2021年EU付加価値税の変更のポイント

トムソン・ロイター・インスティチュート税務・会計部門

エンタープライズ・コンテンツ・マネージャー  ナディア・ブリトン

パンデミックの影響で大幅に遅れて発行されたEUの付加価値税(VAT)に関する規制変更。各企業はこれに備えなければなりません。

2021年は税務にとって多くの変化をもたらす1年になるでしょう。そして、これからもさらに変化が続くことが予想されます。世界的なパンデミックの影響で2020年から中断・延期されていたことが現在実施され始めており、今年の7月1日に発効した欧州連合の付加価値税(VAT)に関する規制もその一つです。

VATは、多くの国で、売買されるほとんどすべての商品とサービスに対し適用される消費税です。これは、全世界、そして経済協力開発機構(OECD)加盟国の税収の約5分の1に相当すると言われています。

新たに発効したVAT規制の変更について詳しく見てみましょう。さらに今回の変更が、EU域内および域外で活動し、EU域内にエンドカスタマーを持つeコマース事業にどのような影響があるのかを考えてみます。

VATプロセスの簡素化と合理化

eコマース事業者は、今回の変更でVATプロセスの簡素化が可能になります。トムソン・ロイターEUの間接税部門シニア・プロポジション・マネージャー、グンジャン・トリパティ氏によると、今後、企業は、1つの加盟国当局に登録すれば残りすべての加盟国に税金を支払うことができるようになり、このフレームワークにより、いわばひとつのクリアリングハウスを提供することが簡単になりました。したがって、企業は一つの行政機関(慣れ親しんでいる場所、または共通の言語を共有する場所の)だけに対応すればよくなり、27の異なる行政機関と対応する必要はなくなります。

EUを拠点としない販売者にも適用

eコマース事業のための包括的な最初のVAT規制の一つは、2015年に導入されましたが、これはEU加盟国内の消費者への通信、放送、電子的に供給されるサービスなどに限定されていました。その初期段階での成功に基づき2021年7月1日に発効された変更により、eコマース事業による商品の販売を含むように制度が拡張され、法律の範囲が拡大されました。「これらの規制は、EUを拠点とする販売者だけでなく、EUを拠点としない企業にも適用されます」と、トリパティ氏は言います。「EUはこの政策により、eコマースチャネルを通じて国内外におけるサプライヤー間の競争条件を均等化することを意図しています」。

この規制が影響を与える業種

この規則の改正は、オンライン販売業者、オンライン電子インターフェースまたはデジタルプラットフォーム、郵便事業者、宅配業者にも影響を与えるでしょう。パンデミックによりeコマースが爆発的な成長を遂げているため、これらの変更はかなり広範囲に及ぶものになり、場合によっては複雑化したり、ビジネスのITシステムや物流プロセスの変更が必要になることが予想されます。

新たな規制に関する4つの誤解

誤解その1:企業はEU内の1つの管轄区域にのみ支払いを行う

これは正解であり、不正解でもあります。7月1日の改正は、EUの消費者が商品を購入する際の、eコマース事業者のVATの報告および支払いの負担を軽減することを意図しています。実際には、27のEU加盟国によって同じ商品やサービスに対するVATの税率が異なります。そのため、事業者は商品やサービスが消費される場所に応じてその商品やサービスに対するVATの税率が異なることを理解し、追跡し、適用する必要があり、また「目的地の原則」を遵守することになります。

EUを拠点としない企業は、VATの登録と報告義務を行う国として、EU加盟27カ国の中からいずれかを選択することもできます。これは単純に、各加盟国に対して支払いと申告を27回個別に行う代わりに、登録した国に一回の一括支払いと一括申告を行うことで、VATの支払いとデータが他の各加盟国に再配布される仕組みです。したがって、この制度を「ワンストップショップ」という用語で示し、各加盟国との間で1対1で処理される国内のVAT還付登録および義務と区別しています。

誤解その2:新しいVAT規制はシンプルである

VATの徴収、申告、支払いを合理化することは、必ずしも単純化を意味するわけではありません。例えば、EUを拠点としない事業者は、物品が直接又は第三者によって保管されているEU内のあらゆる物理的な場所に注意を払わなければなりませんし、請求先住所と配送先住所が異なる場合は、特に配慮しなければなりません。商品の場合、配送先住所はどこで消費されるかを示す最も強力な指標です。サービスの場合、請求先住所が受領者の物理的な場所(受け入れ可能なプロキシとして使用されるIPアドレス)とは異なる場合、消費場所を特定することはより困難です。

したがって、企業はこの機会を利用して、サプライチェーンと顧客の消費パターンをこれまで以上にきめ細かく把握する必要があるでしょう。

誤解その3:VATの納付義務についての心配は事後にすればよい

EUにおけるVAT率に0%から27%の幅があるとした場合、それが税引き後の純利益に与える影響を想像してみてください。

それぞれの国には独自の税率があります。そして事業者はその財務計画と分析のためにも各事業所に対する正しい税率を考える必要があります。今回の新しいVAT規制は、EUにおけるeコマース企業からのVATの支払いを追跡するためのよりシンプルで体系的な方法を作るために制定されました。EU内に顧客を持つ企業にとっては、各国の製品・サービス分類とそれに対応するVATを明確に理解しておくことが重要になります。

これは複雑ではありますが、税務、財務、物流、およびITチームが一体となって進めていけば、事業に最適なソリューションが必ず見つかります。

誤解その4:税務部門だけが規制変更に対応する責任を負う

税務チームだけでは、事業の物流と支払プロセスを完全に把握することはできません。こういった知識なしでは、税務チームの事業分析や助言は、規制の意図するところまで及ばない可能性もあります。

したがって、すべての部門が今回の規制がもたらす広範な影響を認識し、また企業が規制を遵守し、収益性を確保するよう税務チームをバックアップすることが重要です。この規制変更を変革のための機会として活用すれば、企業はプロセスの最適化およびデジタル化に乗り出すことができるでしょう。


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