サプライチェーンのコンプライアンスに影響を与える強制労働、国際規制の変化について

輸出入に携わる企業は、世界中の規制変更の嵐に巻き込まれています。メーカー、物流パートナー、流通業、原材料の供給業等の販売チャネルが複雑なネットワークで事業を展開している企業にとって、このような変化の中でコンプライアンスを維持することは大きな負担とリスクを伴います。

最近配信されたウェビナーでは、トムソン・ロイターのシニアプロダクトマネージャーであるバージニア・トンプソン氏と、インフォアの副社長兼プロダクトマネージャーのジェフ・ローエ氏が、国際貿易リスクを軽減しコンプライアンスを維持するために企業が知っておくべき最新の国際貿易規制の変更について解説しました。

サプライチェーンにおける強制労働について

強制労働は、現在、国際貿易の分野において最も話題になっているトピックの一つです。輸入業者は、2021年12月に署名された「ウイグル人強制労働防止法」の規制について熟知していなければなりません。本規制は2022年6月21日米国税関・国境警備局によって施行されました。

この法律は、中国の新疆ウイグル自治区からの輸入品が強制労働によって作られたものである場合、その輸入を禁止するものです。注目すべき点はこの規制は、輸入品が元々この地域から来た強制労働者によって作られたものであれば、どこから輸入されたとしても影響を与えるということです。

サプライチェーンから強制労働を排除するために企業ができることとして、サプライヤーとのやりとりの標準化、オープンなコミュニケーションの重視、原材料調達への関与、従業員へのコンプライアンス教育などがあります。しかし、これらの対策はサプライチェーンの担当者にとって負担が大きく、ミスの発生率も高くなり、法令遵守のためのコストや違反した場合の罰則も厳しくなります。

Supply chain compliance softwareは、可視性の向上によりサプライヤーデューデリジェンスの作業を自動化し、人権に対する企業の責任を確保するとともに、法令遵守に関連するコストを削減します。

ロシア・ウクライナ情勢がサプライチェーンコンプライアンスに与える影響

2014年以降、クリミア併合後のロシア制裁は複雑化し、企業はエンドツーエンドのサプライチェーン関係者を追跡するSOP(標準作業手順)の確立が求められてきました。ビジネスパートナーや顧客を禁輸規制が適用される組織リストまた、禁輸国リストと照合し、輸出管理規制に違反しないようにする必要があります。

グローバルに貿易規制を遵守することは元々複雑ですが、ロシア・ウクライナ情勢は、現在進行中の規制変更に対応しなければならないという課題をさらに複雑化させました。制裁措置の監視、刻々と変化する規制、取引禁止対象者リストの審査は、サプライチェーンの担当者に多大な負担を強いています。

ロシア・ウクライナ情勢の影響を受けた企業は、貿易リスクを軽減するよう努めています。バージニア氏は積極的なデューデリジェンスに焦点を当て、企業が優れたSOPを備えていることを確認するべきと指摘しました。紛争以来、多くの規制に変化が生じただけでなく、それらの変化の多くは非常に複雑です。まったく新しい審査プロセスを構築する必要はないかもしれませんが、現在あるSOPの再検討は間違いなく必要と言えるでしょう。

ジェフ氏は、規制対象者、禁輸国、および規制対象者が所有する企業のデューデリジェンスを強化するため、 Denied Party Screening の自動化に関心が高まっていることを実感しています。大量のデータと継続的な変化により、企業は自信を持って取引先との業務を管理するためにテクノロジー導入が求められています。

サプライチェーンコンプライアンスに影響を与える国境規制

税関・国境警備局(CBP)の21世紀型関税フレームワーク(21CCF)は、サプライチェーンにおける公正な競争の確保と透明性・説明責任の向上を目的としています。

米国における輸入申告の変更点

1.関税近代化法(Mod Act)

1993年に関税近代化法(通称「Mod法」)が成立して以来、多くの変化がありましたが、中でも電子商取引の普及は最も重要なものの1つと考えられています。越境取引の手法を根本的に変えてしまたのです。税関国境警備局(CBP)の21世紀税関フレームワーク(21CCF)は、サプライチェーンにおける公正な競争を確保し、透明性と説明責任を向上させるために設計されています。

