国際貿易拠点の新天地アジア

アジア太平洋地域の国々が新型コロナウィルス感染症の世界的流行の影響から立ち直ろうとしている中、日本は2022年1月1日に発効した自由貿易協定(FTA)の最新版である「地域包括的経済連携協定(RCEP)」に加盟しました。  史上最大の貿易圏に中国・韓国と初の経済協定に調印し、GDPの倍増に取り組んでいます。

RCEPは、90%の関税*を撤廃を確約しており、これにより、アジア地域間貿易の機会が大幅に増加し、 世界貿易の新たな「拠点」となることが期待されています。

このようなアジアを中心とした貿易環境の変化のなかでビジネスチャンスをつかむには、企業の事業計画を順調に推進し、業績を成長させることが最も重要です。ビジネス成長の可能性を大きく変えるには、自由貿易協定(FTA)を最大限に活用することが鍵となります。 

 *20年間で全加盟国の最大90%の関税を撤廃します。 2021年12月、国連貿易開発会議(UNCTAD)A New Centre of Gravityより参照。 

日本のビジネスチャンス 

FTAは、企業のサプライチェーンを強化し、以下の3つ分野においてビジネスに大きな競争力をもたらします。 

1. 関税の削減・軽減により、収益性の向上とランディングコストの削減を実現します。

2. 新規市場や顧客を獲得する機会を増やし、より幅広い商品やサービスを利用することで、ビジネスの成長を加速させます。 

3. 貿易の障壁をなくし、サプライチェーンの速度を高め、地域間の活動を活性化することで、グローバルな協力関係を強化します。 

アジアにおけるFTA 

RCEP 

  • RCEPは、オーストラリア、ニュージーランド、日本、韓国、中国、ASEAN間の貿易・投資活動を強化します。この加盟15カ国のパートナーシップは、世界の人口の3分の1、世界のGDPの30%を占めています。 
  • 国連の貿易部門であるUNCTADは、最近の分析で、RCEPによって地域間貿易が420億ドル増加すると発表しています。 
  • RCEPは、貿易、知的財産、Eコマース、競争に関する規制を簡素化するだけでなく、デジタル化とペーパーレスな貿易取引を促進します。   
  • RCEPの発効は、世界税関機構(WCO)によるHSコードの変更と同時に行われます。HSコードは、企業が通関や関税の支払い、貿易協定の利用に応じて使用することが求められます。  

過小評価されているCPTPP 

世界の貿易状況を変えているもう一つのFTAに、CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的かつ進歩的な協定)があり、企業が11の加盟国での輸出を支援しています。企業によってはRCEPよりも良い結果が得られる可能性もあるCPTPPは、商品の関税を下げるだけでなく、自由貿易の原則を守ることを目的としています。 

コンプライアンス遵守し、FTAを最適化する 

膨大な数のFTAが存在する一方で、規制の複雑さや貿易環境は刻々と変化しており、コンプライアンス違反による罰則やビジネスの成長の阻害リスクはかつてないほどに高まっています。   

RCEP発効により貿易業務のデジタル化が急速に進むため、多くの多国籍企業にとって、テクノロジー導入がリスクの軽減や、FTAを最大限に活用する最良の手段となることは明らかです。  

FTAの大半でコンプライアンスの自己証明が利用できるため、一元管理されたデータによって、関連するすべてのコンプライアンス義務が満たされていることを確認しながら、FTAを最大限に活用することができます。

 サプライチェーンを分散管理していると、様々な段階で時間とコストがかかり、ミスを犯すリスクが高まります。 また、コンプライアンス違反や税関・出荷の遅れによる罰則などにつながる恐れがあります。  

サプライチェーンを強化するテクノロジーの役割 

システムをデジタルプラットフォームに統合することで、サプライチェーンの可視性が向上し、その結果、コスト削減と収益向上の方向性が明確になります。 

デジタル化されたプラットフォームによって、より迅速なサプライチェーン戦略が実現します。自動分析で制裁措置、リスク、関税や税金の支払い見込み、その国でのビジネスのしやすさ、規制の変更などの要因を分析し、サプライチェーンの変化に合わせて瞬時に要因の影響を比較することができるのです。

国際貿易管理ソリューションの導入は、思いの外大変なものではありません。使いやすいインターフェースを備え、既存のシステムとシームレスに統合できるものもあり、サプライチェーンを最適化し成長を促進、FTAを最大限に活用できるように構築されています。 これこそがグローバルトレードの未来なのです。  


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著者

トムソン・ロイター、グローバル・トレード・プロポジション・リード 

ゾーイ・マルティネス 

トムソン・ロイターONESOURCE Global Trade Propositionアジア市場担当。グローバル・トレード・プロポジション・リードとして、グローバル企業の国際貿易コンプライアンス対応のためのテクノロジー導入を推進し、コスト削減やサプライチェーン強化に取り組んでいます。お客様にONESOURCE Global Trade Platformを最大限に活用していただき、エンゲージメントを促進することに加え、地域全体でビジネスを成長させることを目標としています。 

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