ルートを検証し、現在の状況だけでなく、市場の方向性から判断して、最も混乱が予見されない輸出入ルートを選択することができるのです。

自動化とAIの活用

つまり、グローバルサプライチェーンはドライバーの代替としてではなく、AIの事務処理能力と分析能力を戦力として活用することができるのです。このようなソリューションにより、より大規模な自動化の到来までの時間を稼ぐことができ、ドライバー不足の危機を最悪の事態になる前に対処することが可能になるのです。また、パンデミックから生まれた柔軟性が、将来の危機にも大いに役立つ可能性があることを示すものでもあります。

リスク管理の鍵と予測困難なリスク

ただし、危機の中には予測しやすいものとそうでないものがあるのも事実です。環境・社会・ガバナンス(ESG)の問題には、予測可能なものとそうでないものがあり、多くの落とし穴が潜んでいます。(実際、ウェンク氏へのインタビューはウクライナ情勢の直前に行われましたが、その際、この国際的な対立や長期的な懸念がサプライチェーンにどのような影響を与えるかについて議論しました。)同氏の見解は、サプライチェーンは水のように、周囲の地形の変化に応じて水平を保つように、柔軟に機能しなければならない、というものでした。

長引くコロナ禍や労働力不足が将来与える影響はある程度予測可能ですが、ESGの将来を予測することは困難です。そのような世界では、「流動性」が王者として君臨することになるでしょう。


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