ESGが企業に及ぼす影響と今後の展望 

昨年、国連気候変動会議(COP26)がスコットランドのグラスゴーで開催され、「気候変動」という重要なトピックがさらに注目されました。 このサミットの主な成果と、今後のグローバル企業への影響を解説します。 

注目度が増すESG

「気候変動」は、最近ますます脚光を浴びているESGの中心的な要素の一つにすぎません。 ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Corporate Governance(企業統治)の頭文字で、社会や環境への影響に対する企業の意識の高さを測るものです。  ESGの要素は、今後確実に企業の収益やブランド構築に重要になってくるでしょう。 

ESGの3つのキーファクター、「環境」、「社会」、「企業統治」 には、多くの関心事が含まれています。 

  • 環境対策とは、企業が自然環境保護の担い手としてどのような役割を果たしているかを検証するものです。廃棄物、汚染、温室効果ガスの排出、森林伐採、気候変動などの問題が含まれ、またこれ以外の幅広い環境問題を対象としています。 
  • 社会的指標は、企業が人々をどのように扱っているかを調べるもので、強制労働や奴隷制を含む労働条件、紛争、安全衛生、従業員との関係、多様性、コミュニティへの参加などが含まれます。 
  • ガバナンス指標は、企業がどのように自らを律しているかを調べるもので、税務戦略、役員報酬、汚職、贈収賄、取締役会の多様性などが挙げられます。 

企業がESGの実践を基本的価値観の一部として取り入れることができなければ、規制に対する違反として当局への罰金、罰則、ブランドイメージの低下、顧客の喪失などの形で、マイナス影響をもたらすことになります。   

申請中の規制を含め ESGに関する規制の数は膨大です。 以下に、企業にとって最重要課題であり、影響が大きい課題を挙げています。これらは、注意深く対応すべき問題の一例です。 

強制労働  

  • 企業のデューデリジェンスを必要とする数多くの規制があり、さらに厳しい追加規制や法案が多くの国で申請されています。 
  • 米国の税関では、強制労働の申し立てに基づく輸入貨物の差し止め命令(WRO)と拘留案件が300%増加しており、拘留された貨物の金額は2021年に900%以上増加しています。 最新のWROが、2021年11月4日にマレーシアの手袋生産者に対して出されたばかりです。 
  • 韓国では新しい労働安全労働法(Severe Accident Punishment Act)が2022年1月に施行されます。この新法は、韓国企業、外国企業を問わず適用され、違反した企業の幹部は刑事責任を問われ、有罪の場合は罰金と最低1年の懲役が科せられます。  

炭素税  

  • EUと米国は、中国などの国からの鉄鋼のアクセスを制限することで、「ダーティースチール」の輸入を抑制する合意に達したことがCOP26で発表されました。 
  • EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)案(2021年7月採択)は、欧州での積極的な気候変動対策が「炭素の漏出」につながらないように、対象となる製品の輸入に炭素価格を設定するものです。CBAMは、国産品と輸入品の間で炭素価格を均一化し、消極的な政策の国に生産拠点を移すことでEUの気候目標が損なわれることがないようにします。これは、追加の輸入関税の形で行われる可能性があります。 

IFRS財団評議員会・ISSBと新たな国際基準  

  • 先週グラスゴーで設立された国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)は、企業のネット・ゼロ計画を監査機関が評価するのを支援し、グリーンウォッシングの問題に取り組むために、サステナビリティに関する基本的な開示基準/要件を策定しています。 

ESGに特化した投資ファンドの設立  

  • インベスコ社は最近、ナズタック100を対象とした最大かつ最新のEFTファンド(2,000億ドル)を創設することを発表しました。このファンドでは、企業がESGリスクをどの程度管理しているかについての格付けを行います。 投資家はESGファンドに注目しており、企業が活動に責任を持つことへの関心がますます高まっています。その一例として、アップル社の次回の株主総会では、株主が強制労働に関する透明性について投票を求めており、会社側はその動きに対応を強いられています。   

倫理的消費主義の時代

一方で、規制だけがESGの変化を促しているのではなく、 最大の起爆剤の一つは消費者による消費行動変化です。 私たちは「倫理的消費主義」の時代に生きており、商品やサービスを購入する人々(特にミレニアル世代、X世代、Y世代、Z世代)は、自分の価値観に基づいて消費行動をしています。彼らは、社会的・倫理的にポジティブな影響を与えるものを購入したいと考えています。 

2021年に実施されたESGに関する消費者調査では、消費者(83%)と従業員(86%)の圧倒的多数が、ESGのさまざまな要素において価値観を共有する企業から商品を購入したり、その企業で働く可能性が高いと回答しており、これを裏付ける結果となっています。 また、消費者の76%が、従業員や地域社会、環境に対して不適切な扱いをする企業との関係を絶つと回答しています。 本調査によると、「一方で、消費者と経営者の認識には明らかな乖離があり、消費者よりも多くの経営者が、企業のESG課題への投資を増やしていると考えています。消費者は、言葉よりも企業の行動が重要であることを明らかにしている」としています。 

リスク低減とビジネスチャンス

このように急速に変化する状況に対応するために、企業は、重要度を増すデューデリジェンスを支援するテクノロジーソリューションの導入を検討する必要があります。トムソン・ロイターは、新しい会計基準への対応、規制・法的要件の追跡、ビジネスパートナーやサプライヤーのデューデリジェンス、サプライチェーンのリスク要因が確認された場合の調達オプションの分析支援など、ESGデューデリジェンスの様々な側面に対応可能なソルーションツールを取り揃えております。     

最後に、トムソン・ロイター財団をはじめとする多くの非政府組織が、ESG分野で素晴らしい活動を行っていることを改めて実感しました。   


グローバルな規制環境を確実に予測・ナビゲート

トムソン・ロイターのRegulatory Intelligence (レギュラトリー・インテリジェンス) は、規制データを収集、モニタリング、分析し、変化する規制環境を追跡します。十分な情報に基づき決定を下し、確信を持って規制リスクを管理することができるようにすると同時に、積極的な組織改革を行うためのツールを提供します。


 著者紹介: トムソン・ロイター ONESOURCE担当 シニア・マネージャー  

カレン・ロブデル 

トムソン・ロイターのONESOURCE Global Tradeプラットフォームの市場における複数の製品を担当し、企業がサプライチェーンの効率を最大限に高め、リスクを軽減してビジネス全体のパフォーマンスを向上させるための製品を提供することに注力しています。25年以上に及ぶ貿易業界での経験から、サプライチェーンのリスク管理に焦点を当て、グローバル市場で活動する顧客に影響を与える政府の規制、政策、イニシアチブなどの調査をするとともに、リスク管理を強化するためのテクノロジーの導入をサポートしています。また、米国の通関士の資格を持ち、米国国土安全保障省および財務省に対する米国税関・国境警備局(COAC)の商業活動に関する諮問委員会のメンバーとして2期務めたほか、COACの強制労働ワーキンググループのメンバーでもあります。 

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