法務部門が限られた職場環境や予算などの経営リソースにおいて、部門業務をより効率的に運営する方法があります。
企業が不安定な財務状況に陥った場合、コスト削減を迫られたり、雇用の凍結、投資の削減、事業拡大や成長計画の後退などを余儀なくされます。
当然ながら、この圧力は企業インフラ全体に及び、多くの企業の法務部門は、コスト削減とあらゆる支出の精査を義務付けられ、かつてないほどの苦境に立たされています。では、法務部門は、複雑化する法務・コンプライアンス業務に対応しながら、より少ないコストでより多くの業務をこなし、生産性を上げるためには何をすればよいのでしょうか。
調査からみる法務部門の課題
トムソン・ロイターの「2022年 企業の法務部門の現状レポート」では、調査対象となった企業内弁護士の半数が、「社内法務機能の最大の目的として最優先されるべきビジネスの保護よりも、効率的な方法で業務を遂行することが法務部門の優先事項となっている」と回答しています。
このように、多くの企業内弁護士にとって効率性は最重要事項のようです。同調査では、効率化に関する最大の課題として、コスト削減の圧力と、より少ないコストでより多くの業務をこなすことを挙げています。また、社内のデジタル化やテクノロジーへの取り組みの管理、業務効率の向上や業務プロセスの合理化といった課題も挙げられています。
では、企業の法務部門がより少ないコストでより多くの業務を遂行し、生産性をあげるには、実際にどのような具体的ステップを踏むべきなのでしょうか。ここでは、企業の法務責任者が法務費用全体について検討するための方法をいくつか紹介します。
1. 低コストの法律事務所に業務委託を移行する
これは当たり前のことのように思えるかもしれませんが、より低コストの法律事務所を探す方法です。訴訟、雇用問題、知的財産(IP)問題、合併買収(M&A)案件を多く扱う企業の法務部門は、ニューヨーク、ロサンゼルス、ロンドンといった法務のホットスポット以外の外部の法律事務所を使うことを検討する価値があるでしょう。例えば、ミズーリ州カンザスシティ、テネシー州ナッシュビル、デンバーなど、米国の物価の安い地域の法律事務所を利用すれば、仕事の質を大きく変えることなく、多くの仕事をこなすことができる。
多くの場合、こうした地方の小規模な法律事務所は、訴訟、M&A、雇用、知的財産などの分野で、大都市の法律事務所が行う仕事に匹敵する(あるいはそれに近い)専門知識を、はるかに低いコストで提供することができます。さらに、M&Aやデューデリジェンスなどの特定の分野の業務を地域の小規模事務所に依頼すれば、企業法務部門は、大規模なプロジェクトの手数料に上限を設けたり、柔軟性の低い大手法律事務所では必ずしも利用できないような別の手数料体系を見出したりと、ある程度の幅を持たせることができるでしょう。
2. 法務人材をオフショア化
コロナ禍でのリモートワークの普及に伴い、グローバルに活躍する人材を活用することができるようになりました。
例えば、契約書や秘密保持契約書(NDA)のレビュー、M&Aにおけるデューデリジェンス、その他大量かつ低リスクの業務など、より日常的な法務業務を行う社員や契約社員をインドなど他の国の法務担当者に任せるという戦略です。
このような業務を海外または外地域の法務担当者に任せることで、メリットは倍増します。法律部門がこのような業務をより手頃な価格でこなせるようになるだけでなく、高給取りの法務担当者は、企業にとってより生産的で価値のある業務に取り組むことができるようになるのです。実際、すでに海外拠点を持っている場合、そこで法務担当者を育成すれば、グローバルオフィスの従業員に「リアルタイム」のアドバイスを提供したり、時差により長時間のサポートなどにも対応できるようになるというメリットもあります。そのようなメリットをビジネスのサポートに活かすことができるでしょう。
3. 新規・既存人材の活用し業務の対応範囲を広げる
法律部門の責任者の多くは、職場における環境や人材などのリソースを効率的に稼働させるために、採用する人材のスキルを見直しています。専門分野を超えて法的スキルを発揮できるシニア人材を重点的に採用し、部門のあらゆるニーズに対応できる万能選手(即戦力)として重宝されています。
実際に多くの法務部門が、複数の法律分野について会社に助言できる技量を備えた弁護士を採用することに価値を見出しています。その結果として、部門内の業務の幅が広がり、法務スタッフが状況の変化に迅速に対応できるチームとして成長しています。
この戦略は新規の人材採用だけにとどまらず、多くの法務部門の責任者は、在籍している社内弁護士に、企業幹部や社内の他の部署からの新たな指示や需要を満たすために、中核となる法律分野を超えて活躍することを求めています。
4. 他部門の予算を活用する
財務、人事、IT、税務部門など、社内の他部署と連携する場合、企業法務部門は必ずしもすべての作業費用を負担する必要はありません。
例えば、他部署から法務部門に依頼事項があったり、大規模な外部プロジェクトを引き受けるよう求められた場合は、依頼先の部門に費用を適切に負担してもらいましょう。また、取締役会事務局や社内の法定書類や会計書類の整備と管理に責任を持ち、会社が法令を遵守し運営されるよう務める役職であるコーポレートセクレタリーなど、複数部門の機能を果たすために必要な人件費を分担することもできます。
5. 法務部門運営の専門家を採用し、テクノロジーを有効に活用する
多くの法務顧問は、法務部門運営の専門家を雇用し、部門の効率改善、生産性のベンチマークとなる指標の提供、契約サイクルの可視化による作業プロセスの効率化などの業務を任せることを最優先事項としています。
2022年版企業法務部門の現状レポートで明らかになったように、企業法務部門で現在使用されているリーガルテクノロジーは数多くあり、その数は過去数年間で増加しています。例えば、現在、回答企業の約3分の2の法務部門が電子署名技術を定期的に使用していると回答し、半数以上が日常業務で法務リサーチや契約管理ツールを使用しています。
法務部門の運営担当者は、テクノロジーの利用を最適化し、業務実績と改善を測定できる指標を提供することで、法務部門の業務に対して非常に大きな価値を付加することができます。法務部門の責任者は、テクノロジーを活用し、法務部門の実績について正確なデータや具体的な数値を社内の他部署に示したり、取締役会に説得力のある情報を提供することができるのです。このようにして法務部門の価値を向上し、社内の信頼を得ることで、必要なときに、より多くの人的資源や予算などを得ることができるようになります。
ボトムラインを見据えて改善し続ける
以上の5つのステップ以外にも、企業の法務部門が「より少ない経営リソースでより多くのことを行う」という使命を果たすための方法があります。多くの企業法務部門にとって効率化が重要な目標であることに変わりはありませんが、人材やコスト戦略の改善、適切なテクノロジーの活用といったことに取り組むことは、限られた職場環境で社内のニーズを満たすことを目指す法務部門にとって、さらなるプラス要素となるでしょう。
この記事は、トムソン・ロイターとコーポレート・カウンセル協会(ACC)のDocket誌の協力により作成されました。
2022年版企業法務部門の現状レポート
トムソン・ロイターが法務部門を対象に行った調査では新型コロナウィルスの世界大流行以降の急速な変化の時期が続いていることが示されています。 様々な課題があるなかで、成果を上げている法務部門は、変革的な変化を積極的に取り入れています。
是非、2022年版企業法務部門の現状レポートをご覧になり、ポストコロナの法務部門の方向性に関する洞察をご確認ください。
2022年版企業法務部門の現状レポートのダウンロードはこちら
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