国際不正行為とリスクに関する報告書 2021 贈収賄・汚職の上位4地域が明らかに

贈収賄・汚職の上位4地域

ニューヨーク市に拠点を置く企業調査/リスクコンサルティング企業、クロール社が発表した「国際不正行為とリスクに関する報告書 2021」によると、贈収賄の脅威が問題になる上位の4地域は、中東と北アフリカ(61%)、サブサハラアフリカ(59%)、ラテンアメリカ(49%)、アジア太平洋(43%)でした。 

「Bridging the Great Divide~大きな隔たりを越えて~」と題するレポートの研究要約には、「これらの地域は、現地で受け入れられている独特のビジネス慣行が存在しており、政府に透明性がなく、公的機関が脆弱という点で、しばしば高いリスクがあると認識される」と記されています。 

また「これらの地域的な要素と文化を理解し適応することが、贈収賄リスクを管理するための鍵になる」と書かれています。 

組織の内部リスクへの対策と自信

この要約によると、ほとんどの回答者が、組織について検討した場合、サプライヤー、顧客、販売業者などの第三者からの可視性の欠如(46%)が、贈収賄に関わる最大の脅威をもたらしていると語っています。対照的に、記録保持の不十分さ(31%)や、従業員の活動(23%)などの内部リスク分野は、リスク要因としては比較的小さいと考えられていました。 

企業は、内部リスクを監視し相殺するための堅牢なプロセスを確立しているため、内部リスクについてはこれまで以上に自信を持っていると考えられます。大部分の企業(82%)は、過去5年間に全体のリスク評価を行っており、現在、86%の企業が事前行動的なデータ分析を行って、リスクが拡大する前に問題を識別しています。 

難題への対応

報告書では、反贈収賄・汚職防止プログラムを成功させた要因として、実施に成功した企業は、「倫理的な文化を根付かせるという上級管理職の強い決意」、「組織全体のリスクを正しく確実に理解すること」、「強力な統制フレームワークの策定」、「組織内外で変化するリスクを特定、評価するためのデータ分析の活用」を重視していたと述べています。 

そして、回答者の72%が、この問題に対して取締役会レベルの注力と投資が十分あったと考えています。この意見は、分野が異なっていてもほぼ一貫しており、唯一の例外は銀行業(53%)です。おそらくこれは、銀行が、マネーロンダリングや制裁違反など他の違法行為の防止に重点を置く傾向があるからだと考えられます。調査の回答者は、コロンビア(54%)、中東(45%)、オーストラリア(42%)、ロシア(39%)にまたがっており、同時に取締役会の関与を強める必要性を指摘していた、ということです。 

また、過去5年間に企業全体のリスク評価を実施し、企業内に広がった脅威について把握している企業は、82%にのぼりました。リスク評価の実施率については、ドイツ(63%)、カナダ(60%)、ロシア(59%)で最も低かったものの、全般的にすべての地域で一貫していました。 

ただし回答者はまた、内部統制フレームワークによって、ハイリスクの贈収賄を検出し予防できることに自信を抱いていました。平均で74%の回答者が、内部統制フレームワークは有効だという見解を示しています。 

「これはあらゆる規模の企業に当てはまる。ただし最も確信のない回答者はここでも銀行業だった(60%)」とまとめています。 

調査によると、現在予想以上に多くの企業(86%)が、贈収賄リスクを検出するためにデータ分析を利用しています。この方法の採用はアジア太平洋地域で顕著で、特に中国(98%)、シンガポール(97%)、インド(92%)で多くなっています。また英国(91%)や米国(91%)でも同様に高い導入率が見られました。 

「国際不正行為とリスクに関する報告書 2021」の刊行に際し、クロール社は各企業の法務統括責任者、最高法令順守責任者、最高財務責任者、最高経営責任者を含む上級意志決定担当者1,336人を対象に、リスク戦略についてオンライン調査を実施しています。 

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