CBPの21CCFへの取り組みに加え、上院議員ビル・キャシディ氏の関税近代化法の草案は、規制を更新することへの最初の一歩と言えるでしょう。Mod Actが電子商取引に与える影響は、既存の記録保持要件の拡大です。オンラインマーケットプレイスは今後、輸入品に関する情報を5年間保持する責任を負うこととなるでしょう。

2.テクノロジーは法規制を凌駕する

また、技術力の向上、特に人工知能(AI)やブロックチェーンの活用も大きな変化です。これらの進歩により、技術の進歩のスピードに現行の法律や規制が追い付かない現状が露呈しています。CBPは、この枠組みが追いついていないことを認識し、商業税関業務諮問委員会(COAC)の協力を得て、この枠組みに改良を加えるためのタスクフォースを立ち上げました。COACの主な任務の1つは、CBPの商業活動を通じて米国国境の安全を確保することです。

アメリカ・メキシコ・カナダ協定

注目すべき変化の一つは、CBPのウェブサイトにある自動車認証ポータルが完成したことです。この新しいポータルサイトにより、自動車メーカーは鉄鋼やアルミニウムの労働価値含有率要件に関するガイダンスを簡単に得ることができます。既存の原産地要件に加え、このポータルサイトでは、乗用車、小型トラック、大型トラックのうち、自動車メーカーが購入する鉄とアルミの原産地がUSMCA領域で70%以上かどうかを確認することができます。

世界税関機構(World Customs Organization)の規制を遵守したサプライチェーンの実現

世界税関機構(WCO)の関税率表の変更は、コロナ禍により遅れています。このため、多くの企業が必要な変更に対応するために奔走しています。WCOが予定通りに変更内容を公表できなかったため、多くの国が自国のHS(Harmonized System)変更内容を予定通りに公表することができなかったのです。

そのため、特に関税制度が整備されていない国では、不正確な分類が行われる危険性が高まっています。米国では2022年1月下旬にこの変更が行われ、貿易業者にとってより複雑なものとなり、不正確な分類が行われる可能性が高くなりました。分類を確認することは、より重要な課題となっています。

自国のプロセスとその変更がいつ発表されたかを確認することで、企業は製品の再分類に必要なものを知ることができます。誤分類のリスクのある分野を特定し、それに応じて監査を行うことができます。Global classification  は、監査プロセスを合理化し、コンプライアンス遵守までの時間を短縮し、かつ信頼できる精度で監査します。

サプライチェーンのコンプライアンスに自信をもって取り組む

規制の変更が国際貿易とそれを支えるサプライチェーンの多くの側面に影響を与える中、サプライチェーン全体の透明性とオープンなコミュニケーションを確保するために、強固なコンプライアンス貿易プログラムを持つことが極めて重要となっています。

企業は、輸出入機能をサポートする貿易コンプライアンス・ソフトウェアに注目し、特に変化や不確実性のある時期には、ビジネスの将来を見据えた専門的なアドバイスを求めています。世界トップクラスの国際貿易管理ソフトウェアは、強制労働規制、制裁措置監視、禁輸スクリーニング、その他サプライチェーンと貿易管理プロセス全体に影響を与える多くの要件について、グローバル企業のコンプライアンスと最新情報を維持します。


Supply Chain Compliance

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サプライチェーンにおける情報管理の必要性は、かつてないほど高まっています。グローバルサプライチェーンにおける取引企業との連絡、管理、トラッキングを効率的に行い、リスクを特定・軽減し、コンプライアンスを維持する必要があります。CTPATやAEOなどの制度や強制労働、紛争鉱物の課題、製品の安全性や、レイシー法などESGの観点から、デューデリジェンスと情報収集が不可欠です。トムソン・ロイターの ONESOURCE Supply Chain Complianceは、サプライチェーン全体の可視性を高め、コンプライアンスを管理し、リスクを軽減するための統合的なソリューションです。データ集約型のテクノロジーによって、企業、部門、個人を問わず調査、依頼、通知をオンラインで実施、管理することができ、ペーパーレスを推進し、管理コストと業務負担を軽減することができます。


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