間接税業務:戦略的アドバイザーへの移行

間接税部門の存在意義

以前より企業の間接税担当者は、間接税業務を単なるコンプライアンス重視の業務から戦略的なアドバイザー業務に移行することで、組織内でより大きな影響力をもち、一目置かれる存在になれると言われてきました。業務の中心となっているコンプライアンス機能が自動化できるのであれば(そのほとんどが実現可能です)、間接税チームは自由に使える財務データを活用し、隠れた節税策を見つけ出し、経営陣に価値ある戦略的な提案をしたり、今後起きうる事態を予測してアドバイスをすることができるのです。 

間接税チームは、アウトソーシングや税務テクノロジーへの投資によって税務コンプライアンスを強化していれば、この役割の移行を行うことが可能です。現在のところ、ほとんどの間接税チームは、主に税務コンプライアンスに焦点を当てています。しかし一方で、トムソン・ロイターのレポート「間接税: 対応への恩恵」で調査対象となった税務担当者には、戦略的アドバイザーとしての役割を担っている方も見られました。自らの役割を昇格させた方々の経験として、その際に起こる課題や業務の優先順位などについてご紹介します。 

間接税: 対応への恩恵」 レポートによると、税務担当者がコンプライアンス機能から戦略的アドバイザーの役割に移行した際に実施すべきことは以下の通りです。 

  • 他部門との効果的な関係構築 
  • 部門間の戦略的関係の理解 
  • 異なるスキルセットの開発(例:データ分析、コミュニケーション、技術的専門知識) 
  • 熟練した人材(特に技術系)の採用・育成 
  • 適切な税務技術やトレーニングへの投資 

間接税部門の優位性 

間接税チームの大きな強みは、社内の部門全てと関わりを持っていることです。全社的な知識と専門性を持つことで、組織が戦略的ビジョンをどれだけ効果的に実行しているかを総合的に把握することができます。間接税チームは、単に間接税の規制を遵守するだけでなく、データの宝庫でもあります。これらのデータを適切に分析すれば、企業のサプライチェーン、顧客行動、キャッシュフローに関する独自の洞察を得ることができ、企業買収、投資、新製品開発などの重要な意思決定に影響を与える要因を経営陣に示すことができます。 

これらの責任を一度に引き受けるのは現実的ではないので、最も効果的な分野を優先させましょう。いずれにしても、そのプロセスはトップとの信頼関係を築くことから始まります。 

税務プロセスの自動化が必須条件

戦略的な意思決定に積極的に関わっている間接税の専門家が、このような役割を担うことができたのは、すべての規制上の税務コンプライアンスプロセスが自動化され、さまざまな種類の戦略的分析に時間を割くことができるようになったからだと報告しています。さらに、買収、新製品の発売、価格設定など、より高いレベルの意思決定に関わる人々は、主に税金の還付という形でその財務的価値を最初に示すことで、アドバイザーとしての役割を確立しています。 

例えば、ある税務担当のリーダーは、新しい間接税のテクノロジーツールを使って過去の申告書を分析するまでは、本質的に見えなかった1億5,000万ドルの滞納税を取り戻すことに成功しました。また、別の担当者は、VATの処理をより効率的な新しいサービスにアウトソースするまでは、面倒で時間がかかりすぎて還付できなかった付加価値税(VAT)を、年間最大50万ドルまで回収できる見込みだと述べています。 

付加価値の向上

間接税チームの戦略的な貢献が具体的な財務上の成果をもたらすと、企業に付加価値をもたらす他の分野にも注目が集まり始めます。 

今回の調査では、回答者が付加価値の向上に成功したと回答した分野をいくつか紹介します。 

  • 罰則の回避と還付金の最大化 
  • サプライチェーンの透明性の確保 
  • 顧客の行動パターンの分析 
  • 新規事業や買収のためのデューデリジェンスやストラクチャリングのアドバイス 
  • 市場参入および価格戦略の策定 
  • 契約書の作成に関するアドバイス 
  • 正確な請求書の発行による顧客サービスのサポート 
  • 税制改正への対応 
  • 税務当局との関係の構築と管理 

これらの分野には課題もありますが、機会が与えられれば間接税チームが重要なアドバイザーとして機能し、ビジネスに貢献できると経営者に示すことは大変重要です。実際に、M&Aに関わる調査回答者は、CEOがデューデリジェンスプロセスのもっと早い段階で間接税部門を関与させれば、もっと大きな貢献ができると回答しています。 

「間接税が原因でM&Aが進まなくなることはないが、M&Aのやり方が変わるかもしれない」とある回答者は述べています。また、ある回答者は、買収における間接税チームの役割は、取引が終わって間接税の問題が表面化した後の問題解決に追いやられることが多いと嘆いていました。 

間接税のスキルセットを拡大する 

上記のようなチャンスは魅力的に聞こえるかもしれませんが、これらのチャンスは、高度なスキルを持つ間接税チームがテクノロジーを活用しなければ実現しません。戦略的に適切な間接税部門を構築するためには、税務・会計の知識に加えて、技術的なノウハウ、戦略的分析の専門知識、コミュニケーションスキルが必要とされます。 

興味深いことに、間接税チームの能力を向上を目指す多くの企業は、優秀な人材を集めて雇用しています。間接税の分野でより戦略的な役割を果たす可能性があることから、多くの専門家は、より幅広いスキルセットを身につけ、将来的に大きな役割を果たすための機会を求めています。そのため、多くの間接税チーム(特に小規模なチーム)は、採用希望者に、より興味深い仕事をする機会を与えたり、社内で魅力的なキャリアパスを切り開いたりする機会を提供しています。 

間接税の専門家を雇って技術を教えるのと、技術の専門家を雇って間接税を教えるのとでは、どちらがよいかについては、まだ議論の余地があります。しかし、ミレニアル世代や若いデジタルネイティブが専門職に就くにつれ、この議論の条件は変化しているようです。 

ほとんどの回答者は「間接税を理解することの方が重要で、彼らはテクノロジーについて学ぶことができる」と答えていますが、「テクノロジーを最大限に活用する方法を教えるよりも、間接税の技術的なことを教える方が簡単だ」と答えた回答者もいます。さらに、将来の税務部門におけるテクノロジーの重要性が増していることを考慮して、ある回答者は、「将来的には、間接税のコンプライアンスを担当者は、税務の専門家であることを改め、システムが何をしているかを理解し、それを税務コンプライアンスのプロセスに反映させることができるシステム担当者を雇い始める必要がある 」と指摘しています。 

間接税チームがより戦略的なアドバイザリー業務に移行するためには、自動化を進めることが必須条件であり、企業のデータから戦略的な洞察を得るためには、税務分析用に開発されたソフトウェアツールを活用することが重要です。どのような方法であれ、技術的な洞察力が求められているように思われます。また、「間接税: 対応への恩恵」 レポートでは、テクノロジーや間接税に関して様々な強みを持つ人材が、チームに異なる視点をもたらし、メンバーのスキルがより多様であることが、ビジネスに貢献できるチームとして機能することを示唆しています。


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