グリーンウォッシュ、すなわち環境・社会・ガバナンス(ESG)に関する不正行為や虚偽記載などの疑惑は、企業にとって大きなリスクとなる恐れがあります。
企業のグリーンウォッシュの疑いに関する話題は相変わらず世間を賑わせていますが、違反行為で訴えられた企業の株価に影響を及ぼし始めたのはごく最近のことです。では、これらの事件は法的な不正行為とみなされるのでしょうか?それは、誰に尋ねるかによって異なります。
コナAI社のCEOで雑誌FRAUD Magazineのコラムニストであるヴィンセント・ウォルデン氏は、あらゆるケースが不正行為にあたると言います。同氏の考えでは、どのような背景があるにせよ詐欺は詐欺であり、公認不正検査官協会が詐欺の定義としているように、「利益を得るために虚偽に基づいたあらゆる活動」が詐欺とみなされると述べています。
ブラック法律辞典によると、詐欺が犯罪となるのは、「他人に不利益になるような行為をさせるために、真実を知りながら虚偽の陳述をしたり、重要な事実を隠したりした場合」です。つまり、他の個人や組織から金銭や財産を奪うために嘘をつくと、それは詐欺となるのです。
法的観点からみたグリーンウォッシュ
法的な観点から見ると、グリーンウォッシュは、不正行為や虚偽記載をめぐる環境、社会、ガバナンス(ESG)に関連した詐欺の疑いを含んでいます。グリーンウォッシュの主張が大きな関心を集める一方で、環境詐欺を含む疑惑は非常に広範囲に及ぶものとなることに留意する必要があります。
例えば、ある企業が、社会的責任を果たしていると公言し、報告義務を果たしているにもかかわらず、自分たちが引き起こしたかもしれない環境への害を覆い隠すための手段を密かに取っていたことが判明した場合、これは環境詐欺の定義がいかに広範囲に及ぶかを示す一例となります。同様に、不法投棄や無許可の許可を得るために役人に賄賂を贈ったり、企業の公開資料で特定の環境管理や取り組みについて虚偽の記載や誇張をしたりすることも、この種の不正の一例であるとウォルデン氏は述べています。
社会的課題の分野においては、不正の例が複数の分野にまたがっています。例えば、特定の有力者や政治家に金銭を譲渡したり、賄賂を贈ったりして、不当な利益を得たり、有利な地位を得ることは、この種の社会的不正の一例です。また、厳密には不正ではありませんが、企業幹部が会社の行動規範や社会規範に反する行為を行った場合、会社や株価に大きな経済的損害を与えるため、特定の事実を隠蔽または虚偽記載する圧力が著しく増大することがあります。
現在ESGやグリーンウォッシュ疑惑という前向きな動向に関心が高まっているにもかかわらず、ビジネス上の善行を妨げる問題が目前に浮上しているのも事実です。例えば、インフレ、ロシア制裁、不況の脅威などの負の要素が企業経営者の頭にある中、世界中の企業は、業務効率の向上、リスクの低減、サプライチェーンの透明性の向上、不正防止、制裁、腐敗防止コンプライアンスに関する規制当局の期待に応えるための方法を積極的に探しています。
ESG不正行為への対応策
企業がESG不正を軽減するために必要な作業の大半は、ガバナンスの強化と適切なツールを導入することに尽きます。実際、企業の現金出納部門や購買部門においては、データ分析や不正監視ツールのアップグレードすることでリスクに対応であるとウォルデン氏は述べています。
グリーンウォッシュやその他のESG不正の疑惑の対策強化には、次のような方法があります。
強力なコーポレートガバナンス体制の構築
適切なガバナンスと管理体制を備えた強力な企業コンプライアンスプログラムを持つことは、特に規制当局の立場から、効果的なESGプログラムを実証する上で最も重要なことです。ガバナンスの観点では、企業が適切なリスク評価、教育訓練、報告、監視、調査等の体制を整えていない場合、企業文化が損なわれ、資産の横領、汚職、財務虚偽記載など様々な不正行為に巻き込まれる可能性があります。
強固なガバナンスを構築するためには、まず企業経営者がデータを理解し、その透明性を追求する必要があります。実際、米国司法省(DOJ)は、検察やコンプライアンスにおけるデータ分析活用の重要性を強調しており、2020年5月には、企業のコンプライアンス担当者にはデータ環境を把握する責任があるとの声明を発表しています。
データの紛失やサイロ化されたデータが原因で情報が不正確であることは、もはや言い訳にはなりません。関連するデータソースへのアクセスを確立し確保することで、特に ESG 関連事項における不正リスクを効果的に防止・検出することができます。そして、これは単なる「あったらいいな」ではなく、コンプライアンスにおける当然の義務となりつつあるのです。
データ分析ツールとテクノロジーの活用
データをより深く理解し、透明性を高めるために、企業は有効なツールやテクノロジーを活用する必要があります。また、分析手法を利用してビジネス上の透明性を大幅に高めることで、従来のプロセス指向のコンプライアンス活動よりも優れたコーポレートガバナンスを実現することができます。
例えば、コナAI社、マサチューセッツ工科大学(MIT)と複数の法律事務所により、世界中の企業に不正防止、ESG、腐敗防止に関する情報を提供し、データ主導のESGコンプライアンスを強化できる非営利の共有テクノロジープラットフォーム「インテグリティ・ディストリビューテッド」が設立されました。
法律事務所は、この活動のアドバイザーとして、システムが軌道に乗るまでの間、ワークフローや権限に関する問題のトラブルシューティングを担当しています。このプラットフォームにより、企業は各業界における不正や汚職のパターンを検出するアルゴリズムを学習し、統計的に最大90%の精度で不正や汚職による支払いを予測することを目指します。
ハーバード・ビジネス・スクールのリサーチ・フェローであるマット・ガルヴィン氏によると、データ分析におけるこのユニークな協働モデルを通じて、参加するすべての企業にメリットを享受しており、引き続きインテグリティ・ディストリビューテッド・ネットワークを通じてこの取り組みに対する効果について検証が行われるとのことです。
「最先端のブロックチェーン技術を使用することで、参加者間で独自の企業データを共有することなく、これらすべてを安全に行うことができます」と同氏は説明します。
ESG不正の定義がどのようなものであっても、企業にとって最終的な目的は同じであり、この分野で今後導入が予測されている膨大な規制への対応には多くの課題が残されていることは明らかです。
トムソン・ロイター・スペシャル・サービス(TRSS)
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