法務部門の責任者は、同じ予算、あるいは少ない予算で以前と同等の法務業務を提供し続けるという、極度のプレッシャーに向き合っていることでしょう。さらに、これまで以上に他部署と連携し、財務や人事的な仕事をすることも期待されています。
トムソン・ロイターとアクリタスが共同で作成した「2019年 企業の法務部門の現状」レポートによると、高い成果をあげている法務部門は、会社のビジネスを牽引し、長期的な価値を株主に提供することで、優れた価値を示しています。法務部門に対するニーズが変化していくにつれて、必要なスキルも変化します。今回は、「プロセス改善」と「プロジェクト・マネージメント」のスキルについて見ていきましょう。
プロセスの改善
法務部門の生産性に対する期待が増す中で、社内弁護士は、法務部門のサービス提供モデルの改善を求められています。具体的には、以下のようなものが挙げられます。
- 組織と法務部門との関わり方
- 法務関連サービスの効率化
- 部門横断的な標準テンプレートの使用
- 顧客がセルフサービスで利用できる製品の導入
- 業務の進行状況に関する透明性
- サービス提供のスピード
改善のための方策
- 方針や手順の策定・実行
- テクノロジーの活用
- 反復(単純)作業の外注
- 部門の末端担当者に業務を移行する
- 法務以外の業務を社内の他部門に割り当てる
- 不要な活動やリスクの低い活動を廃止する
社内弁護士に求められること
- 顧客への聞き取りや調査を通じ、非効率なプロセスを正確に把握する
- プロセスの非効率性を解消する新たなソリューションを開発する
- 既存の慣習を変えることへの抵抗感を克服する
- ソリューションを効果的に文書化、実施、管理、改善する
プロセスの改善のメリット
- 社内弁護士がより戦略的な業務に集中できるようになる
- 社内弁護士の育成が強化される
- 法務部門の外部リソースへの支出が削減される
- 規制に関する評価・教育が進む
社内弁護士の責任
適用される地域、州、国、国際レベルの法規制の数と範囲は増加の一途を辿っています。多くの企業では、コンプライアンス部門を設けているとはいえ、社内弁護士の責任は以下のようにますます大きくなっています。
- 対象となる法規制の特定
- コンプライアンスプログラムの策定・構築
- 規制要件に関する社内教育
- 組織のコンプライアンス状況の監査
- 外部サービスプロバイダーのコンプライアンスプログラムに関するデューデリジェンスの実施
- コンプライアンスに関する不備の是正プログラムの準備と実施
- 経営幹部、取締役会、および外部当局へのコンプライアンスに関する報告
- 組織に影響を及ぼす可能性のある規制要件の動向把握と経営陣への助言
- ロビイストや法律事務所などの第三者との協力による、規制動向への働きかけ
規制のエキスパートとして
また、組織における規制のエキスパートとしての責任を果たすために、以下のような情報を入手し、必要なスキルを身につける必要があります。
- 外部サービスプロバイダーからの規制の最新情報の入手を手配し、確認、理解する
- 組織の現在および計画中の事業活動の中で、規制動向の影響を受ける可能性があるものを把握する
- コンプライアンスの重要性を組織内で効果的に周知する
リーガル・プロジェクト・マネジメント
社内弁護士は、リーガル・プロジェクト・マネジメント(LPM)の手法を用いて部門や社内のプロジェクトを推進します。
LPMのステップ
- プロジェクトの範囲の明確化
- 必要なリソースの収集
- プロジェクトの戦略、ステップ、成果物、予算、タイムラインの決定
- 完了までのプロジェクト管理
- プロジェクトの成果およびその達成プロセスの評価
- 社内ビジネスプロジェクトの調整(買収先候補の評価、事業の拡大、新規に買収した事業の自社事業への組み入れなど)
最近では、社内弁護士がプロジェクトを主導することが多くなってきています。特に、プロジェクトマネジメントの専門部署を持たない企業では、この傾向が顕著です。
社内弁護士に期待される活動の調整
- 財務、税務、人事、IT、営業、マーケティングなど社内の各部署からのリソース
- 法律事務所、コンサルタント、会計士、広告代理店などの外部リソース
社内弁護士はこれまで以上に積極的、組織的、そして計画的に、LPMを実践していくことを求められているのです。
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