アンチアンビション時代のリーガルテック~健全な働き方に向けて~

メンタルヘルスにおいて、新たな時代が到来しています。2年にわたる新型コロナウィルスの流行は、人々の精神に打撃を与え、新たな文化的土台が築かれました。私たちには少し休息が必要です。 

多くの人が、加速する現代社会から一歩引いて、少なくとも、しばらくの間だけでも効率性、生産性、最適化を美化するのをやめるべき時だと感じています。私たちは燃え尽きてしまったのです。 

燃え尽き症候群からの回復

これはまったく新しい現象ではなく、燃え尽き症候群が蔓延する何年も前から、その兆候はありました。2019年に世界保健機関(WHO)によって「うまく取り扱うことができない慢性的な職場のストレス」として正式に認識され、近年、ますますメンタルヘルスとメンタルヘルスを害する要因への関心が高まっています。この傾向は、特に法律業界で顕著でした。例えば、2016年に米国弁護士協会が行った調査では、米国の弁護士の28%がうつ病を患っており、19%が重度の不安の症状を示していると指摘し、この問題を浮き彫りにしています。 

しかし、今は何かが違うようです。私たちは何年も前から燃え尽き症候群とその害について知っていましたが、このコロナ禍で、ストレスにどう対処するか、そして個々の労働者として、ストレスをどれだけ受け入れようとするかに変化が生じたように思われます。 

アンチアンビションの時代

この1年、私たちはアンチワーク運動の台頭を目の当たりにしました。なかでも特筆すべきは、アンチワーク集団(r/antiwork)サブレディットが180万人の購読者を抱えているという実態です。今年初め、『ニューヨーク・タイムズ』は、この時代を「アンチ・アンビションの時代」と総称しました。仕事に関する文化的なムードが変化した時代であり、”10年前の#ThankGodItsMonday文化 “(今週もやるぞ!という猛烈型)が “オフィスアンニュイ “(のんびり型)に取って代わったのです。 

この傾向は法律業界でも顕著で、仕事のプロとして生産性の踏み絵から離れ、本当に大切なもの、つまり家族、友人、人間関係を優先し、ワークライフバランス向上のために減給する弁護士も出始めています。 

法律業界では、リーガルテックの分野も影響を受けています。 

実際にリーガルテック製品の選定に関わっている部門責任者でなくとも、世の中のテクノロジーがすべて効率と生産性の向上を約束していることは理解していることでしょう。それは、デジタルテクノロジーの存在意義とも言えますが、果たしてそれは、この新しい反労働者主義の時代精神に合致しているのでしょうか?ーそうとは言えないようです。 

変化の可能性 

この新しい文化的ムードが定着すれば、リーガルテック・ベンダーや企業間取引(B to B)のツールメーカー全般が、自らの立場や目的を再認識する必要に迫られるでしょう。私は、次の3つの変化の可能性を感じています。 

まず、B to Bツールは、よりB to C的なブランド設計や製品コミュニケーションを意識して開発される傾向にあります。より直感的でカジュアルなコミュニケーションが、道具としての価値と成果を重視した価値提案をサポートするようになるでしょう。また、効率性を高めるリーガルテックのメーカーも、その点をアピールするようになることが予想されます。リーガルテックはエンドユーザーを燃え尽きる前に超生産的に利益を増やす人材に変えるだけでなく、それを使う人々が子供を迎えに行くために早く帰ったり、旧友に会ったり、好きなことをして午後を過ごすことを可能にできるツールであると、メーカーは新たな価値を伴った販売戦略を始めるでしょう。会社の利益を増やすだけではなく、労働者の余暇を増やすことが宣伝文句となるのです。 

第二に、リーガルテック製品自体も変化する可能性があります。当初は、一部のメーカーが、あまり騒がしくなく、注目を集めるようなツールを開発するようになると思います。多くの人は、一部のテクノロジーツールが、期待したように時間を節約できていないと感じています。新しい競争力をもったテクノロジー・ツールは、迅速に問題を解決し、ありふれた仕事を自動化する能力を備えているかもしれません。長年、開発者は、人々が自分のアプリに費やす時間を最大化しようとしてきました。しかし、これからは、ユーザーが実際に費やした時間がいかに少ないかを示すことで、その価値を実証し始めるでしょう。 

そして、新しいタイプのテクノロジー製品の台頭も見られるでしょう。言葉は悪いですが、私はこれをカルマ・テクノロジーと呼んでいます。現代社会は集中を削ぐ様々な要因に満ちており、人々はタスクとシステムの間を常に右往左往している状態で、常に落ち着きなく、注意散漫に陥ってしまっているのです。次世代の革命があるとすれば、ユーザーが集中し、気が散ることなく集中して働けるようにするテクノロジー・ツールの登場です。これがリーガルテック専用ツールという形で登場するかどうかは別として、多くの専門職にとって頼りになるツールとなることでしょう。 

健全な働き方に向けて

私たちはまだ変化の初期段階にいます。この新しい文化的変化が定着するかどうか、あるいは、ほとんどのロックダウンが解除された今、一時的な反発に過ぎないかどうかはわかりません。確かなことは、コロナ禍という大きな危機により、多くの人が生き方を反省し、「働きすぎた」「急ぎすぎた」と感じたということです。 

そして、「健全な働き方」への潮流を支え、より人間らしくいられるように、新しい法務テクノロージーが求められています。心の健康をサポートし、ストレスを取り除き、私たちを解放してくれるテクノロジーが、今、必要なのです。 

面倒な事をサッと済ませて、好きなことをする時間を増やしてくれるテクノロジーが望まれています。 


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