日本の輸出管理規則はかなり特異と言えます。他国と共通するのは、輸出品の使用者及び使途の把握くらいです。日本には企業が物品を輸出する際に遵守しなければならない特定の規則があります。自動輸出管理システムを利用すれば、輸出担当者は規則を遵守して貿易業務を行い、許可なく物品を出荷する等の法律違反を防止することができ、ミスによるダメージを企業に被らすことはなくなります。
取扱製品の把握
日本における安全保障貿易管理をご存知でしょうか。日本の経済産業省は、外国為替及び外国貿易法(1949年)に基づき、国家及び国際的な安全保障を維持するために軍事利用が懸念される物品及び技術の輸出を規制しています。これには、軍事転用可能な軍民両用物品及び技術が含まれます。
経済産業省は、以下の物品につき、輸出担当者に輸出許可(個別又は包括許可)の申請を義務付けています。
- 同省の輸出管理リストに掲載されている物品
- 以下のいずれかの政令に従い、輸出担当者が遵守の確保のために関連物品の品目、名称及び用途の詳細を確認しなければならない同省のマトリックス表において対象となっている物品
- 輸出貿易管理令(製品又は製品の部品)
- 外国為替令(プログラム、図面等)
- キャッチオール規制の対象となっている物品 – 最終用途又は最終使用者により輸出品の軍事目的使用の可能性が示唆される場合(オーストラリア等のグループAの国へ輸出される物品を除きます。)。
他にも以下を含む規則を輸出担当者は遵守する必要があります。
– 地域の規則(欧州連合の化学物質の登録・評価・認可・制限(REACH)に関する規則、特定有害物質の使用制限(RoHS)に関する指令等)
– 国内の規則(テレコムエンジニアリングセンター、日本産業規格等)
– 業界の規則(繊維評価機能(SEK)、電気電子学会(IEEE)等)
– 国際規則(国際航空運送協会(IATA)による危険物規則等)
輸出しようとする物品が管理リストに含まれているか否か、いずれかの命令又は管理の対象となっているか否かを正確に判別するのは輸出担当者にとって大変困難です。
難題の対処及び罰則の回避
輸出管理に照らし合わせる際に重要なのは以下の点を把握することです。
- 物品が対象となっているか否か及びそれが軍民両用物品であるか否か
- 物品の使途
いずれの点についても、数多の国際的な規制義務を充足するために正確な分類工程が必要となります。軍民両用物品の違法輸出に対する罰則を科せられないようにするためです。さらに、取引禁止対象者との貿易に対する制裁のリスクを冒さないように正確な審査工程も必要となります。
日本では、上記の厳格な要件に反した輸出担当者に対する罰則はかなり重く、以下の重い刑事罰及び行政制裁が含まれます。
- 個人に対して3,000万円以下の、法人に対して10億円以下の罰金
- 個人又は法人に対して10年以下の懲役
- 3年以内の輸出禁止
- 出荷延期
経済産業省のウェブサイトで法律違反者として名称を公表される企業は、その醜聞により、信用が失墜し、企業イメージが損なわれることとなります。このような事態を招かないようにすることが大切であることは言うまでもありません。輸出管理の自動化により、この課題を解決することが、最小限のリスクで政府の要件を充足し、安全に物品を輸出するための最善策です。
軍民両用物品を出荷しているか否か
経済産業省が明示しているとおり、軍民両用物品を輸出する企業の規制が特に重視されています。
しかし物品の輸出が法律違反とならないように軍民両用物品を判別するのは難題であり、同時にリスクでもあります。軍民両用物品とは、しばしば、普通の日用商品の性質のものであり、軍事転用も可能なものです。戦車のように明らかな軍事兵器への言及に留まらず、テニスラケットやF1レーシングカー用のコントロールサスペンションに使用される活性炭素繊維も含み得ます。戦闘機の翼や装甲戦闘車両といった軍事目的のために転用することができるためです。
つまり輸出担当者はどの製品が管理規制や基準に抵触するかを把握する必要があるのです。テクノロジー・ソフトウェア等の製品が規制されている地域で事業を展開しているかどうかを把握することが重要です。
では、このような物品を日本から輸出する場合、日本企業又は外国企業では、どのように日本の厳重なコンプライアンス要件が満しているのでしょうか。手動で簡単に対処することが可能だという考えは誤りであり、罰則を回避するためには、現実を理解することが重要です。
手動による工程のリスク
業務が自動化されていないと企業の違反リスクは高いままです。貿易管理のような複雑なプロセスの管理は通常の企業資源計画(ERP)内で管理されておらず、確認作業を円滑にするためや取引をサポートする文書やライセンスの作成、さらには将来的に監査を受ける時のためといった目的で手動のプロセスに依存しています。複数の要因により、手作業ではミスを犯すリスクが高まります。
- 輸出管理要件の知識が担当者の頭の中にあるか当人のコンピューターに保存されており、それが利用できるかどうかに左右される。
- 出荷する際に製品が規制要件を充足しているかどうかを判断するためのデータは印刷物の形で保存されている場合が多く、見つからないことがある。
急成長している企業や、自動的に出荷が適切なチェックを受けているか確認するシステム持たずに新規市場に進出している企業は高いコンプライアンスリスクにさらされています。経済産業省の規制に対する違反は一律に適用され、厳罰が科せられることにご留意ください。最高額の罰金を科せられている企業は、誰もが知る企業です。上記の輸出管理法の違反に対する重い罰金、刑事罰及び信用の失墜のほかに、以下も被る可能性があります。
- 監査の増加
- 将来の成長と市場へのアクセスに関する危機
行き届いた輸出管理プログラムを有することで何が保証されるのでしょうか?
自動輸出管理プログラムを採用すべき理由
グローバル企業にとっての課題は、様々な規則、分類コードの変更、そしてサプライチェーンのパートナーや取引先の国の取引禁止及び制裁対象リストに関する最新情報を常に把握しておくことです。これは組織にとって大きな責任ですが、手作業の工程でこれらを把握することはほぼ不可能です。自動化ツールには一元化されたプラットフォーム及びデータベースが備わっており、製品の分類や取引業務に組込み、管理することが可能です。
ここに、貿易取引プロセスの管理において、自動化が役に立つ項目を紹介します。
- 製品の出荷元及び出荷先で、許可を得る必要があるか?
- 必要な場合、その許可を追跡しているか?
- 許可はまだ有効で、失効していないか?
- 包括許可か、特定使途用か?
- 制裁対象国へ出荷しようとしているか?
- その製品は、再輸出規制の対象となるか?
輸出管理のコンプライアンスにおいて留意すべきこと
日本の輸出管理法の数々の複雑な技術的要件を充足することは困難であり、手動による貿易取引プロセスに依存している企業はリスクを伴います。
リスクを取ると、費用が発生する恐れがあります。重要なこととしてご理解いただきたいのは、全ての遵守義務を充足できる論理的な、業務の自動化を選択をすることにより、企業の貿易戦略への投資となるだけではなく、手動による管理及び特定分野の担当者への依存により発生し得る罰則及び費用の回避にもつながるということです。