サステナビリティとESGに関して拡大する経営陣の責任

企業の持続可能性とESGへの取り組みや規制の遵守という課題は、企業経営者の責任になりつつあります。

環境、社会、ガバナンス(ESG)問題は、企業幹部が責任を負うべき分野横断的な領域として急速に浮上しています。特に、サステナビリティ最高責任者、法務最高責任者(CLOs)、財務最高責任者(CFOs)という役割において、ESG課題の拡大がこれらの職務が網羅する分野に影響を及ぼしており、企業内でその責任範囲が最も拡大すると見られています。

ESGに関する企業責任はこの10年で企業の主な問題となってきましたが、近年、サステナビリティ最高責任者の役割が拡大しています。サステナビリティ最高責任者の主な責務は、社内外のコミュニケーションと変革の管理でした。ESGの取り組みが数多く存在する中、サステナビリティに関する新たな責務は、データの提供にも及ぶと思われます。

シーメンス社のサステナビリティ責任者であるオリビア・ホイットマン氏は、「サステナビリティは、情報発信の役割になりつつある」と指摘します。「私たちは10年間、変革者になろうとしてきましたが、突然、プロセスを導入し、戦略について考えなければならなくなったのです」 実際、ESGデータは複数の企業部門にわたって存在し、データ分析の主要部分の専門知識、ガバナンスのためのプロセスや手順の開発は、それぞれ企業財務部門と法務部門に属しています。会計士や財務アナリストは、公開する財務情報の厳密な審査や準備にその専門性を活かしています。同様に企業の法務部門は、通常そのような情報の公開を最終的に承認する役割を担っています。

ESGへの貢献度が高いCFO

証券取引委員会(SEC)が提案した、財務書類への気候変動開示のルールは、企業の財務部門におけるESGデータおよび報告責任の拡大における新しい主要な推進要因の1つとなっています。会計事務所センシバ・サン・フィリッポ社のESGアドバイザリー業務の責任者であるジェニファー・カンテーロ氏によると、このためCFOは、ESGアドバイザリーサービスを実施するために外部サポートに問い合わせたり雇用したりしているそうです。「会計士は長い間、財務データのみを測定してきましたが、気候変動開示への準拠という新たな要件を考慮すると、非財務データを測定するのは理にかなっています」とカンテロ氏は言います。

CFOが企業のESGの取り組みを主導するために必要なもう一つの重要な要素は、ESGに関連するデータを精査することです。ESG情報がサイロ化した情報システム内にあり、報告のために分析と集計が必要であるという事実は、このプロセスにおいて会計士と財務アナリストが果たすべき重要な役割に拍車をかけています。

また、ESGデータの整合性を確保するためには、CFOが内部統制の構築や報告用の主要業績評価指標(KPI)の監査プロセスにおいて、厳密性と一貫性を確保することが必要です。SEC規則案では、通常財務部門に所属する内部監査におけるESGの優先順位が間違いなく上がります。

ESGにおいてより大きな役割を果たすようになったCLO

法務顧問は、ESG 戦略の策定にも極めて深く関与しています。最近の調査報告書によると、具体的には弁護士の約半数(47%)が「企業のESGの取り組みを主導している」と回答しており、90%の法務部門がESG取り組みを主導していることも明らかになりました。

また、社内弁護士は、リスク評価、研修、報告、監視、調査などの活動に従事しているため、常にガバナンスの推進するという重要な役割を担っています。

この2年間、CLOは大多数の企業で事実上ESG最高責任者として、特に訴訟リスクの増加による風評リスク問題で活躍しています。実際、消費者や株主の原告は、企業の持続可能性情報の虚偽記載や不足、さらにはグリーンウォッシュ(企業の製品や方針が実際よりも環境に優しいと一般大衆を説得するために用いられる欺瞞的な広告やマーケティング手法)に関する申し立てなど、その法的請求範囲を広げてきています。

CLOのESG責任拡大に関する比較的新しい動きとして、取締役が受託者責任の違反や不履行とみなされ、訴訟の対象になるケースが増加しています。このためCLOは、取締役会の監督機構において質の高い文書を作成するために、コーポレ ートセクレタリーとしての責任を持つことがより重要となっています。

今後の展望

企業全体でESGの優先順位が上がった主な要因は、昔も今もマーケティングや企業イメージ向上のためです。実際、弁護士の大半は、イメージ、競争、投資家の関心が、環境法遵守に求められる以上の環境目標を採用する動機となった要因であると述べています。

企業のこのような問題への関心は、環境問題から始まったかもしれませんが、急速に社会的な要素を含んだ問題へと焦点が移ってきています。このことは、ESGの重要性、透明性と説明責任の要求が今後も継続することを明確に示しています。


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