トムソン・ロイターの13回目となる年次調査「コストオブコンプライアンス2022―拮抗する優先課題― 」は、金融サービス業界のリスクおよび規制の専門家が直面するコンプライアンスに関する課題に焦点を当てています。
今回の調査では、デジタル化とリモートワークの時代において、多くの企業がコンプライアンスに関する自社の取り組みを再評価しており、コンプライアンス文化の高まりを感じさせる調査結果となっています。
ESG、暗号資産、オペレーショナル・レジリエンス、デジタルトランスフォーメーションなどの発展により、コンプライアンス課題の複雑性が増し、規制の変更が明確化、これまで以上にコンプライアンスの必要性が高まっています。これに伴い、優先事項が乱立、また、予算の縮小や経験値や技量の高い人材の不足によって、業績へのプレッシャーが高まっています。
トムソン・ロイターで規制関連を専門とし、当レポートの執筆者であるスザンナ・ハモンドは、「コンプライアンス機能は、金融サービス企業の長期的な成功を確保するために必要な社内コアコンピテンシーの基本部分である」と述べ、「多くの企業は、適切なリスクとコンプライアンスの文化を維持しながら、その責務を果たすことに苦心している」と続けます。
以下は、コンプライアンス担当者が今年から来年にかけて直面すると予想される5つの主要な課題です。
コンプライアンス課題1:規制変更の多さ
調査回答者の4人に3人近く(74%)が、規制変更の増加を予測しています。「金融サービス業界の発展とともに、コンプライアンス担当者が日常的に把握しなければならないリスクも増えています」と、スザンナは述べています。レギュラトリーインテリジェンスでは、2021年中に190カ国で64,000件以上の規制に関する警告が出されましたが、これは2008年以降で2番目に多い警告件数です。
コンプライアンス課題2:予算不足
コンプライアンス予算の縮小により、コンプライアンス部門に求められている幅広い活動に支障が出ていることが新たな課題となっています。コンプライアンス業務が拡大し、予算が前年とほぼ変わらないにもかかわらず、今回の調査では、回答者の5人に3人以上(62%)が予算の増加を見込んでおり、楽観的な見方もあるようです。
コンプライアンス課題3:技量を備えた人材の確保
オーストラレーシアの回答者の半数(53%)は、テクノロジー技能に対するニーズが高まりを受けて、より高いスキルと知識を持つ人材の採用が必要であると回答しています。コンプライアンス部門に必要な具体的スキルの上位3として、「コンプライアンス等に関する専門知識」「詳細事項に対する注意力」「卓越したコミュニケーション力」が挙がり、このニーズを満たす人材を確保することが困難であることがわかりました。
コンプライアンス課題4:効果的なコンプライアンス・モニタリング
回答者の3分の1以上(35%)が、来年度にかけてコンプライアンス部門の規模が拡大する予想しています。その一方で、一部のコンプライアンス業務に対しては、人員が削減されるにもかかわらず、現状より多くの業務を担うことになるとも回答しています。また、データ分析、税務、社内外のコミュニケーション、ソーシャルメディア、社会への露出、製品やプロセスの設計など、コンプライアンスに関わる業務が増加するとの見通しも示しており、コンプライアンス業務の効率化が不可欠な状況です。
コンプライアンス課題 5 : サイバーレジリエンス
今年の調査では、回答者の半数以上(55%)が、サイバーセキュリティに関するリスクについて認識しており、当然の結果とも言えますが、サイバーレジリエンスの評価において、コンプライアンス部門が対応に関与することを想定していることが明らかになりました。信頼できるプロバイダーによる適切かつ継続的な研修により、サイバー犯罪の兆候を認識し、サイバー侵害から会社を守ることができます。
「テクノロジーとデータ機能に適切に投資を続けなければ、ASICはその有効性を低下させ、最悪の場合、ASICが時間の経過とともに無用になる危険性があります。」
オーストラリア証券投資委員会(ASIC)ジョセフ・ロンゴ委員長の講話
コンプライアンスの変化に迅速に対応するために
コンプライアンス機能は、将来的にデータとテクノロジー主導、ビジネス全体への統合、文化への浸透、自動化、スキルや専門性の向上が進むと考えられます。
金融サービス企業はすでにデジタルトランスフォーメーションに着手し、コンプライアンス業務をより自動化された環境に移行し、対応していますが、コンプライアンスの専門家が求めるような変化を起こすためには、すべてのリソースがより高度化する必要があるでしょう。
規制の専門家であり、レポートの共同執筆者であるマイク・コーウェンは、「本レポートの調査結果は、金融サービス企業の事業計画や人材確保に役立つと同時に、業界全体のアプローチと自社のアプローチを比較評価することを目的としている」とし、「レポートでは、世界最大の金融サービス企業の取り組みを参考とするために、先進システムを導入している世界的な銀行の動向を分析しています」と述べています。
コンプライアンスに関する現状と動向を把握し、戦略的な対策をとるために、最新のレポートをご覧ください。
「コストオブコンプライアンス2022―拮抗する優先課題― 」のダウンロードはこちら
Compliance Learning
トムソン・ロイターのコンプライアンスeラーニングが選ばれる理由
世界各国・地域の最新の法令や規制を反映し、かつ多言語対応のコースで、国内だけでなく、海外子会社や関連会社への教育にもお役立ていただけます。
コンプライアンス研修を実施し、個々の従業員や組織単位の行動が変わることで、リスク管理を強化することができます。ご要望に応じ、さまざまなコースをご用意しております。