AIをめぐる議論の焦点は、この数年で大きく変化しています。かつての論点は、AIが専門職の仕事を変えるか否かという点にありましたが、現在問われているのは、組織がAI戦略を効果的に実行できなかった場合に、失う可能性があるものは何かという点です。多くの場合、AIツール自体は実務に適用できる段階に達している一方で、その利用は依然として実験的な利用にとどまっています。
多くの組織ではAI戦略が策定されているものの、それがチームの日々の働き方に反映されておらず、品質、スピード、効率の向上という期待された成果もまだ実現していません。その原因は、AIツールの性能不足というよりも、組織側の変革が十分に追い付いていないことにあります。
高い信頼性と説明責任が求められる領域では、AIのアウトプットが法的判断、財務開示、規制当局への提出書類、クライアントへの助言の根拠となる場面において、「ほぼ正しい」では不十分です。こうした要件を満たすAIを、Thomson Reutersは「Fiduciary-Grade AI™」と位置づけています。
将来を見据えれば、AIは専門サービスに対する需要を減らすのではなく、押し上げる可能性が高いと考えられます。ほぼどのような未来のシナリオにおいても、AIは専門職の力を大きく引き上げるものですが、最終的な判断、顧客との信頼関係、説明責任は人間に残ります。
本レポートでは、専門職がAIをどのような目的で活用し、どのような未来を目指すのかという観点から、人間の専門性を中核に据える「AI to Elevate」、処理能力を拡大する「AI to Scale」、業務モデルそのものを再構築する「AI to Reimagine」という3つの将来像を提示しています。また、戦略を掲げるだけで終わらせず、現場への浸透、人材育成、業務プロセスや評価の見直しを通じて、AI活用を実務に定着させるための視点も取り上げています。
調査の要点(一部要約)
専門職の74%はすでにAIを週に数回利用していますが、41%は検証済みの専門コンテンツに基づく業務用AIツールを利用できる環境にはありません。こうした差は、クライアントとの関係にも影響を及ぼし始めています。
クライアント企業の78%が、取引先のAI活用による品質向上を「非常に重要」または「必須」と考える一方、実際にその期待に応えられていると答えた企業はわずか6%にとどまり、32%の企業がAI対応で後れを取る事務所との関係を見直したか、今後見直す予定だと回答しています。
AI戦略を策定している組織であっても、専門職の35%は「日々の業務に戦略が反映されていない」と感じており、明確な戦略がある職場とない職場とでは、AIが期待通りの価値を生んでいると回答する割合に大きな差が生まれています。こうしたギャップを放置すれば、専門職の離職や、組織が把握できない「シャドーAI」の広がりにもつながりかねません。
本調査について
本レポートの調査結果は、2026年3月から4月に実施された、法律、税務、監査、会計、コンプライアンス、リスク、グローバルトレード分野の専門職1,816名を対象とするグローバル調査に基づいています。回答者は、民間の専門サービス事務所に加え、企業内・政府内の専門サービス部門に所属しており、対象国は62か国に及びます。
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